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9話.ユグドラシルオンラインの世界へ

 人気ヴァーチャルユーチューバーのトウカちゃんとの共演を終えて、一息つく。

 この共演はユグドラシル社のネット事業経営の関係で、ユグドラシルオンラインの動画を主体で撮って拡散していく人を探していたらしい。

 そこで、様々なゲームや踊り、またトーク等で話題のある美月トウカちゃんに白羽の矢が足ったそうな。


 私も家で寝転んでいる時に、よく見ていたヴァーチャルユーチューバーの一人で、とても可愛くて面白い人だ。ユグドラシル社で契約の為に実際に会ったけど、本物もとても可愛らしい、猫のような子だったよ。

 てっきり男の人かと思ってたので、ユグドラシル社の部屋に入ってきた時に再確認してしまった。

 今回は私がゲストという形だったけど、これからはユグドラシル社がスポンサーという形で契約を結び、固定給を払う形で、動画を拡散してくれる事になっている。


 ユグドラシルオンラインの開始までまだ時間はあるので、ヴァーチャルユーチューバーの動画を色々と見て行く。

 私が好きなのは、歌ってみただったり踊ってみただったり、可愛く、またはかっこよく動き回ってる動画。

 自分も真似しようと参考にしてたりする。踊ってみたの踊ってみたというか。


 昔はそうでもなかったんだけど、今は体を動かすのが楽しいんだよね。

 なので踊りも凄く楽しい。元から音感は良い方だったので、リズムよく踊れるととても気持ちが良いんだよね。

 音ゲーとかで、タイミング完璧で押すとパーフェクトって出て、それを繰り返せれば高得点が取れるんだけど……それを全てパーフェクトでいけた時の達成感といったらもうね。

 その時と変わらない、もしくはそれ以上の高揚感が出るので、今ではとても大好きになった。


 そして、時刻は12時。ユグドラシルオンラインのサービス開始時間が来た。

 ユグドラシルオンラインは、七つの大陸がある。

 サービス開始から行けるのは一つの大陸だけで、少しづつアップデートで公開されていくらしい。

 

 最初の大陸名は、『アージア大陸』。……うん、深く突っ込むのは野暮ってものだよ。

 この大陸では、基本的に種族ヒューマンが住んでいて、他の種族はまだ出てこない。

 ちなみに、大陸が解放されていくに従って、交流が増えてヒューマンの大陸にも他の種族が行き来するようになる。

 解放されていないだけで、他の大陸もちゃんと存在していて、アージア大陸で何かあれば、他の大陸にも影響が出るようになっている。

 この世界に決められたストーリーは存在せず、ユーザーによって物語が作られていくのだ。

 ユーザーは死んでも生き返るが、NPCは仮に死ねば、その世界から消える。


 この世界ではNPCと結婚する事も出来るので、命の大切さは現実と変わらないんだ。


 っと、考えていても仕方ない。それじゃそろそろユグドラシルオンラインの世界へとログインしようかな。

 

 『YUGカード』をサークレットに嵌め込み、頭に装着する。

 後はサークレットについている赤いボタンを押すと、ログイン開始だ。

 ポチっとな。


「『ユグドラシルオンライン』へようこそ。プレイヤー名蓮華様ですね。チュートリアルは必要でしょうか?」


 起動してすぐに、全体が真っ白の空間が広がっていた。

 キャラクタークリエイトした場所かな。まぁ話的にその次だからね。

 目の前にいる女神のような女性へと視線を向けて、答える。


「ううん、必要ないよ」

「分かりました。それでは、『ユグドラシルオンライン』の世界へとお送りします。女神ユグドラシル様の加護のあらん事を」


 そう言ってぺこりとお辞儀する。

 そのユグドラシルの化身が私なんだけど、とは言えない。

 まぁ、この世界にはこの世界で女神ユグドラシルが存在するので、厳密には違うけどね。

 この世界での私は、ヒューマンの蓮華でしかないんだから。

 うん、楽しみだな。まぁ、他の人と違って色々と知ってるのである意味チートだけどね。


 そして転送された場所。世界樹ユグドラシルの麓にある、最初の街。

 ここで色々な訓練が受けれるし、装備も初期装備なら最初から売っている。

 手持ちは100ユルしかないので、一番安い装備でも2個も買えば尽きるけどね。


 私は早速訓練場へと足を向ける。

 何故なら、この訓練場で試験官から食料であるパンと、500ユル、そして訓練した対応装備を貰えるからだ。

 クエストって奴だね。まぁ本当の理由はそれだけじゃないけど。

 周りを見れば、たくさんの人達が訓練場に集まって、クエストを終えて街の外へと狩りに出かけているようだった。

 皆速いなー。


「おっ、蓮華も来たか」

「すみませんナンパはお断りしてまして」

「俺の見た目が違うなら流してやったんだけどなっ!」

「あはは、ごめんごめんアーネスト。やっぱお前もここだよな」

「おう、当然だろ?」

「だな」


 お互いにニヤッと笑った後、私達は木の案山子(かかし)の前に立つ。

 私は木刀を、アーネストはメリケンサックを装備していた。


「あれ?お前格闘家にしたの?」

「いやどっちもするけどさ。拳の方が回数速いと思って」

「成程、考えたな」


 私は木刀を振り、アーネストはパンチを繰り返す。

 さて、この間に詳しい話をするとしよう。


 まず、この訓練場では経験値が貰えるのは、職業だけだ。

 一回攻撃したら1EXP入るので、100回攻撃すれば職業レベルが2になる計算だ。

そして、ここでのクエストは職業レベル2に到達したらクリアとなる。


 クリアすると、この訓練を始めた武器はそのまま貰える。売っても0ユルなので、色んな職業になって全部手に入れて売って金策に、なんて事は出来ない。


 話を戻そう。ちなみに、この案山子というか木偶人形を攻撃して貰える職業経験値は、実はレベル10まで1づつ貰える。

 で、私の目指している上級職への転職条件は、職業レベル10なのだ。

 何が言いたいかと言うと、この訓練場で上級職への転職条件を揃えてしまえるのだ。


 ただここで、それなら外でモンスターを狩ってレベル上げれば良いじゃんって普通なら思うだろう。

 実はこのゲーム、転職してもベースのレベルが1になるには特殊なアイテムが必要で、それの入手方法が結構辛い。

 普通の転職では、ベースのレベルは変わらないのだ。

 

 そして、何故最初から上級職になりたいかと言うと、成長率のボーナスがかなり違うからだ。

 初期職の戦士での成長ボーナスは、STR+2、VIT+1だ。

 これは、職業レベルが上がるとプラスされる分と、ベースレベルが上がった時にプラスされる。

 そして、バトルマスターという上級職があるのだが、これは戦士と格闘家の職業レベルを10に上げる事で成る事ができる。

 バトルマスターの条件は比較的簡単なのだが、この成長率ボーナスは初期職より群を抜いて高い。

 STR+5、DEX+3、VIT+3、AGI+3ものボーナスがつくのだ。


 お分かり頂けただろうか。

 どうせベースのレベルを上げるなら、上級職に変えてからレベルを上げたい。

 でも、モンスターを倒せばベースのレベルが上がってしまう。

 だからこそ、このベースの経験値は入らない訓練場の案山子を利用するのだ。

 ベースレベルも100を超えると中々上がらなくなるからね。


「ふぅ、周りの人達はやっぱり、すぐ入れ替わるな」

「そりゃな。最初からこんな苦行する人は居ないと思う」


 それでも、何人かは私達を見て、なんでまだやってるんだろう?と不思議そうな感じで見ては去っていく。

 中にはベースレベルがすでに10を超えている人なんかも見え始めた。

 それでも、職業レベルは2くらいだった。

 このゲーム、ベースの経験値は序盤は上がりやすいんだけど、職業経験値はあんまり増えないので、中々上がらないのだ。

 そういう意味でも、1回攻撃で1の経験値が貰える事が破格だと後で気付く人は多いだろうね。

 その頃には、ベースレベルは上がってるだろうけれどね。


 私とアーネストは夜になるまで、ずっと案山子相手に攻撃していた。

 ずっと振り続けて、ようやく職業レベルが8まで上がった所で、私は剣を振るのを止める。


「アーネスト、そろそろ一回ログアウトしないか?」

「ふぃー、そうするか。蓮華はどれくらいまで上がったんだ?」

「今8かな」

「へへ、俺さっき9になったから、あと少しだぜ」

「よし取り消しだ。もうちょっと攻撃してく」

「ぶはっ。まぁ一回ログアウトしようぜ。ぶっ通してやってるし、飯食ってからでも良いじゃん」

「まぁ、それもそうだな」


 そうして、私とアーネストはそのままログアウトする。

 アバターはその場に残ったりしない。ただし、ログアウト場所はどこでも良いが、ログイン場所は大体同じ場所になる。

 死んだ時に復帰する場所、女神の銅像の前だ。

 これは各街に必ず設置してあり、魔物が侵入してこない結界を張る役目も担っている、という設定だ。


 さて、ご飯食べたらまた職業レベル上げる為に訓練場へ行かないとね。  

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