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198話.サンスリー城の城内へ

「なぁアーネスト、さっき凄い力をあっち……ここと丁度反対側くらいの場所から感じなかったか?」

「ああ、お前も感じたか。多分アリスだと思ったんだけど……ちょっと違う感じだったよな。アリスのようだけど、アリスじゃないような……あー!分かんねぇ!」

「お二人とも凄いですね……私には何も感じませんでしたが……」


 そう話すシロウさんに、ちょっと気になってたし、丁度良い機会と思ったので話す事にした。


「ねぇシロウさん、今は私って言ってるけど……私達に自分の想いを伝えてくれた時、俺って言ってたよね?」

「あ……!それは、その、無礼を申し訳ありま……」

「違う違う。そっちが素なら、そっちで良いよって事」

「え……」


 ぽかんとするシロウさんに、私は苦笑しながら続ける。


「あはは。私もアーネストも、貴族だけど貴族じゃないっていうか……それも違うかな。ええと……」

「ま、要するに俺達は敬語が苦手なんだ。勿論敬う相手にはきちんと心がけるつもりだけどよ、俺達見た所同年代だろ?なら、お互い敬語無しで良いだろ?ってあれ、シロウは王族なんだからむしろ俺らがダメじゃね!?今からでも敬語にした方が良いか!?いや良いですか!?」

「い、いやいやいや!確かに俺は第一王子ですけど、アーネスト様は特別公爵家のご令息ではないですか!王族である俺よりも、地位は上ですよ!?」

「ははっ!成程、シロウは焦った時と本心から話す時は俺って出ちまうみてぇだな?素直で良いじゃん。俺はそういう奴好きだぜ?」

「!?」

「またお前はそういうフラグを立てる……シロウさんは男だぞ?」

「どう見てもそうだよな!?」

「っ……ははっ……はははっ……!」


 私とアーネストがいつも通り話していたら、シロウさんが笑い出した。

 アーネストと顔を見合わせ、シロウさんの方を再度見ると、そこには先程までの緊張した顔ではなく、なんだかすっきりしたような顔になっていた。


「分かった、ありがとう。俺の緊張を解す為にそう言ってくれたんだな。感謝するよ」

「あーいや、誤解だぞシロウ。俺達はいつもこんな感じだ」

「そうそう。他意は無いよホントに。ただ単に、敬語だと話しにくいから、普通に話そう?っていうだけで」


 そう言ったらシロウさんはぽかーんとした後に、白馬の王子のような、爽やかな笑顔を見せてくれた。


「分かりました、じゃなくて分かった。そういう事にしておくよ。ありがとう二人とも」

「おいアーネスト、シロウさんに誤解されたぞ」

「どうしろってんだよ。っと、そろそろ城が近いな。地上に降りるか?」

「認識阻害の魔法は効いてるみたいだし、このまま城の一番上から降りるのもありかも?」

「アリスから連絡入るまで交戦するなって言われただろ蓮華。そんな事したらいきなりドンパチ始まるぞ」

「それもそっか」


 私達は城の近くから地上へと降り、そこから歩いて城へと向かう事にした。

 シロウさんはずっとアーネストに背負われていたので、自分で歩ける事にホッとしているようだった。


「城は見えてるけど、どこから行くべきかなシロウさん」

「そうですね……じゃなくて、そうだな……王家の者にしか伝わっていない隠し通路があるんだけど、父上と母上が乗っ取られている以上、そこも把握されているだろうし……裏口から入るのが良さそうですね……じゃなくて、だな」


 所々敬語にしてしまい、すぐ言い直すシロウさんが微笑ましい。アーネストも苦笑している。


「案内は任せて良い?」

「勿論。それくらいしか俺は役に立てないからね。待っていてくれ父上、母上、カルナス……!」


 シロウさんの強い眼差しは、その意思をハッキリと感じる事が出来た。

 アーネストと頷き合い、シロウさんに続く。

 城の周りには川が流れていて、橋が四方より伸びている。

 身を隠す所がなく、普通に歩いていたら丸見えだ。

 認識阻害の効果を姿が見えなくなるレベルまで強化し、近づいていく。

 魔力の流れも阻害する為、これで私達の事を察知する事は出来ないはず。


「王宮は中央棟、北棟、西棟、東棟、南棟の五つで構成されてるんだ。また離宮も三つほどあるけど、そちらは護衛や侍女達、それに高位の魔術師達や特殊な技能や知識を持つ者達の住まいとなってる。父上と母上、それに弟のカルナスが居るのは中央棟なはず。移動してなければ、だけどね……」

「成程……」

「とりあえず、城門を駆け抜けるぞ蓮華。シロウ、頼む」

「了解」

「はい」


 シロウさんが走る少し後ろから、私とアーネストも走る。

 途中、横ぎる時に兵士達の顔を見たけれど、その表情は虚ろだった。夢遊病のそれに似てるかもしれない。


「ここだ。この岩に王家の血を引く者が触れれば、一時消えて……」


 シロウさんが岩に手を触れると、大きな岩が消えて、下へと続く階段が出てきた。


「この通り。ただ、手を離すと10秒ほどで戻ってしまうから、二人は先に下へ。俺もすぐ降りるよ」

「「了解」」


 私達が階段を降りて、シロウさんもそれに続く。すると、消えていた岩が再度出現し、こちら側からも外が見えなくなった。


「さぁ、行こう。この階段を下まで降りて、また上がれば場内だ」

「色々と仕掛けがあんだな。おもしれぇ」

「おいアーネスト、状況分かってるのか?」

「大丈夫だって。緊張しすぎてもしゃーねぇだろ?適度な緊張感で良いんだよ。さ、行こうぜ!」 


 どこまでもいつも通りなアーネストに苦笑する。でも、こいつのおかげで下手に緊張しなくて済むのも確かなんだけど。


「ええと……確か、ここを進めば中央棟に一番近い場所に出たはず……」


 途中の階段を降り、上に上がる階段を素通りして通路を少し進んだところに、また上に上がる階段があった。

 シロウさんはどの階段がどこに繋がっているのかを思い出しながら進んでいるようで、何かブツブツ言いながらも迷いなく進んでいる。


「お、蓮華。アリスからメッセージが届いてるぜ」

「!!」


 すぐにスマホを起動する。


『4つ目破壊完了したよ!これで強化されてるといっても3割くらいだろうから、首謀者以外となら戦っても良いよ!でも、首謀者とだけはまだ避けてね!』


 あのリヴァルさんですら苦戦している相手なんだ。それが強くなっているなら、いくら私達が強くなったとはいえ、危ない。

 そう思ってアリス姉さんは言っているんだろう。

 にしても……


「アリス姉さんは流石だね……本当に速すぎる……」

「ああ、うかうかしてたら良い所全部かっさらわれちまうぞ」

「あはは、それはそれで構わないんだけど、情けなくなるから頑張らないとな」

「おう」


 シロウさんの後に続きながら、アーネストとそんな会話をかわす。

 階段の終わりに、また岩があるのが分かる。シロウさんがそれに触れると、空が見えた。


「さぁ、どうぞ。二人が上がったら、俺も上がるよ」


 シロウさんに言われ、私達は地上へと出た。


「「「ヴヴヴ……」」」

「「!!」」


 そこには、大量の悪魔達が居た。

 私はソウルを、アーネストはネセルを構える。


「シロウ、俺達がどいたら岩を戻してそこで待ってろ」

「え!?」

「囲まれてる。まずはこいつらを倒してから、その後その岩を破壊するよ」

「わ、分かりまし……分かった。岩も……緊急事態だしな、仕方ないか」


 シロウさんがそう言って下がろうとした時に、アーネストがスマホをシロウさんへと投げた。


「おっと!?アーネストさん、これは……」

「終わったら蓮華からメッセージを飛ばす。そしたら出てきたら良いぜ」

「あ……分かった!」


 ああ、確かにそうすれば岩を破壊しなくても良いね。

 スマホを他人に渡すのって大抵の人は嫌がるのに、アーネストは変わってるよね。


「そんじゃ、蹴散らすぞ蓮華!」

「ああ、行くぞアーネスト」


 私達を囲んでいる悪魔達へと、飛び出す。

 後ろで岩が再度出現しているのを確認してから、悪魔を斬り捨てる。


「グァァァァッ!?」


 二体、三体、四体……続けざまに斬りつけ、倒していく。アーネストはすでに六体目だ。

 流石に速い。私も負けてられないな!

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