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49話.VSツァトゥグァ

 アーネストとラハーナちゃんは魔物の巨体に(私の魔力を取り込んだせい)合わせて空中戦をしていた。

 アーネストはともかく、ラハーナちゃんも飛べることに驚いた。


「ラハーナ!行ったぞ!」

「分かってる!この俺にそんな攻撃が効くものかっ!『イージス』!」


 ラハーナちゃんの前方を巨大な光の盾が覆いつくす。

 魔物の攻撃は結界に阻まれ届く事はない。その隙をついて、アーネストが肉薄する。


「微塵切りだぜっ!『百花繚乱』ってなぁっ!」


 ネセルを様々な形に変形させ、魔物を凄まじい速度で斬りつける。

 私の目でも追えない程のスピードに舌を巻く。やはりアーネストは強い。


「グォォォッ……!」


 魔物はダメージを負っているものの、まだ倒れる様子は見えない。

 私は二人の元へ飛んで近づく。


「お、そっちは大丈夫だったか蓮華」

「うん。周りの魔物は任せてきたよ。後はこいつを私達で倒せば良いだけだ」

「そりゃ分かりやすくていいな」


 油断なく構えるアーネストを横目に、私も魔物へと視線を向ける。

 紫色の禍々しい色をした肉体が、所々沸騰したかのようにボコボコと音を立てている。

 色と合わさってとても気持ちが悪い。


「とっとと倒すとしようか」


 そう言ってソウルを構えた所で、初めて魔物が声を発した。


「ユグ……ドラ……シル……」

「「「!?」」」

「ユグドラ……シル……ユル、サ……ユルサナ……イ……!」


 そう言うと同時に、腕が触手のように伸びてこちらへと向かってくる。


「チッ!気持ちわりぃな!」


 アーネストはその触手を斬り捨てる。それは地面へと落ち、ショゴスというスライムへと変形した。


「不味いアーネスト!奴の肉体はそのまま落としちゃダメだ!スライムに変わってる!」

「マジかよ!?なら、落ちる前に消滅させるっきゃねぇか……!」


 斬り捨てられた肉体が再生し、何度も襲い掛かってくる。

 それを斬った後にネセルの炎で焼き尽くしているアーネストに倣い、私も斬った後に火で焼き尽くす。

 ラハーナちゃんも自分に襲い掛かってくる触手は結界で防いでいるようだ。


「これはキリがねぇなっ……!ラハーナ!なんかこいつの弱点とかはねぇのか!?」

「あるっ!こいつの弱点は光だっ!一番は光魔法の聖域、『サンクチュアリ』を使って囲んでしまう事なんだが……生憎と俺には光属性の適正はないんだっ!」


 成程、光が弱点なのか。それが聞ければ十分。


「ありがとラハーナちゃん。それじゃ、これで終わりだね。『サンクチュアリ』」

「グォォァァァァッ!?」


 光属性の高位魔法である『サンクチュアリ』は、実際は攻撃魔法じゃない。

 魔法陣の上に居ると徐々に体力が回復していく、範囲回復魔法だ。

 それを、奴の身体が全て入るように魔法陣を敷いた。


「グゥゥォォォッ!」

「「!!」」


 奴はその痛みに耐えかねたのか、一歩足を踏み出す。

 その一歩でジュウジュウと肉が溶ける音が大きくなる。


「ユグ、ドラシルゥゥゥ……!」


 『サンクチュアリ』の魔法陣の上で光に焼かれながら、魔物はこちらを憎しみを込めた目で射抜く。


「させるものかよっ!『六芒結界・封動殺』!」


 ラハーナちゃんが唱えた魔法が『サンクチュアリ』の外周を覆う。

 魔物はそこに手を伸ばすが、障壁に阻まれる。


「オノレ……チョコザイ、ナ……グァァァァァッ!」


 段々と体が小さくなっていくツァトゥグァ。魔力を吸引するという特性は、知らなければかなり厄介だ。

 ただ、それにも制限はあるようで、今回で言えば光属性は取り込む事が出来ないのだろう。

 ならやはり、こいつは元は悪魔だったのだろうか。

 問題は、ユグドラシルに倒されたとラハーナちゃんが言っていたけど、何故復活したのかだ。


「グゥゥ……コンナ、ハズデハ……ヤハリ、テンカイノモノノイウコト、ナド……ガァァァァッ!!」


 『サンクチュアリ』の最後の光が発動し、ツァトゥグァの肉体は消滅していった。

 だけど、奴は最後に気になる言葉を言って消えた。


 天界の者の言う事……?


「なぁ蓮華」

「うん。安易に繋げられないけど……可能性の一つとして、考えておくべきだね」

「だな」

「?どうしたんだ二人共。奴が消えて、地上のショゴス達も消えたようだぞ!俺達の勝利だ!」


 笑顔でそう言うラハーナちゃんに、私達は顔を見合わせて苦笑する。

 さて、元々の用事を済ませたい所だけど……そんな簡単にはいかないよね、これ。

 地上で手を振っている人達を見て、そう思うのだった。

お読み頂きありがとうございます。

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