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34話.最強との差

 王国ツゥエルヴから帰った翌朝。

 週に一度の恒例と言える兄さんとの訓練をしていた。


「これは避けられませんよアーネスト、蓮華。『ボルガノン・インフェルノ』」


 兄さんを中心にマグマが広がる。アーネストと共に避けようとするが、火柱が燃え上がり空への道を防ぐ。


「くっ!なら凍らせる!『アイシクル・ゼロ』!」


 兄さんの魔法の上に氷の極大魔法を放つ。しかし、氷で覆われたマグマがその熱量ですぐに溶かし、マグマが再度燃え上がる。


「十分だ蓮華っ!」

「ほう!」


 私が兄さんの炎を抑え込んだのは、時間にしてわずか一秒にも満たない。

 でもその間に、アーネストは兄さんの元へと肉薄した!


「ネセル!魔力解放!」

『その済ました顔に一撃入れてやるわっ!』

「フ……!」


 アーネストの全力の一振り。

 凄まじい衝撃波が生まれ、風の刃となってこちらへと襲い掛かる。

 私はそれをソウルで薙ぎ払い、兄さんとアーネストの方へと視線を向ける。


「透明の、剣……!?」

「ふふ、違いますよアーネスト。これは確かに透明のように磨かれた剣ですが……こうして止まっていると、うっすらと剣の形が見えるでしょう?」

「!!」

「この剣の名は『雷霆・ケラウノス』と呼ばれる神器ですよ。その名の通り雷を宿した剣なのですが……透き通るように美しいので、愛刀にしているんです」


 ケラウノス!?それって確か、ゼウスが扱っていた最強の武器じゃ!?

 世界を一撃で溶解させたり、全宇宙を焼き尽くすほどの威力があるって読んだ事あるよ!?


「とんでもねぇ魔力が込められてんな兄貴……!兄貴の魔力だけでもぶっ飛んでんのに……そんな神器まで加わると、敵無しじゃねぇか……!」

「まぁ、私は誰にも負けるつもりはありませんよ。強いて言えば……アーネストと蓮華になら、負けても構いませんけどね」


 そう言って微笑みながら、アーネストをケラウノスで薙ぎ払う。


「がはっ……!」

「アーネスト!」

「とはいえ、まだまだ負けてはあげられませんね。マーガリンや私に並ぶ……いや、超えるのでしょう?その為に私やマーガリンを利用なさい。私は二人のやりたい事を全力で応援しますからね」


 そう言って微笑みながら、仁王立ちしている兄さん。

 強い。本当に強い。

 兄さんに比べたら、八岐大蛇だってただの蛇だ。


「お?面白い事をやってるな」


 兄さんが辺りのマグマを消し、草原を復活させた所でアテナとクロノスさんがやってきた。


「アテナ。今日はアリス姉さんとユグオンしなくて良いの?」

「あー……ちょっと無茶をしすぎてな、一日ログインを禁止されてしまったんだ」


 一体何をやったのか聞きたいような、聞きたくないような。


「ちょっとムカつく態度の奴らを斬り殺しちゃってなぁ」

「聞いてないのに語るの止めようね!?というかとんでもない理由だね!?」


 まぁ、ゲームをやってるとどうしようもない人間というのは必ず居るわけで。

 言っても聞かない人には力で……というのは仕方のない事なのかもしれない。


「まぁそんな事よりだ。二人も中々強くなってきたようだし、そろそろ私が訓練をつけても死なないんじゃないか?なぁロキ?」

「そうですね……」


 兄さんが悩む仕草をしている。どうかまだ無理と言ってくれませんか兄さん。

 いくら強くなってきたとはいえ、アリス姉さんと同類のこの女神、絶対手加減とかしない。

 兄さんは絶妙な力加減で私達に合わせてくれるから、まだ五体満足でいられる。

 リヴァルさんだってそうだ。私達に合わせてくれていた。

 だけど、アテナは絶対にそういう事はしないと断言できる。


「大丈夫かもしれませんね。獅子は我が子を千尋の谷に落とすとも言いますし、これも試練でしょう」


 兄さんー!?お前かアーネストォ!兄さんに変な知識を増やすんじゃないー!


「おお、ロキが認めるなら良いな!よしクロノス、私の槍を持て!」

「は、ここに」

「用意が良いな、助かる。鎧化(アムド)


 槍が、アテナの全身を覆う。それは鎧へと変化した。


「さて、こちらは準備完了だ。まずはどの程度の力にまで耐えられるか調べたい。本気で防げよ二人共。じゃないと、死ぬぞ?」

「「!!」」


 アテナにこちらを殺すつもりなど無い。だと言うのに、向けられた殺気……いや、覇気だろう。

 それが凄まじい圧力となって襲う。

 常人がこれを受ければ、それだけで戦意喪失するだろう。

 むしろ意識を保っていられないかもしれない。

 私は気圧されないように、ソウルを握る手に力を込める。


「行くぞ、アテナッ!」

「ったく!骨は拾ってくれよな兄貴!」

「「うおぉぉぉぉっ!!」」


 私とアーネストの本気の一撃。


「ハァァァッ!!」


 それを、槍の一薙ぎで弾き飛ばす。


「「!?」」

「腹に力を入れなっ!」


 アテナの言葉と同時に、お腹に限界まで魔力を注ぎ込み強化する。

 障壁を何重も重ね、結界を重ねる。

 それでも……その幾重にも重ねた防御壁は。


「『ファイナリティ・ヴァレスティア』」

「「がはっ……!」」


 アテナの光り輝く突きを防ぎきれず、全て割られて直撃した。


「はぁ、アテナ。ユグドラシルですら、本気で防御に集中しなければ防げない攻撃をするとは、何を考えているのですか」

「ふむ……いや、やはり凄いなこの二人。私は今回、殺すつもりで攻撃をした。っと、安心してくれ。死んでも時間を戻すようにクロノスに伝えていたからな」

「知っていますよ。そうではなく、何故今回、その力を二人に与えたのかと聞いているのです」

「それは……」


 薄れゆく意識の中で、私が聞けたのはそこまでだった。

 やはり、神界最強の実力は遠い。

 私も、もっと強くならないと……。

 そうして、私の意識はそこで途絶えた。

本日二話目投稿です。いつも読んでくれてありがとうございます。

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