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42話.神代の転生者①

 進むごとに段々と機械染みたものへと変わっていく通路を進む。

 最初は岩だった通路が、今やアスファルトで舗装された通路に変わり、足音がコッコッと響くようになった。


「なんだ、ここ。絶対自然に出来たもんじゃねぇよな、これ」

「私もそう思う。……!アーネスト、あれ」

「!!ったく、守護者ってとこか?厳重な守りじゃねぇか」


 通路の先の大きな扉の前。

 少し開けた場所に、3メートルは優に超えている巨体が二体。

 体は鎧に覆われ、目の位置にある中央に赤く光る眼球がこちらを射抜く。


「左は任せたアーネスト」

「おう、右は任せるぜ蓮華」

「「グオォォォォッ!」」


 こちらが戦闘態勢に入ったのを確認したのか、二体の鎧が吠える。


「沈めっ!」

「グォォッ!?」


 ソウルでその巨体を一閃する。分断された体は、そのまま地面へと転がった。

 アーネストの方はっと。


「グォォ……」

「いっちょ上がりってな。弱すぎて話にならねぇな」


 私と違って、微塵切りしたようで……粉々になった鎧が哀愁を誘う。


「この鎧達が守護者だったのかな?」

「ぽいな。なんか守る物があるってこったろ?楽しみだな蓮華!」


 心底楽しそうなアーネストに苦笑しながら、大きな扉へと手を掛ける。


「ぐっ……お、重い……!?」

「え、蓮華の馬鹿力でも開けられねぇの?」

「お前、後で覚えてろよ」

「じょ、冗談だって。俺も手伝うからよ。よっ……!ぐぎぎ……!?なんだこれ、開かねぇ!?」


 二人で結構力を入れて押しているのに、開かない。


「これ以上力入れたら、壊しちまいそうなんだよな。どうする蓮華」

「……あ!」

「どした?」


 私は扉を押すものとばかり思っていた。だって、こういう大きな扉って、基本押して開けるよね?

 なので、今度は引いてみた。

 するとどうだろう、簡単に扉は開いた。


「「……」」


 無言になる私達。


「行くか、アーネスト」

「そうだな、蓮華」


 私達は無かった事にした。


 扉をくぐり、中へと進む。

 まるで研究所のような内装をしている部屋で、所々に埋め込まれている丸い球は青く発光していて、そこから灰色の管を通して色々な場所へと繋がっているようだった。


「何かの研究室か……?」

「分からない。だけど……自然物じゃない事だけは確かだな」


 部屋を見渡していくと、ある大きな箱を見つける。

 近寄って見ると、中に人が入っていた。


「お、おいアーネスト!」

「どうした蓮華?」


 アーネストを手招きし、呼び寄せる。


「なんだこれっ!?……普通、こういうのの中に入ってるのって、女の子だよな?」

「……」


 いや、どんな普通だよ。

 カプセルのような箱に入っているのは、まだ幼さの残る青年だった。

 青い髪に白い肌。まつ毛も長く、美形と言えるんじゃないだろうか。

 ただ、死体にしか見えないけれど。


「よし、帰ろう」

「帰るのかよ!?」

「いやだって、絶対厄介事の匂いしかしないじゃないか。母さんと兄さんに報告した方が良いだろ?」

「まぁ、それもそうか」


 君子危うきに近寄らずってね。まぁ別に徳があるってわけじゃないけど。

 好んで危ない橋を渡る必要は無い。


 そう思って部屋を後にしようとしたら、突然警報が鳴り響く。

 部屋全体が赤く点滅し、緊急事態が起こったのだと判断できた。


『警告。警告。想定魔力量を桁違いに超えた対象の侵入を感知。これより緊急処置を行います』


 何事!?緊急処置って!?


「おい蓮華!急いで出るぞ!」

「分かった!掴まれアーネスト!『ワープ』」


 瞬間移動魔法の『ワープ』を使うが、不思議な感覚が起こり、魔法がキャンセルされた。


「マジックキャンセラー!?」

「マジかよ!?」


 どうやら、この部屋全体に魔法を解除する術式が組み込まれているようだ。

 なら走って出るしかないと外に出ようとしたら、今まで壁だった場所から通路が出来上がり、入口に居た巨大な鎧が数十体、ズシンズシンと歩いてきていた。


「うへぇ……部屋には魔法をキャンセルする術式を構築して、力押しじゃ倒せないようなごっつい鎧の……ゴーレムかなぁあれ。それを用意するとか、万全だよね」

「言ってる場合かよ!身体強化魔法も使えねぇぞこれっ!」


 私もアーネストも、普段は体全体へ魔力を通して強化している。

 これは呼吸するのと同じくらい自然に行使している為、違和感がない。

 それが今は、一切の魔法がキャンセルされて強化出来ていない。

 つまり、今の私とアーネストは、普通の人と変わらない肉体強度なのだ。


「ま、それでも倒し方はあるでしょ。力だけが私達の力じゃないだろアーネスト」

「へへ、まぁな。ネセル、急所を見せろ。なぞってやるぜっ!」

『上等。あんな鉄の塊に苦戦するんじゃないわよアーネスト』


 ネセルは魔眼というスキルを持っている。魔眼にはいくつか種類があり、ネセルの魔眼は対象の弱点を使用者に見せるものだ。

 例えば足に古傷があれば、そこが強く光るらしい。


 っと、アーネストはともかく、私もやらないとね。

 ズシンズシンとゆっくりこちらへと近づいてくるゴーレム。

 私はソウルを構える。


『我が主、鉄の塊など我が刃の前では豆腐も同じ。どこであろうと切り捨てられます』

「ふふ、了解。それじゃ、行くとしようか!」


 私とアーネストは同時に左右に分かれて駆ける。


「「「「「グオオッ!!」」」」」


 その巨体から繰り出される攻撃を避け、そのまま流れるように刀を振るう。


「ガァァッ!?」


 鉄の塊でも痛みを感じるのかな?こちらへと振るった腕を斬り落とすと、ゴーレムは叫ぶ。

 そのまま続けざまに周りのゴーレムも斬っていく。


「グオオッ!!」


 何度攻撃を振るわれても、読みやすい直線の動きなんて当たらない。

 避けながら剣閃を浴びせ、体をバラバラにしてく。

 幸い再生はしないようで、そのまま倒れていった。


 こちらが片付いたのでアーネストの方を見ると、そっちも終わっているようで、私が見ているのに気付いたアーネストはピースをしてきた。

 それに対して苦笑しつつ、ソウルを仕舞って再度カプセルへと近づく。


「アーネスト、これ」

「ああ。さっきと違って、冷気が外に流れてんな」


 白い煙のようなものが、カプセルから零れていた。

 警報の赤い光は消え、今はまた青い光が部屋を照らしている。


 様子を見ていると、突然プシュー!という音と共に、カプセルが開いた。


「……成功、成功だなっ!俺は転生出来たんだっ!ワーハッハッハッ!」

「「……」」


 いきなりカプセルから飛び起きて、全裸で両手を上げながら笑っている男に、私達は絶句するのだった。

いつも読んでくれてありがとうございます。

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