表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

486/713

25話.家に帰って

 グリンと別れてから、街を歩き出店を楽しんでいたら、日が暮れてきたので『ポータル』で家のすぐ傍の泉へと飛ぶ。

 『ワープ』だと効果範囲外で使用できないんだよね。こればかりはいくら場所のイメージが明確に出来ていても無理みたいだ。

 まぁ、『ポータル』も『ワープ』も魔力使用量は微々たる物なので、気にならないけれど。


「お帰りなさい蓮華さんっ!」


 玄関を開けたら、アリス姉さんがジャンプして抱きついてきたので、しっかりと受け止める。

 香水を使っていないのに、ジャスミンのような優しい華やかな香りがする。


「あ、レンちゃんお帰りー!晩御飯もう少しで出来るからねー!」

「分かったー!ありがとう母さんー!」


 台所から聞こえる母さんの声に、返事をする。

 アリス姉さんが抱きついたまま手洗い場へと向かい、石鹼で手を洗ってうがいをしておく。


 そのままリビングへ行くと、アーネストがミラヴェルと腕相撲をしていた。


「ぐぎぎぎぎっ……!うごか、ねぇっ……!」

「どうしたアーネスト、私の細腕にすら勝てないのか?」


 やっぱり凄いなミラヴェル。私は昨日アーネストと腕相撲で勝負したけど、負けちゃったんだよね。


「ねーねー蓮華さん、ユグオンで攻略に詰まったダンジョンがあるんだけど、教えてー!」


 なんてアリス姉さんが言ってくるので、ソファーに座って会話を楽しむ事にした。

 ちなみにユグオンとは、ユグドラシルオンラインの略称だ。

 最初ユグドラと略そうとして、特別公爵家に不敬だと議論になって、ならユグオンにしようとなったとかなんとか。

 私やアーネストが出かけている間、アリス姉さんは家でずっとユグオンで遊んでいるらしく、話を聞くとかなりレベルが上がっているようだ。

 今はアテナとパーティを組んで、ランキングの最上位を目指しているらしい。


 ランキングとは、ダンジョンを攻略した時に貰えるポイントで、トップ1000までの名前が掲示板で表示されるシステムの事だ。

 速く攻略すればするほどポイントが貰えて、攻略ダンジョンが多いほどその差も大きくなる為、タイムアタックを何度も繰り返し速く攻略する人も居れば、次のダンジョンにすぐに向かう人も居る。

 アリス姉さんとアテナは後者のようで、次々とダンジョンを攻略しているらしい。

 ただ、今日挑んだダンジョンがどこにもボスが見つからず、撤退を余儀なくされて困っていたようだ。



 皆で食事をして、アーネストとの報告会(今日何をしてたかをお互いに話すだけ)も終え、後は寝るだけ。

 王都フォースで買った、ラベンダーの匂いのする入れ物をベッドの傍にある机の上に置く。

 アロマテラピーって言うんだっけ?この世界には転生者が多いだけあって、元の世界であった色々な物が商品化されているんだよね。

 そういえば、アーネストは今日転生者と出会ったらしい。


 意気投合して、冒険者ギルドでパーティーを組んで依頼を片っ端からこなしていたらしいけど、何やってるんだか。

 まぁ人の事言えないかな、私は。


「おやすみなさい」


 誰に言うでもなく、私はそう呟いて目を瞑る。

 良い匂いがするからか、いつもよりも眠りにつくのが早かった気がする。



 そして翌日、皆で朝食を取ってから、午前中はのんびりと家で過ごしていた。

 カレンとアニスはインペリアルナイトマスターなだけあって、物凄く多忙なのだ。

 むしろ、あれだけの時間を捻出するのも大変だったはずだ。


 それでも、仕事を片付けて時間を作るんだから、凄いと思う。

 スマホで連絡すると、昼からならと返事が来たので、お昼前にグリンと別れた喫茶店に行くつもりだ。


 ちなみに、グリンは特に用事も無いので、のんびり本を読みながらここで(喫茶店の事)時間を潰しておくので、いつでも良いですと言っていた。

 待たせるのもあれだから、少し早めに出るつもりではあるけどね。


「あれ?蓮華さん今日は出かけないの?」

「ううん、昼から出かけるよ。アリス姉さんは今日も?」

「うん!楽しいよユグオン!」


 溢れる笑顔にこちらも笑顔になってしまう。

 アリス姉さんが楽しんでいるなら、なによりだ。


「お昼まで時間あるなら、蓮華さんも一緒にやる?」

「ううん、もうレベル差が凄いだろうから、邪魔になるよ。アテナと攻略するんでしょ?楽しんできて」

「蓮華さんと一緒なら、別に攻略は後回しでも……」

「アテナも居るんだし、そっち優先で良いよ。攻略組って呼ばれてるんでしょ?」

「あはは……」


 アリス姉さんとアテナの作ったクラン、『識欲の女神』は、ユグオンのトップクランの一つで、攻略組と呼ばれているらしい。

 そりゃ一日中ゲームばかりしてる人達が集まれば、トップクランにもなるだろうけど。

 あ、ちなみにクランとは、ユーザーが集まって大人数の仲間になるというか、そんな感じのシステムだ。

 クランのランクによって所属できる人数に上限があるので、入りたくても入れないなんて人も出てくる。


 アリス姉さんが部屋へと戻るのと入れ違いに、アーネストが二階から降りてきた。


「あれ?お前がまだ居るなんて珍しいな」

「今日は昼までゆっくりしてようと思って」

「そうなのか?なら、午前中は俺に付き合わねぇ?」

「良いけど、昼前には帰るぞ?」

「オーケーオーケー!」


 そう笑顔で言うアーネストに苦笑する。

 しょうがない、少しだけ付き合うとするか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ