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50話.褒賞

「蓮華様、並びにアーネスト様。此度の事、誠にありがとうございました。国を預かる者として、厚く感謝致します」


 そう言って、玉座に座りながらではあるけれど、頭を下げる国王陛下。

 普通は国の頂点である王が頭を下げるなんてあり得ない事なんだけど、私とアーネストは公式の立場では国王陛下より上らしいので、変ではないらしい。

 場所的に私達を見下ろす位置に居るのが落ち着かないのか、ソワソワとした様子の王妃様と王子様、お姫様の三人に苦笑する。


「おい!俺ももごぉ!?」


 ラハーナちゃんが呼ばれなかった事に対して抗議しようとするのを、口を抑えて黙らせる。

 ここで喚いても時間が掛かるだけだからね、ちょっと我慢してもらおう。


「偶々ですから気にしないで下さい」

「そうは参りません。国を、民を守ってくださったのです。そこに居るネメシス=ゼロ=アンダーグラウンドとシンジ=ゴトウをも救ってくださったと」

「「……」」


 国王陛下に名を呼ばれた二人は静かに頭を下げる。


「この二人は我が国に無くてはならない存在なのです。どうか褒賞をお受け取り下さい」


 国王陛下は再度頭を下げた。うーん、特に欲しいものなんてないんだよなぁ。

 お金もユグドラシル社の利益から勝手に貯金されていくので、以前通帳を見たら桁を数えるのがめんどくさい数値になっていた。

 あれだけあると、もはや使い切る方が難しい。

 なので、流石にお金を配って回るみたいな事はしないけれど、魔物の被害や天災に合った人達への支援は積極的にしようと思ってる。


 そんな背景もあり、特に欲しい物がない。

 うーんと頭を悩ませていると、アーネストが口を開いた。


「王様、それならこいつにこの国での市民権と住居、それに働く場所を提供してやってくれねぇかな?それが俺達への褒賞って事でさ」

「!?」


 ラハーナちゃんが心底ビックリしてアーネストの方を向く。私はああ成程、と感心した。


「こいつも魔物を倒すのに協力してくれたし、事実あの魔物を簡単に倒せたのはこいつのアドバイスのお陰だしさ。元々俺達はこいつの住む場所を探してこの国に来たから、それが一番ありがたいんだけど、ダメですか?」


 最後にちょっと敬語にしたアーネストにクスリとしつつ、私も援護しておく。


「私もアーネストの案が助かります」


 私達二人にそう言われては、王様も頷く他なかったようで。


「……分かりました。お二方がそう仰るならば、そのように致しましょう」


 国王陛下が了承してくれたので、アーネストとハイタッチする。

 ラハーナちゃんは未だに信じられないといった表情をしてアーネストを見ていた。

 まぁうん、アーネストに最初殺されそうになったもんね、気持ちは分かる気もするけど。


「では褒賞の件はこれまでとして……蓮華様、アーネスト様。実は、折り入ってお願いがございます」

「「?」」


 アーネストと顔を見合わせ、頭に疑問符を浮かべる。

 一国の王様が、私達にお願いとは?


「その、息子達が是非蓮華様とお話がしたいと……その、妻もなのですが。宜しければ、今日の晩餐は城で召し上がっては行かれませぬか……?」

「「……」」


 何をお願いされるのかと思ったら。呆気に取られてしまったけれど、まぁそれくらいなら良いかな。


「どうする蓮華。今は俺達あんま『外』に居ない方が良いんだよな?」

「まぁ、そうなんだけど……」


 視線をアーネストからずらすと、両手を合わせて不安そうにこちらを見ている王妃様に王子様、お姫様が見えた。


「もう今更だ。毒を喰らわば皿までって言うじゃないか」

「お前、王族からの頼みをなんちゅー例えで言うんだよ」


 アーネストに呆れられたので苦笑する。


「ええっと、それくらいなら構いませんよ。どの道、ラハーナちゃんの事でもうちょっと様子を見るつもりでしたから」


 了承すると、王様をはじめ皆ぱぁっと笑顔になった。


「おお、ありがたい!ありがとうございます。時間まで、我が家と思って自由に城でお過ごしください。晩餐時には使いに呼びに行かせますので」


 そうして謁見の間から退出した私達は、ネメシスさんとシンジさんが一緒に扉までついてきている事に気付く。


「あれ?王様の警護に居なくて良いんですか?」

「はい、もう一人のインペリアルナイトが陰ながら警護しております。私とシンジは、蓮華様とアーネスト様がこの城で滞在される間、快適に過ごされるように仕えるよう陛下に命じられました」


 ええ、インペリアルナイトを小間使いさせて良いんだろうか。と思ったけど、他の国でも割とそうしてる気がしてきた。


「あはは……その、実はこちらから陛下にお願いしたのです。だから、気になさらないで頂けると。僕達騎士団を救って頂いた蓮華様達に、何もお礼が出来ていませんから」


 うーん、それこそ礼は国王陛下から貰ったので、構わないんだけど。

 皆恩を感じすぎじゃないかなぁ。もっとフラットな感じで良いんだけども。


「ま、お前はそんだけすげぇ事してんだから、自覚を持つこったな」

「だな。俺が思うに、蓮華は自分の力の凄さに無自覚すぎるぞ」


 アーネストとラハーナちゃんにまでそう言われて、唸ることしか出来ない。

 そんな私を見て苦笑する二人。


「まずは客室へとご案内致します。それから、良ければ城内をご案内致しますね」


 ネメシスさんが綺麗に礼をしながらそう言うので、私達は頷く。

 部屋の場所は謁見の間からそう遠くなかった。


「ごっつい豪華な部屋だなおい。これで客室なのか?」

「ふふ、これは秘密なのですが。この部屋は他国の王家の方達を招いた時の専用部屋です」


 成程、普通の部屋ではないと。

 いろんな場所に魔道具が設置してあって、ベッドの横にある四角い箱の青いボタンを押してみると、飲み物がコップと共に出てきた。

 おお、ハイテク。


「なにやってんだよ蓮華」


 アーネストに突っ込まれたので、コップを渡してもう一度ボタンを押してみる。


「おお、すげぇ!」

「ふふ、それは転……」

「転移魔法術と複式魔法術の合わせ技か。基礎の組み合わせだけど、まぁまぁだな」

「!?」


 アーメストが驚き、それをシンジさんが説明しようとして、ラハーナちゃんがドヤァと語った。

 シンジさんがビックリして言葉を失っている。


「わ、分かるのかい!?」

「ああ?こんなもん分からない方がおかしいだろ。けど、こんなデカい箱に術式を込めてるようじゃまだまだだな。俺ならこの半分以下の大きさで術式が組める」


 ああ、そういえばラハーナちゃんって、昔の凄い魔法使いなんだったっけ。

 違和感無かったけれど、私やアーネストの戦いについてこれてたのも実は凄かったんじゃないだろうか。



「ラハーナと言ったね!僕達の魔道騎士団に入らないかい!?」

「俺は戦うのは嫌いなんだ」

「大丈夫!騎士団と言っても、魔道騎士団の中には二つ部門が分かれているんだ!一つは魔法と魔術で戦う魔道部門、そしてもう一つが術式の効率化や魔道具を研究する魔術研部門!」

「お、おお……」


 あのラハーナちゃんが押されている。シンジさんはどうやら、魔術の事になると人が変わるようだね。


「シンジ、落ち着け」

「ハッ!?……コホン。僕はその魔道騎士団の筆頭なんだ。人事権も僕にあるから、ラハーナさえ希望してくれたら、即入隊を認めるよ」

「ふむ……給料面はどうなってる?」

「勿論詳細は後で詰めるけれど、衣食住の心配は必要ないよ。王城のすぐ傍に寮があるし、ラハーナが優秀であれば王城内で部屋を取れるようになるかもしれないからね」

「成程な。ならまずは現場を見せてもらおうか。あまりにも低レベルなら、行く必要を感じないからな」

「フフ、望む所だよ……!」


 ラハーナちゃんの言葉に、シンジさんの目が光る。

 どうやら、ラハーナちゃんはこの国に仕える事になりそうだね。


「俺達はどうする蓮華?」

「私達は城を見回ろうか、こんな機会でもないと見れないし」

「蓮華も来てくれないのか……?」


 ラハーナちゃんが急にしょんぼりする。見た目が美幼女なせいで威力が凄い。


「落ち着いた頃に覗きに行くよ。まずはラハーナちゃんの思うように見て、話しておいで。私達が居ると、周りの人が気を遣うだろうからね?」

「そっか、そうだな。分かった!約束だぞ蓮華!」

「うん」


 笑顔で言うラハーナちゃんに、こちらも笑顔で約束を交わす。


「そ、それから、アーネスト!お前も来るんだぞ!」

「へいへい」


 若干顔を赤くさせたラハーナちゃんが、アーネストにそう言う。

 アーネストは生返事だったけど……これはあれかな、またなのかな。


「では、ラハーナはシンジに任せて……蓮華様にアーネスト様は、この私ネメシスがしっかりとご案内させて頂きますね」

「よろしくねネメシスさん」

「よろしくなネメシスさん」

「はっ!」


 手の籠手を胸に、返事をするネメシスさん。

 騎士団の人達って、こういう所カッコイイ。

いつも読んでくれてありがとうございます。

活動報告でも書きましたが、一二三書房様のWEB小説大賞の一次選考を通過していました。

これからも続けていきますので、宜しくお願い致します。

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