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番外編③.大きくなったアーネストと変わらない私

このお話は、Twitterで描いて頂けた絵を元に書かせて頂きました。


挿絵させて頂きましたので、是非ご覧ください。また、素敵な絵をありがとうございます。

 リヴァルさん達を見送り、リンスレットさん達と別れ、皆で朝食を取った後。

 アーネストはそのまま机に上半身を預け、寝てしまった。


「あちゃー、よっぽど疲れてたんだね」

「そうですね。私が部屋まで運んでおきましょう」


 そう言って優しくアーネストを抱きかかえようとする兄さん。


「あ、兄さん。私が運ぶよ」

「蓮華?……ふふ、分かりました」


 一瞬きょとんとした表情をした兄さんだったけれど、すぐに優しい表情に変わり、私にアーネストを託してくれた。


「ぐっ、重い!?」


 いや、私も魔力で力は増強しているし、人を一人担ぐくらいなんでもないんだけど。

 そういう意味の重いではなくて……なんというか、体が想像以上にがっしりしていたんだ。

 私の体は、どれだけ鍛えても筋肉で肌が硬くなる何て事はなくて……というか、滅茶苦茶ふにふにしてるんだよね。

 たまごはだって言うんだっけ?そんな感じで。


 それに、私とそう変わらなかった体の大きさが、今では明らかにアーネストの方が大きい。

 なんというか、男の子から男になったというか……あー!なんで私がこんな事を考えないといけないのかっ!


「フンス!」

「蓮華さん!?」


 なんとなく感情の整理がつかなくなった私は、アーネストを思いっきり持ち上げる。

 と同時に勢いがつきすぎて、アーネストが空へと舞う。

 アリス姉さんが驚き、アーネストへとすぐに魔法を掛けた。

 すると、私の両手へとゆっくり降りてきた。


「いや、そうはならないでしょ……」


 とはノルンの言葉。

 うん、ごめん。力の加減を本当に間違えました。

 これには母さんと兄さんも流石に苦笑(にがわら)い。


 で、私はアーネストをお姫様抱っこで二階の部屋まで運び、ベッドへと降ろす。

 途中、頭がヘッドボード(と言っても、普通のベッドの半分くらいの高さ)にゴンッと当たったけれど、アーネストが目覚める気配は無かった。


「どんだけ疲れてたんだよアーネスト……」


 思わず零したけれど、未来の戦況がそれだけ悪かったって事だろう。

 どれだけの期間、戦って来たのか分からないけれど……無事に帰ってきてくれて良かった。

 おぶとんをそっと胸の辺りまでかけて、カーテンを閉めた。

 夜のように真っ暗にはならないけれど、ほの暗くなった部屋。


「おやすみ、アーネスト。また明日な」


 そう一声かけてから、私はその場を後にした。

 それから、アリス姉さんとノルン、ゼロと共にボードゲームをして遊んだ。


 古今東西、人気の人生ゲームだ。

 日本で売っているものとの違いは、マップに自分のミニチュアが実際に存在して、そのミニチュアが動いて色々な目に合う事だ。

 例えば、暴漢をやっつけてお礼にお金を貰うマスに止まったら、実際に自分の姿をしたミニチュアが暴漢をやっつけて、お礼してもらうのを見れる。

 その性質上、変な内容はないようにきちんと監査されている。……ギャグじゃないからね?


 コホンコホン。で、結果はアリス姉さんがぶっちぎりのトップだった。運の精霊にでも愛されてるんじゃないだろうか?ルーレットが9から12しか出ないなんてことある?


「わーい!私の勝ちー!約束通り、今日の昼食の卵焼きは私に差し出すように!」

「「「はい……」」」


 敗者である私とノルンとゼロに拒否権は無い。

 まぁ、嬉しそうなアリス姉さんを見ると、まぁいっかって思っちゃうんだけど。

 そんなこんなで昼前になると、階段から足音が聞こえた。


「おーう……おはよう皆……」

「まだ昼前だぞアーネスト。もう起きて良いのか?」


 眠たそうにしながら、降りてくるアーネストだった。


「ああ、流石にずっと寝てたら夜が寝れなくなっちまうからな……ちょっとは寝れたし、夜までくらいなら持つわ。何してたんだ?」


 机の上には、昼前まで皆で遊んでいた残骸がゴロゴロしていた。


「おー、懐かしいな!俺も混ぜてくれよ!」


 それを見た途端、元気になったアーネストがそう言う。

 

「これも!これも……!なっつぃなぁ!」

「そうか?そんなに昔の事じゃ……って、そうか。未来じゃこういうのも、無くなってたのか?」

「……ああ。ひっでぇ状態だったぜ。廃墟だらけだったしな。空も澱んでて、ずっと暗かった。でも、皆必死で戦ってた」


 その時の事を思い出したのか、アーネストが辛そうに言った。


「……でも、助けれたんだよな?」

「おう。流石リヴァルさんだったぜ。俺の助けなんて要らなかったくれぇだ」


 そうニカッと笑うので、こちらも安心して笑う。

 ただ、そこで気付いた。

 こう、テーブルに手を置いた私が見る視線が、顔を上げなくてはならない事実に。


「……アーネスト」

「なんだよ?」


 突然の私の凝視に、アーネストだけでなく皆も視線を集中させる。


「ひとりだけ大きくなっちまって!ずっこいぞ!アーネスト!!」


 そう言ったら、アーネストは片目を瞑って自慢げに言う。


「まーまー。蓮華だって直ぐに大きくなるって」


挿絵(By みてみん)


 そんなやり取りをしてたら、皆にすっごい笑われた。


「あはははっ!蓮華さん、そんな事気にしてたの?」

「ぶふっ……!蓮華、アンタ可愛いわね……!」

「わ、笑ったら駄目だよ姉さん、ふふっ……」


 私の顔は今真っ赤だと思う。


「良いじゃねぇかー。蓮華はリヴァルさんみたいになるんだし、将来安泰じゃん?」

「それは……そうかもしれないけど。そういえば、アーネストの未来の姿も見てきたんだよな?そこんとこどうなんだよー」

「え!?俺か……!?俺は、その……。……って俺に未来の俺を評価しろって鬼畜の所業だろ!?」

「なんでだよ!知ってるのアーネストだけなんだから、教えろよー!」

「嫌だっ!どう答えてもからかうつもり満々だろ蓮華!」


 そう言って外へと逃げようとするアーネストに回り込む。


「おまっ!?」

「ふっふっふっ。ボスからは逃げられないのだよアーネスト」

「そうそう、ついでに言うと魔王からも逃げられないのよ」


 気付けば、ノルンまでドアに回り込んでいた。


「チィッ!なら二階へ……なにぃ!?」


 後ろにはアリス姉さんが先回りして笑いながら両手を広げていた。

 まさに弁慶の仁王立ち!……違うけど。


「くっ!お前らっ……!」


 前門の虎後門の狼状態のアーネストは、唯一誰の味方もしていないゼロへと視線を移す。


「アーネスト、諦めろ」


 そう言って視線を下げたゼロに、アーネストは項垂れる。


「自分ちで味方がいねぇって酷くねぇ?」

「私より大きくなったせいだな」

「超理不尽!」


 というわけで、アーネストにはお昼ご飯までじっくりと未来の自分について語ってもらった。

 恥ずかしそうなアーネストを見れて楽しかったです。


途中の挿絵は、はるきKさんに頂きました。絵をタップorクリックすると、はるきKさんのみてみんのページへと飛ぶかと思います。そこではふたゆめだけでなく、様々な物語のイラストが見れますので、お時間がありましたらそちらも是非ご覧になってください。

いつもありがとうございます。

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