46.祠への道中
「一晩で解決してしまいますなんて、もう蓮華お姉様は本当に……」
「流石すぎます、蓮華お姉様」
なんて言ってくるカレンとアニスに苦笑する。
いや、私だけだったら、何日掛かったか分からないんだけどね。
ひとえに兄さんやミレニアのおかげだ。
だけど、それを言うわけにはいかないので。
「あ、あはは……」
と苦笑するしかなかった。
「それでは、行きましょう蓮華お姉様。昨晩のうちに、準備は完璧ですわ。蓮華お姉様のお蔭で、憂いもなくなりましたからね」
そういえば、こんな問題を抱えながらも、私に協力してくれるつもりだったのか。
それに気付いたので、言っておく事にした。
「二人とも、私のお願いを聞いてくれるのは本当に嬉しい。だけど、優先順位を間違えないで欲しいんだ。私だって力になるから、何かあれば言ってね」
その言葉に。
「「ありがとうございます、蓮華お姉様」」
そう笑顔で言ってくれる二人だった。
そして列車に乗り、また砂漠の前に。
ここからは砂漠用の車で移動か。
あれ、前回より車が大きい?
なんていうか、キャンピングカーみたいというか。
「今回は魔法のオート操作で、勝手に進むようにしておきましたの」
なんて笑顔で言ってくるカレン。
うん、それができるなら前回もしてほしかったな。
いや、準備できなかったんだろうな、流石に。
車に乗り込み、カレンが何かすると車が走り出す。
成程、これなら二人の手も空いているし、三人で遊びながら行けるわけか。
「蓮華お姉様、カレンお姉様、今回は三人でできそうな物を色々詰め込んできましたので、楽しみましょう」
なんてウキウキ顔のアニスが言ってくる。
どれだけ楽しみにしてたんだか。
その言葉に笑って。
「二人がやりたいのを選んでいいよ」
と答えた私だった。
それから数時間、遊んでいたのだが、車が急に止まった。
「ん?どうしたんだろう?」
「恐らく、魔物を感知したのでしょう。私達で片づけて参りますわ」
そう言って二人が外に出る。
私も出ようとしたんだけどね。
「蓮華お姉様は中でお待ちください」
「はい、大丈夫、です」
と言ってくるので、大人しく待つ事にした。
一応、窓から外が見えるので、そこで確認する。
ああ、成程、サンドウォームか。
あの巨体じゃ、車も止めざるをえないな。
二人が一撃の元に倒してしまう。
やっぱり、この二人は強いな。
あの別れた日から、更に修練を積んだのだろう、かなり動きの精度が良くなっている。
二人が戻ってきて、また車が動き出す。
「二人とも、お見事だったね。以前より、腕を上げたんじゃない?」
その言葉に嬉しそうにする二人。
うん、上達を褒められると嬉しいよね。
私も刀の修練をしていて、父さんに褒められた時は、認めてくれたような気がして嬉しかったものだ。
それから数日、同じような毎日だったのだが
まだ夜でもないのに、いきなり暗くなった。
「これはっ……まさか、砂嵐!?」
げっ。
マジか、やっぱそういうのあるよね。
「カレンお姉様、この規模は避けられません!」
「くっ……オート操作が裏目に出ましたか……!」
なんて言ってるので。
「我が呼び掛けに応えよ、シルフ!」
目の前に風が舞ったかと思うと、そこに現れるシルフ。
「やっほぉレンちゃん。どしたのー?」
驚く二人。
気にせず言う。
「シルフ、砂嵐が迫ってるみたいなんだけど、消せるかな?」
その言葉に。
「んー、良いよ!レンちゃんの頼みなら、ボクが散らせてあげる。ちょっと待っててね!」
と言って外へ出て行くシルフ。
窓から見ていると、砂嵐が消えて、元の青空が広がっていた。
シルフが戻ってくる。
「はい、終わり!一応風の精霊達に伝えて、しばらく遊ばないように言っておいたからね。砂嵐はこれで起きないと思うよー」
なんて言ってくれる。
予想以上で驚いてしまった。
やっぱり、大精霊は凄いんだな。
「ありがとうシルフ。ごめんね」
「ううん、レンちゃんの為なら構わないよ!それじゃ、また何かあったら気兼ねなく呼んでねレンちゃん!いつでも大歓迎だよ!」
そう言って消える。
二人がポカーンとしている。
「どしたの、二人とも」
声を掛けると。
「「蓮華お姉様、凄い……」」
ん?凄いのはシルフであって私じゃないよね?
また動き出す車。
こうして私達は、遺跡に着くまでの間、遊んでいたのだった。
そして、ようやく遺跡に辿り着く。
辿り着いたのだが……。
「なんだこれ、炎が遺跡の外まで漏れてるんだけど、何があったのこれ」
そう、遺跡全体が燃えているかのように、遺跡の入り口から火が出ている。
この中に入るのは勇気がいるな、見た目的な意味で。
「い、いくらなんでもこれはおかしすぎますね。でも、何故外まで熱気が出ていないのでしょう?」
とカレンが言ってくるが。
「あー、それは多分、私が氷の魔力で私達を覆ってるから感じないだけで、それ解いたら火傷じゃすまないんじゃないかな……」
その言葉に震える二人。
「「と、解かないでくださいね蓮華お姉様!?」」
解くわけないでしょ。
人をなんだと思っているのか。
でも、いくらなんでも熱を防ぐのと、火の中を歩くのとでは訳が違う。
とはいえ、カレンとアニスは役割を果たしてくれた。
この先は私の役目だ。
「それじゃ二人とも、ここまでありがとう。王都まで送るから、ちょっと待ってね」
と言ったら。
「蓮華お姉様!私達も最後まで付き合いたいですわ!」
「はい、蓮華お姉様!」
と言ってくるんだけど、どうしよう。
シリウスの時は帰ってもらったけど、別に居たからって会えないわけじゃなさそうだしなぁ。
聞いてみるか。
「それじゃ、ちょっと待ってね。我が呼び掛けに応えよ、ウンディーネ!」
いつものようにディーネが現れる。
「召喚に応じ、参りました。どうしましたレン、祠に着いたのですか?」
なんて聞いてくるので、状況を説明した。
「成程。これは恐らく、サラマンドラがイフリートに会いに来ているのでしょうね」
サラマンドラ?また知らない名前が。
「炎の大精霊ですよレン。普段は大きな竜の姿をしているので、大精霊と思わないかもしれませんが」
そうか、それでこんなに火だらけなのか。
よく溶けないなこの遺跡。
まぁ、火の遺跡だもんな、火に強くて当たり前なんだろうけど。
「それで、人が居ても会えるか、ですが、それは大精霊によりますね。今回のイフリートであれば、問題ないでしょう」
そうなのか。
「だってさ。だから、二人も一緒に行けるよ」
「「やったぁ!」」
年相応の笑顔で、嬉しそうにする二人。
そんな二人を見て微笑むディーネは、多分人間に悪いイメージは無いんだろうな。
「しかし、これは馬鹿みたいにはしゃいでいるようですね、イフリートは。もはや一分一秒たりともここに居たくないのですが、私は何をすれば良いのですかレン」
あ、そうだった。
そもそも、二人を返さないといけない場合にも手を借りるつもりだったのだけど、一緒に行く事になったし。
「うん、聞きたい事も聞けたから、また帰りに呼ぶね。ありがとうディーネ」
「そうですか、分かりました。あの火の中を進むのであれば、氷だけでなく、水も纏って進んでくださいねレン」
と言って消えるディーネ。
氷と水か、二重に張った方が良いって事は、よほどの熱量なんだろうな。
私と二人に、氷と水の魔力を纏わせる。
「「さ、さむいっ!?」」
なんて二人が言う。
「あの中進むんだから、それくらいの方が良いかなって。後で調節するよ」
「れ、蓮華お姉様、目の前が火で燃えているのに、寒いなんて幻覚を見ている気が致しますわ……」
「は、はぃ」
なんて二人が言うので笑ってしまった。
「あはは。それじゃ、中に入ろうか。見た目はあれだけど、以前と変わらないで行けると思うよ」
こうして、火で覆われた遺跡の中へ入る私達。
熱くはなく、むしろ寒いくらいの感覚で、火の中を進む。
ある意味ホラーな体験をしてる気がした。




