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200話.企みを事前に阻止

 蓮華達がサンスリー王城に侵入を始めたと同時刻。

 アリスティアは大魔術結界の媒介となっている像を六つ破壊し終えた所だった。


「セルシウス、この場所は任せていい?」

「ええ。にしても、敵も考えましたね。魔術結界で城の中に居る悪魔達を強化。それが防がれたとしても、第二の布陣を用意しておくとはね」

「だねー。多分本命はこっち。上手く龍脈と被らないように魔力の流れを作ってる。漆黒のルーンコア、これ一つで街一つ消し飛ばす威力があるんだけど、それを六ケ所設置して威力を増幅させる魔法陣を組んでるね」

「つまり奴らは、最初からこの国を焦土と化すつもりだったという事ですか?」


 セルシウスの疑問に、アリスティアは首を振る。


「ううん、それは目的の為の手段に過ぎないと思う。一つの国を悪魔が乗っ取ったり、やる事が遠回りなんだよね。色々と考えてみたけど……多くの生贄を用意してると考えたらどうかな?」

「!!」

「悪魔達すらも、その生贄の中に含まれてるんじゃないかな。国民一人一人に乗り移ってるなら、単純計算で倍の数が生贄に出来るよね?」


 アリスティアの言葉に息を飲むセルシウス。

 それほどまでの生贄を用意して、成す事とはなんなのか、疑問が尽きない。


「アリスティア様は、生贄を使い何を成そうとしているか、見当はつきますか?」

「うーん、流石にそこまでは。でも、これは失敗するから心配いらないよ!」


 以前の主の明るい言葉に、セルシウスはつられて微笑む。

 アリスティアの明るい声には、心を軽くしてくれる、不思議な力があった。


「ふふ、そうですね」

「セルシウスはこの場所で待機していてくれる?他の五カ所も他の大精霊の皆にお願いしておくからね」

「分かりました。指示を頂いた時に、壊せば良いのですね?」

「うん、お願いね!」

「はい、アリスティア様」


 そう言って頭を下げるセルシウスに、アリスティアは苦笑しながら伝える。


「セルシウス、私はもう精霊王じゃないんだよ?だから主じゃないし、私は命令なんてしないよ?」


 その言葉に、セルシウスもまた、苦笑して答えた。


「例え主ではなくとも……アリスティア様が尊敬すべき方である事は変わりません」

「あはは……そう言われると何も言えないけど……」


 頬を軽くかきながら、アリスティアは微笑んだ。

 セルシウスはそんなアリスティアを見ながら、柔らかい笑みを向け、続ける。


「それに私達大精霊は、今は精霊王に仕える事が出来ていない身なれど……いずれ、レンゲがその座を継いでくれると確信しています。あの時の世界より出たその時から……レンゲは私達大精霊の力を上回りましたから」


 今までの大精霊達は、自身の力に制限を受けていた。

 それは繋がりのある蓮華が、大精霊達の力よりも下の魔力であった為だった。

 蓮華達が時の世界へと入る前に、真の契約を行い、蓮華の力が大精霊達を上回っていなくとも、力を出せるようにはなった。

 なのに、時の世界を経て帰ってきた蓮華は、すでに大精霊達よりも上の力を得ていた。


「あれはユーちゃんの力もいくらか解放してるみたいだからねー。蓮華さんなら、ユーちゃんより強くなれるかもしれないよ?」

「ユ、ユグドラシル様よりですか……!?」


 信じられない、という顔をするセルシウスだが、アリスティアの表情は真剣だった。


「うん。蓮華さんはね、精霊女神である私の力と、世界神ユグドラシルの力を両方兼ね備えてるんだよ。それは、ユーちゃんですら持っていない力」

「!!」

「この世界の大精霊はユーちゃんが世界樹と成る事で生まれた。だから、私の世界で生きていた大精霊達と記憶を共有しながらも、違う次元の存在なんだ。だから、セルシウスも厳密には私の知ってるセルシウスじゃないんだ」

「……」

「ま、それとは関係なく……蓮華さんの魂の色はね、凄く綺麗なんだ。以前、マーガリンの中に居た時に触れる事ができたんだけど……あったかい、ユーちゃんにとてもよく似てる魂の波長だった。だから、この世界にマーガリンから呼ばれたのかもしれないね」


 柔らかな笑顔で言うアリスティアに、セルシウスも静かに頷く。


「蓮華さんとアーくんをお願いね。私も守れる時は守るつもりだけど、今回ちょっと私でも危ない相手が居るからね」

「……三強神、ですか」

「うん。ゲイオスとレイハルトは居るか分からないけど、オシリスとは一度戦ったんだ。全く力は衰えていなかった。彼が敵に与しているなら……私が止める」


 決意が固いのを察したセルシウスは、溜息と共に答える。


「はぁ、分かりました。アリスティア様はこうと決めたら絶対に変えませんからね。私達の主ではなくなったとはいえ、勝手に力は貸させて頂きますが」


 これまた決意の固そうなセルシウスに、アリスティアは苦笑する。

 自分の周りは、優しい人で一杯だと胸を熱くさせながら。


「それじゃ、私は行くね。蓮華さんとアーくんから目を離す時間が長くなったら、状況が色々と変わってるかもしれないからね!」

「ふふ、確かに。あの二人はパンドラの箱みたいな存在ですからね」

「……それ、パンドラに言ったら怒られるよ?」

「おっと、失言でした」


 二人笑いあい、旧友の存在を思い浮かべる。

 アリスティアは他の大精霊達に連絡を取り、漆黒のルーンコアの前で待機してもらう事にした。

 ぎりぎりまで敵に気付かせずにおく為、すぐに破壊はしない。

 蓮華とアーネストの知らぬ間に、アリスティアが敵の策を潰していた。

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