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213話.オシリスの想い(アリスティア)

 サンスリー城の上空から、地上を見下ろす。

 この国に生きている人達に乗り移っていた下級悪魔達は、ほぼほぼ倒されている。

 残った残党も時間の問題だろう。

 でも、おかしい所がある。

 まず第一に悪魔達が弱すぎる。悪魔達は基本的には人間や亜人に比べ、魔力が高く魔法が得意な性質がある。

 だと言うのに、その魔力すら脆弱に感じる。あれではまるで、力を吸い取られた後の抜け殻のようだ。


 それに、気になる点がもう一つ。サンスリー王国全域に、結界が張られている。最初は爆破する為だと思っていたけれど、ならそれを防いだ今も張られているのはおかしい。


「んむぅ~……私考えるの苦手なんだよなぁ……」


 誰も居ない空で、独り言ちる。

 蓮華さんが聞いたら苦笑するだろうし、アーくんが聞いてたらきっと楽しそうに笑うだろう。


 そんな事を考えながら海へと視線を向ける。おびただしい数の魔物達が、雪崩のようにサンスリー王国へと向かってきている。

 幸い空を飛ぶ魔物は居ないようだけれど、問題はその数だ。あれじゃ物量で押されてしまう。

 そう思っていた時に、ある場所から光線が放たれるのを確認した。

 その光は魔物達へと直撃し、凄まじい大爆発を起こす。


 あれは準破壊魔法かな。地上では大型なんちゃらって呼称してたっけ。

 その放たれた場所を確認してみると、大砲のような形をした物の下に大型の魔法陣が描かれていて、そこに多くの人達が両手を向けて魔力を注いでいる。

 成程、準破壊魔法を一人で使うには大量の魔力が居る。それこそ蓮華さんやマーガリンクラスでないと一人で使うのは難しいだろう。

 一人一人の魔力はちっぽけでも、協力する事で多くの力になる。なんでも一人で出来てしまう神々とはそこが違うね。私は人間の、協力する姿勢が大好きだから。


「それでも……」


 あの大砲のような物が連射に耐えられないのだろう。その分威力は高いけれど、その間をどうするのか……と思って海の方へと視線を向ける。

 するとそこには、蓮華さんが連れてきた彼らが居た。


 アニスちゃんがセルシウスを召喚し、海上を凍らせて皆その上を走っている。

 ミレイユちゃんは空を飛びながら魔法を放って魔物を倒しながら牽制し、ハルコちゃんは皆へ身体強化の魔法を掛けながら敵の動きを阻害している。

 カレンちゃん率いる騎士団や、あれはフォースでミレニアが訓練させた兵達だね。街へ侵攻させないように、扇のようにばらけて魔物を抑える布陣かぁ。


「でも、魔物の数に比べて圧倒的に少ない。あ、そっか。あの魔法の充填時間を稼ぐ為かな?」


 にしても、魔物達が倒されるごとに何かの流れが城に向かっているのなんだろう?

 悪魔達も、倒された時によく似た現象が……っ!しまった、そういう事かっ!

 私は勘違いしていた。ううん、させられたんだ!

 策略を潰したと思っていたけど、相手はそれを踏まえた上での更なる一手を打ってた!


「蓮華さんとアーくんが危ないっ……!」


 最初からあったサンスリー王国を包む結界、これは悪魔達を逃がさない檻だったんだ。

 ソウルプリズン……魂の檻。そして、もう一つの方陣でその魂を吸収する。


「急がないと……!」


 私は空から急降下する。

 場所は見当がついている。けれど、そこは敵にとって最も大事な急所とも言える。

 なら、それ相応の敵がその場所を守っているはずだ。

 そしてその予感は、正しかった。


「遅かったなアリスティア。ソロモンはすでに多くの力を得た。今更これを壊しても、これ以降のパワーアップは防げるが、手遅れかもしれんぞ」

「オシリス……」


 サンスリー城の裏手にある、女神像が安置された場所。

 王族の憩いの場として造られたその庭園で、オシリスは立っていた。

 おおよそ戦いとは無縁のこの美しい場所で。この雰囲気とは合わない殺気を私にぶつけてくる。


「オシリス、そこをどいて」

「これを壊したいんだな?」

「うん」

「なら、これで良いか?」


 オシリスはその剣を振り、魔法陣の根源であったであろう女神像を二つに斬り裂いた。

 その瞬間、サンスリー城を覆っていた結界も消える。


「え?どうして……?」


 私がきょとんとしていると、オシリスは少しだけ微笑んだ。


「お前が来た、それだけで俺の目的は達した。俺は奴らの仲間というわけじゃない。俺は俺の目的の為に手を貸していただけに過ぎない。お前以外がここに来ていたなら、俺はそいつを殺していただろうがな」

「……私と、戦う為に?」

「……」


 オシリスは答えない。だけど殺気が強まった事が、言葉よりも明確に分かった。

 嬉しいのに悲しい。やっと会えたのに、私は友達から殺気を向けられてる。

 でも、挫けたりなんてしない。私はユーちゃんの友達だから、判断を間違ったなんて思っていない。

 そして……オシリスとも友達だ。だから、私なりのやり方で、元の関係に戻って見せる。

 こんな時、蓮華さんなら、アーくんなら……きっと、本気でぶつかり合って、認め合うから。

 私はリングウェポンからハンマーではなく剣を出現させる。


「アリスティアに剣を教えたのは俺だったな。お前は残骸とはいえ、そこも残っていたか」

「私は残骸じゃない。あの時の判断を、私は今も間違ったなんて思ってない。ユーちゃんも、そしてオシリス、貴方も私の大切な友達だから!」

「黙れ。アリスティアはロキのフェンリルを封じた時に命を落とした。それは俺も……俺達も確認した。ならば今のお前は、ただの残りカスだ!俺は、アリスティアを助けられなかった!だからこそ、今のお前を見ているのは我慢ならない!俺があの時、実力でアリスティアを止めていれば、アリスティアを失わずにすんだ……!今度は、間違えん!」

「オシリス……!」


 双剣を構えるオシリスと対峙する。

 蓮華さん、アーくん……私、頑張るからね!二人も絶対負けちゃダメだよ!

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