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31話.リリアちゃんと遊ぶ

 今日は朝からベッドに寝転びながら、スマホを弄っていた。

 TWITTERのアカウントにログインして、色んな人達の呟きを眺めていた。

 面白い話題や興味深い話題がたくさんあって、それを読んでいるだけで時間が過ぎる。

 そんな折、ラインにメッセージが届いたという通知が届く。

 開いて見ると、リリアちゃんからだった。


『蓮華様、少し暑くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか』


 多分、これから手紙のような言葉が続いていくと予想した私は(今回はスマホを弄っていたのですぐに気付いたけど、いつもは見るのが遅い為リリアちゃんが全文打った後に見る為予想できる)先手を打つことにした。


『今はベッドで寝転びながら、スマホ弄ってるよー』

『!?(猫が驚いたスタンプ)』


 リリアちゃん可愛いスタンプ使ってるなぁ。私も買っておこう。(スタンプをタップすると、購入先へ飛べるのだ。中には販売停止してるスタンプもあったりする)


『蓮華様、もしお時間に都合がつきましたら、遊びに来てくれたり……って無理ですよね……蓮華様はお忙しい方ですし、貴重なお休みの時間を……』


 リリアちゃんはまだ十二歳。遊びたい盛りだろう。それが、こちらの事情を慮ってしまう。王女っていう身分が、彼女を大人びた精神にしてしまっているんだろう。

 可愛い彼女が無理をしてる姿なんて見たくない。

 それに、私はやりたい事をやってるだけなので、忙しいわけじゃないのだ。


『いいよ、今から行こうか?ちょっとだけ準備するから、少し遅れるけど』

『い、良いんですか!?是非、是非いらしてくださいっ!』

『了解。それじゃ、時間が分からないのもあれだろうし……今から一時間後で良いかな?』

『はい、はいっ!楽しみにしております蓮華様っ!』

『そんなに喜んで貰えると嬉しいな。あ、一応お忍びって形にしてね。特別公爵家と王家の人間が会うんじゃなくて、私とリリアちゃんっていう友達が会うだけだからね』

『~!?はいっ!(猫が敬礼してるスタンプ)』

『!(猫が敬礼しているスタンプ)』

『蓮華様も!?』

『リリアちゃんの見て買っちゃった』

『!!(猫の表情が赤くなってるスタンプ)』


 おっと、スタンプ合戦してたら時間が経ってしまう。

 私はスマホをしまって、母さんにツゥエルヴへ行く事を伝えて外に出る。

 アリス姉さんはユグオンしてるだろうし、アーネストはすでに出かけている。

 兄さんはリビングで本を読んでいるようで、外に出る時に微笑んで手を振ってくれた。

 足を組んで読むその姿は、絵になっていたけど……何故リビングで?

 とりあえず、王都で何かリリアちゃんが喜びそうなお菓子でも買っていこう。


「蓮華様っ!」

「おっと、久しぶりだねリリアちゃん」

「はいっ!」


 相変わらず小っちゃくて可愛らしいお姫様だ。その後ろでは徹君が礼をしつつ控えていた。


「こっちです蓮華様!私の部屋にご案内しますっ!」


 そう言ってグイグイと私の手を引っ張っていくリリアちゃんに苦笑する。

 ピンク色のドレスを着ているのはお姫様として普通なんだろうけど、背中に剣を背負ってるのは如何なものかと。

 まぁ、リリアちゃんはこの見た目だけど、王国ツゥエルヴ最強のサンライト・テンプルナイツという騎士団の団長なんだよね。

 リリアちゃんは華奢な体をしているけれど、母親譲りなのか凄まじい魔力を内包している。魔力回路もそれに合わせて強く、常人の数十倍の強度がある。


 その魔力を身体能力の強化に当てている為、並大抵の人じゃリリアちゃんにかすり傷一つ、つける事はできないだろう。

 まぁ、そもそもが傍には徹君が居る。

 彼もかなりの実力者だから、不意を突かれるなんて事もないだろう。


 リリアちゃんに引っ張られながら歩いていると、廊下で王妃様と出会った。


「あらあらリリアちゃん。蓮華様をお招きしたなら、私にも言って欲しかったわ~。ようこそいらっしゃいました蓮華様。今回はきっとお忍びで、なのでしょう?ですから、何も致しませんが……せめて、ごゆっくりなされてくださいね~」


 ほんわかとした王妃様が、こちらへと優しい笑みを向けながらそう言ってくれる。

 こちらの意向を汲み取ってくれているのが分かった。


「ありがとうございます王妃様。リリアちゃんに無理を言ったのはこちらなので、叱らないであげてくださいね」

「うふふ、分かりました。ありがとうございます蓮華様。私もお茶会の約束が無ければご一緒したかったのですけれど……蓮華様、ほんとぉ~に、ゆっくりなさっていてくださいね~」


 そう言って、王妃様は足早に去って行った。


「ママも蓮華様の事が好きなんです。きっと、もっとお話がしたかったんだと……ごめんなさい蓮華様」

「ん?なんで謝るの?……それより、リリアちゃんもそろそろ様を外してくれたら嬉しいんだけどなぁ」

「ふぇっ!?そ、そそそそれは……!?」


 途端にアタフタするリリアちゃんに笑ってしまう。


「徹君もそう思わない?なんなら、徹君も呼び捨てで良いよ?」

「それはどうかご容赦ください蓮華様。我が姫が敬称をつけて呼んでいる御方に、臣下である私などが呼び捨てにするなど、不敬が過ぎます」


 そう言って奇麗な礼をする徹君を見て、私はニヤッと笑う。


「ほらほらリリアちゃん、徹君が私を呼び捨てにする為には、リリアちゃんが呼び捨てにしないと無理だって言ってるよ」

「ふえぇぇっ!?と、とーるぅ!?」

「ぐふぅっ……!(吐血)」


 リリアちゃんが涙目になり、徹君を見つめる。そんな可愛い姿を見た徹君は、鼻血ではなく口から血を吐いた。

 これには流石に私も驚いたんだけど、すぐ傍で控えていた侍女達が徹君の血を鮮やかな手並みで拭いて綺麗にした。

 手慣れてる!?


「し、失礼。蓮華様、何卒、何卒ご容赦をば……私が死んでしまいます……」

「う、うん。ご、ごめんね?その、リリアちゃんに呼び捨ててもらいたいなぁって思っただけなんだけど、まさかこんなことになるとは思わなくてね……?」


 リアルで吐血する人初めて見たよ。結構ビックリするものだね。


「う……その、なら……蓮華お姉様……は失礼、でしょうか……?」

「ぐふっ……!」


 ちなみにこれは徹君じゃなくて私の呻き声だ。

 上目遣いに見つめながらそう言うのは反則だと思うの。

 徹君はorzの姿になって(うずくま)っている。気持ちはよく分かるので何も言うまい。


「り、リリアちゃんが良ければそれで。まぁ様つきなのが変わってないけど……」

「うぅ……蓮華お姉様を呼び捨てなんて、私には無理ですよぅ……」


 がはっ……!リアルお姫様があざと可愛い……!

 しかもこれ素でやってるから恐ろしい。

 気を取り直して、リリアちゃんに微笑みかける。


「それじゃ、案内続けてもらっても良いかなリリアちゃん」

「!!はいっ!」


 花の咲いたような笑顔で返事をしてくれるリリアちゃんに、やっぱりこの子は笑顔が一番可愛いなと思った。



 それからリリアちゃんと二人で、本を読んだり最近流行りのゲームをしたり、香水の香りの違いを楽しんだりして時間が過ぎていると、部屋をノックする音が聞こえた。

 この部屋はリリアちゃんの部屋で、中には徹君と侍女の皆さん、外には兵士の方が護衛として居る。

 そんな中で直接ノックをしてやってくる人は限られる。


「リリアちゃん、入っても良いかしら?」

「ママ!?良いよ!」

「ふふ、お楽しみの所ごめんなさいね」


 そう言って微笑みながら中に入ってきたのは、この国の王妃様だった。

 リリアちゃんとそっくりの、小柄で可愛らしい女性だ。

 大人とは見えない体型なので、もしかしたら亜人のドワーフ種なのかな?

 そうだとしたら、王妃様の遺伝を受け継いでいそうなリリアちゃんは、これからも見た目が変わらない可能性が高い。


「どうしたのママ?今日は侯爵家主催のお茶会だったんじゃ?そんなすぐ帰れないよね?」

「急用ができたって抜けちゃった☆」

「ママァ!?」

「だってだって、折角蓮華様と可愛い娘が一緒に居るのに、ママだけお茶会で外に居なくちゃダメなんて耐えられない~!」


 可愛らしくだってだってと言う王妃様。この見た目でそれをやられると、大抵の人は許してしまうと思う。

 だが、娘には効果が無かった。


「だってじゃないでしょママ!王妃様がそんなだと示しがつかないじゃない!」

「あぅぅ……リリアちゃんが冷たいの~。折角、リリアちゃんが大好きなコンソメ風ケーキ買ってきたのに~」

「コンソメ!?し、仕方ないなぁママは!今回だけだからねっ!」

「やったぁ!だからママはリリアちゃん大好き~!」


 仲の良い親子の姿を見ながら、コンソメ風ケーキって、とても美味しそうに思えないんだけど、どうなんだろうとか考えていたら、またもノックの音が。


「リリア、パパだよ。入っても良いかな?」

「パパ!?い、良いよ!」

「うん、邪魔するね。おや、お前も来ていたのかい?」

「ええアナタ。だって、蓮華様がお忍びで来てくださっているのよ?そんなの、他の仕事をしてる場合じゃないでしょう?」

「うむ、そう思って他の者に任せてきた」

「なんでママもパパも来るの!?」

「だってリリアちゃんと蓮華様のツーショットなんて、国宝級なんだものぉ!」

「そうだぞリリア!リリアと蓮華様の仲睦まじい姿を見る事が出来るなど、今ほどトールと侍女達を羨ましく思った事は!」

「パパ!ママ!」

「「ごめんなさい」」


 今の一瞬で、この家庭のヒエラルキーが見えてしまった気がしてならない。

 気が付けば正座させられている王様と王妃様。

 徹君と侍女達はもはや土下座の形になっていた。

 そりゃ自国の王様と王妃様が座ってる中で、立ったままいられないんだろうけれど。


「えーと、リリアちゃん、その辺で。私は悪い気はしてないし、いつも頑張っているお父さんとお母さんが、一日くらい休んでも誰も文句言わないと思うよ。ね?」

「蓮華お姉様が、そう仰るなら……」

「「蓮華様……!」」


 王様と王妃様が、物凄く瞳を輝かせてこちらを見てくる。

 別に感謝されるような事をしたつもりはないし、こんな事で株が上がっても嬉しくないけども。


「そだ、買ってきてアイテムポーチに入れたまま忘れてたよ。このお菓子プレゼントするね。この国の王都で買ったものだし、市井の物だから口に合うか分からないけど……一緒に食べよっか」

「はいっ!」


 嬉しそうに喜ぶリリアちゃんを見て、買ってきて良かったと思う。


「お二人もどうですか?その、口に合うかは分かりませんけど……」

「「是非っ!」」


 うん、心配するだけ無駄だったかな。

 それから買ってきたお菓子と、王妃様が持ってきたケーキを平らげた後、食べ物の話題になったので料理の話になり、その後リリアちゃんに料理を教えてあげる事になった。

 王様と王妃様はリリアちゃんの手料理を食べたのは初めてだったようで、感激していた。

 なんでも、お菓子作りは好きでよく隠れて作っていたそうだけど、料理は作った事が無かったらしい。

 それでも普段お菓子を作っていたからか、手際よく料理をするリリアちゃんは私よりも上手だった気がする。


 可愛い本物のお姫様のリリアちゃんは、やっぱりチートだと思った。

 ちなみに、コンソメ風ケーキは可もなく不可もなく……な味だった。私はもっとしっかり甘いケーキが好きです……。

いつも読んでくれてありがとうございます。

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