表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

422/713

196話.ステータス倍増結界

 王国フォースの国境を越えて、サンスリー王国内へと空から入って少し。

 所々にある街から、魔力が川のように流れて城へと向かっているのが分かった。


「あちゃー、面倒な結界使ってるなぁ」


 アリス姉さんの呟きに、アーネストと顔を見合わせる。


「ねぇアリス姉さん。それってもしかして、街から川のように流れてる魔力と関係ある?」

「!!」


 アリス姉さんが驚いた表情をした後に、何か納得したような顔つきになった。


「そっか、蓮華さんはもう、こういうのも視えるんだね。って事は、アーくんも?」

「ああ、俺も視えるぜ。三つ、いや六つの街からか。魔力が流れて行ってんよな?これの合わさってる場所が、王城じゃねぇの?」


 アーネストの言葉に、アリス姉さんは頷く。


「そうだよ。大魔術結界が張られてるみたいだね。恐らく、王城に居る悪魔達の能力を大幅にアップするタイプの」

「つまり、ステータス倍増結界って事だね!」

「蓮華ぇ……」


 私のネーミングセンスがさっぱりって事くらい承知してるけど、お前だってそうなんだから、そんな目で見るな。


「あ、あはは。まぁ名前なんてなんでも良いんだけど、このまま王城に行くのは不味いかな」


 そんなー。分かりやすいって大事だと思うんだけど。


「場所はアーくんの言う通り六か所。それぞれに多分魔術の媒介になる物が設置されてると思う。まずはそれを破壊しに行った方が良いね。回り道のようだけど、それが結果的に早道になると思う」

「了解だよアリス姉さん。それじゃ、手分けして……」

「あ、ううん。蓮華さんとアーくんはこのまままっすぐ王城へ行って良いよ。私が全部壊してくるから!」

「「え」」

「この手の結界は、一つ壊せば効力が落ちてくタイプのはずだよ。だから、私が街に行って壊してる間に、蓮華さんとアーくんは城へ行ってて。でも、交戦は私が許可するまで避ける事。分かった?」

「はぁ、言っても聞かないだろうからねアリス姉さんは」

「だな。お前とそっくりだぜ」

「そうかな?」

「ああ、こうと決めたら曲げねぇ所はそっくりだ」

「そっか。アリス姉さんと似てるなら、嬉しいな」

「また蓮華さんが天然を発動するー!」

「天然!?」

「ははっ!それじゃ、任せるぜアリス。俺達はこのまま城へ行く。シロウ、城についたら案内は頼むぜ」

「分かりました、任せてください!」


 私達はアリス姉さんと別れ、そのまま城へと飛ぶ。

 アリス姉さんはすぐ近くの街へと降りて行った。


「二人は、あの方を信頼しているのですね」

「「?」」


 突然、シロウさんがそんな事を言うので、私達はきょとんとしてしまう。


「見た目だけで言えば、あの方は可憐な少女です。その身から感じる強さも、二人ほど感じませんでした。大結界ともなれば、それを守る守護者も居るはずです。なのに、お二人は心配を欠片もしていないので……」


 成程、アリス姉さんの強さを知らなければ、確かにそう思うのも無理はない。


「あー、俺達の事をアリスより強いって思うのは、俺達がまだ未熟なせいだな」

「だね。アリス姉さんは、力を完璧に抑え込んでるんだ。だから、普通に見たらただの少女にしか見えないんだよ」

「え?」


 シロウさんが驚いた表情に変わったけれど、そのまま話を続ける。


「アリス姉さんは、私達より強いよ。私達も大分強くなったけど、それでも多分まだ追い抜いてはいないと思う」

「だな。実際戦ったら分かんねぇ部分はあるけどさ。経験の差もあると思うぜ。アリスは女神だしな」

「女神、様!?」


 アーネストの言葉に、シロウさんは空いた口が塞がらなくなっていた。

 私はクスクスと笑いながら続ける。


「だから、心配は要らないよ。私達はアリス姉さんを信じて、私達の出来る事をすれば良い。アリス姉さんなら必ず成功する。それこそ、その辺を散歩するくらい簡単に……」


 と言い終わる前に、凄まじい爆発音が近くから聞こえた。

 アーネストと目配せをしてから、スマホを起動させる。そこには、アリス姉さんから信じられない言葉が届いていた。


『一つ目破壊完了♪次に行ってくるねー!二人も速く行かないと追い抜いちゃうかも!それじゃ、次にいっくよー!』

「早いよ!?」

「はぇぇっ!?」

「ど、どうしたんですか?」


 私達が急に声を上げたので、シロウさんが驚いて聞いてきた。


「えっと、今話してたアリス姉さんなんだけど……」

「もう、一個目壊したんだとさ……」

「え……えええええっ!?い、今ですよね行ったの!?」

「ああ。だからとんでもねぇ奴なんだって、アリスは……」


 アーネストが呆れ顔でそう言うのを、私は苦笑して見ていた。するとその先に、砂埃を上げながら駆けている人を見つける。


「おいアーネスト、あれ……」

「なんだ蓮華?……アリスか、あれ」

「うん、こっちに手を振りながら走ってる。飛ぶより速いってどういう事だよ……」

「そういや、いつも忘れそうになるけど、アリスも兄貴や母さんと同種の存在なんだよな……」

「まったくアリス姉さんは……おちおち話してたら、先きに王城に辿り着かれて、なにしてたんだよぅとか言われかねないな」

「はは!違げぇねぇな。よし、行くぞ蓮華、シロウ!」

「ああ!」

「は、はいっ!」


 私達は城へ向けて飛ぶのを再開する。アリス姉さんは六つの街を円を描くように巡るつもりだろう。流石に私達より速いなんて事はないだろうけど、アリス姉さんだからね……絶対は言いきれない。

 向こうの悪魔も、今頃慌ててるんじゃないかなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ