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207話.疑惑(御剣照矢)

「そらよぉっ!」

「ギャァァァッ!!」


 玲於奈の拳が悪魔の顔面を殴打し、凄まじい勢いで家の壁まで吹き飛んだ。その後すぐに、スラリンが悪魔の全身を包みこんでいく。


「そらそら!いくらでも掛かって来なぁ!」

「流石ですお姉様!無慈悲に振るわれる雷のような一撃、そこに痺れる憧れますぅ!」

「だぁ!やかましいよケイッ!良いから補助魔法を寄こしな!」

「はいぃっ!!」


 ハルコさんからの身体能力強化魔法で、玲於奈はステータスが2倍になっている。

 わらわらと群がっている悪魔達だが、玲於奈に殴られる度に吹き飛ばされた後、スラリンに捕食されている。


「う~、美味しくないです~」


 とはスラリン談。スラリンの体の中に入ってから、中身が一瞬で溶けるのがアレなので、あまり見ないようにしている。

 スラリンは『プレイ(捕食)』って『パッシヴスキル』を持っているので、敵を食べると持っている力の一部を自分のものに出来るからね。

 今は積極的に食べるようにしているみたいだ。


 玲於奈は強いけど、いくらなんでも弱すぎないだろうか?


「なぁミレイユ、これって俺達が強くなりすぎたのかな?」

「ふむ……どうじゃろうな。妾達が強くなったのは確かじゃが……この世界の悪魔達が、どの程度か知らぬのが痛いな」


 ミレイユも疑問に思ってはいるみたいだ。

 なんせ、あのダンジョンに居た敵の方がはるかに強い。


「そりゃぁっ!」

「グァァァッ!!」


 今も玲於奈が無双していて、ハルコさんがきゃあきゃあとはしゃいでいる。

 俺は街の人達を一カ所に集めて、守るようにして立っていた。

 俺にはパッシヴスキルで、俺の周囲10m以内の俺が味方と認識した人達を回復させる事ができるからだ。

 これは精神的なものも含まれているみたいで、恐慌状態にならないのも助かる。


「あれ?向こうから凄い土煙が……」

「ほう、あれは騎士団じゃな。先頭を走る女、凄まじい実力者じゃぞテリー」

「!!」


 見ていると、近くまできて馬を止めた。


「これは……貴方方が民達を守ってくれたのですね、礼を言います」


 先頭を走っていた騎士の女性が馬から降りて、一礼した。

 その仕草が優雅すぎて、一瞬見惚れて返事が遅れてしまう。


「……あ!えっと、俺達は……」

「話は後でと致しましょう。まずは民達の避難と、悪魔達の排除を最優先です。協力して頂けますか?」

「は、はいっ!」


 思わず流されるままに返事をしてしまったけど、やる事は変わらないし、良いだろう。


「ローガン、貴方は騎士100を連れ民達の避難を。残りの者は悪魔の掃討を」

「「「ハハッ!!」」」


 騎士達は敬礼をして、一斉に悪魔達へ向かい、馬上から一撃の元に悪魔達を刺し貫く。その強さは目を見張るものがあった。


「ヒュゥ♪」


 玲於奈も口笛を鳴らし、驚いているようだった。


 一人一人が、まるで何十年も修行をしてきたかのような、歴戦の猛者だと感じる。

 それを率いる彼女は、一体どれほどの強さなのだろうか。


「失礼、名乗り遅れましたわね。私の名はカレン=ジェミニ。王国フォースの灼熱の騎士団・騎士団長であり、インペリアルナイト・マスターでもあります。以後お見知りおきを」


 その名を聞いて、ハッとした。


「蓮華さんが言ってた人かっ!」

「あら貴方も蓮華お姉様を知っていらっしゃるの?」

「あ、はい。その、現在進行形でお世話になっているというか……」


 そう言うと、彼女は柔らかな微笑みを返してくれて、ドキッとしてしまった。


「ふふ、そうでしたか。では、貴方達は蓮華お姉様に頼まれて、この地に……魔物達が来ることも承知で、来たのですね?」


 俺はその言葉に頷く。蓮華さんから頼まれた事は、魔界海から来る魔物達から、街を守って欲しいという事だったから。


「ああ、思い出しました。あのバルバスとの戦いで共闘した方々でしたわね」

「!!」


 そう言われて、こちらも思い出した。

 あの時は必死すぎて、それに後から助けに来てくれたアーネストさんや蓮華さんの印象が強すぎたから。


「分かりました。私は貴方達を全面的に信頼致しますわ。共同戦線と参りましょう」

「は、はいっ!それじゃ皆、カレンさん達と協力して、悪魔達をこのまま倒そう!」

「はいよ兄ちゃん!頼もしい援軍がきたし、余裕っしょ!」

「うむ、悪魔達にあまり力を割くわけにもいかぬしな」

「う~……魔物達は美味しいと良いんですけどぉ~」


 若干一名、言ってる事がアレなんですけど。まぁスラリンだからなぁ。


「民達の事は騎士団にお任せくださいな。それより、気付いていますか?」

「え?」

「悪魔達が、異様に弱い事です」

「!!」


 それは、俺達も感じている事だった。


「普通の悪魔は、これほど弱くはありません。だと言うのに、この悪魔達は一般人より多少強いという程度……これは何かあるかもしれませんわ。警戒は怠らないように」


 カレンさんの助言に、俺達は頷く。

 何かの前触れでなければ良いんだけど……蓮華さん、アーネストさん……どうか無事で。

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