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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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159話.唯一魔王に一撃を

「そんじゃ、行くぜっ!」


 オーバーブーストを掛けたであろうアーネストが、一瞬でリンスレットさんの背後へと回る。私とノルンはそのまま前から斬りかかった。


「「はぁぁぁっ!」」


 しかし、リンスレットさんはその場から動く事は無く、ただ立ったまま私達の攻撃を受けた。


「どうした?私にも障壁はあるぞ?これを打ち破らなければ、私に一撃を加える事は出来んぞ」


 そう言って、まず後ろから斬りつけたアーネストに回し蹴りを食らわせると、そのまま流れるように私とノルンの武器を弾き、掌底を放ってきた。


「「ぐぅっ!?」」


 それを避けきれず、私達は後方に吹き飛ばされる。だけどその間を縫うように後ろから魔法が飛んできた。恐らくゼロの魔法だ。


「遅いなゼロ。これだけ間があれば、こんな対策をされてしまうぞ。『リフレクション』」


 ゼロの放ったであろう魔法は、弧を描く様にゼロへと反射される。


「くっ!」

「ゼロッ!?」


 ノルンは吹き飛ばされた態勢から手を地面へとつけ衝撃を抑えると、そのままゼロの元へと駆けた。けれどそこへ追撃が来る。


「そら、それはお前の魔法だけだからな。私の魔法を凌いで見せろ」


 リンスレットさんの手から、黒い無数の球が出現した。手を振りかざすと、その球は真っすぐにノルン達の元へと飛ぶ。


「させるか!『スターダスト・グローリー』!」


 咄嗟に光の防御魔法で壁を作る。でもリンスレットさんはそれを見越していたのか、真っすぐに私へと向かって来た!


「なっ!?」

「お前ならノルン達を庇うと思っていたぞ。その一瞬の隙が命取りだ」


 掌底を受けて飛ばされている最中に魔法を放った事で、態勢が悪かった事もあり、避ける事ができなかった。リンスレットさんに殴られ、そのまま地面へと叩き付けられる。


「ぐぅっ!」

「蓮華!っのやろうっ!」


 アーネストが目にもとまらない、いや映らない速さでこちらへと跳躍する。けれど、ネセルを振るったアーネストの攻撃を見切り、リンスレットさんはそのままネセルを掴んだ。


「双刃魔剣ネスルアーセブリンガーか。確かに上から数えた方が早いクラスの強い魔剣だが……10%程しか出力が出ていないな。それでは私の障壁を突き破るに至らない」

「がっ!?」


 リンスレットさんに掌底を腹に叩き込まれ、アーネストが飛ばされる。私はその間に態勢を整え、再度リンスレットさんへと攻撃を仕掛ける。


「無駄だ、そのオーラ量では私には通じない。お前のアドバンテージはその魔力量だろう、それを生かさなくてどうする」


 ソウルをまたしても掴まれ、そのまま投げ飛ばされる。


「蓮華!」

「う……ありがとノルン」


 ノルンに抱きとめられ、立ち上がる。強い、分かっていた事だけれど。これでもさっきノルンとゼロが戦っていた時より力は抑えられているんだから、滅茶苦茶だ。


「リンスレットさん、手出しはしないが、助言は構わないか?」


 壁の花と化していたリヴァルさんが、突然そんな事を言い出した。リンスレットさんは片目を瞑って、笑って言った。


「ああ、好きにすると良い」

「ありがとう。……お前達、特訓を思い出せ。体が硬い、リンスレットさんの覇気に畏縮して全力が出せていないぞ。お前達は誰と戦ってきたと思っている。ユグドラシル、そしてイグドラシルはそんなに弱い相手だったか?アーネスト、私はそんなに弱かったか?」

「「「!!」」」

「お前達は強い、私が保証する!リンスレットさんが強いのは確かだが、ここまで圧倒的に負けるような差はない。お前達の腕は女神直伝だぞ、自信を持て!」


 リヴァルさんの激励に、胸が熱くなる。そうだ、私はユグドラシルから直接指導を受けたんだ。この程度で、負けてられない!


「フ……全員良い目になった。先程までの浮ついた気持ちは無くなったようだな」

「へへ、喝を入れられちまったからな。師匠が見てるんでね、これ以上みっともないとこは見せられねぇ……!」


 アーネストの全身から、金色のオーラが立ち昇る。オーラは魔法は遮ってしまうが、魔術は相乗効果を生む。オーラをオーバーブーストで補強し、何倍もの力を得ているはずだ。


「うん、私も開放するよ」


 普段は魔力回路に弁をしている。溢れ出ると抑制が効かなくなるからだ。その弁を取り外す。抑圧されていた魔力が、全身を伝い溢れ出る。


「!!蓮華、その力……!」


 ノルンが驚いた顔をしている。そう、この力はユグドラシルの本来扱う魔力。魔法の一段階上、精霊魔法の領域。


「姉さん、この力、女神の……?」

「……そうね。精霊憑依を上回る力を通常で……いえ、この状態からだってそれを出来るのなら、どこまで強くなるの……?」


 ノルンとゼロが小声で話しているけれど、そちらはとりあえず無視し、リンスレットさんの方を見る。


「行きますリンスレットさん。これが私の……私達の力です!」

「ああ、行くぜリンスレットさん!」


 私はソウルを力強く握りしめ、リンスレットさんへと構える。アーネストもまた、ネセルを二刀構え、いつでも飛び掛かれる態勢だ。リンスレットさんは初めて、構えをとった。


「来い。蓮華、アーネスト。この唯一魔王リンスレットが、お前達の相手になろう」

「行くぞぉアーネスト!」

「おお!蓮華!」


 私達は同時に跳躍する。ソウルに魔力を存分に込め、全身にも魔力を行き渡らせて力を上げる。


「「おおおおおっっ!!」」

「フ……!良い攻撃力だぞ!」


 私とアーネストの連続攻撃を、リンスレットさんは片腕づつで完璧に防ぐ。ならば……!


「続け蓮華!双刃『二刀烈風剣』!」

「ほぅっ……!」


 アーネストの剣技によって、リンスレットさんが宙に浮く。その隙、逃すかっ!


「おおっ!ユグドラシル流剣技・弐ノ型『絶空』!」


 対空攻撃技である『絶空』をリンスレットさん目掛けて放つ。突きを何倍もの威力に昇華させ、空間すら突き破る技だ。


「おおっ!」


 この戦いで初めて、リンスレットさんが声を出して防いだ。右手でソウルを掴み、突進の威力を相殺している!?


「まだだ、障壁は残っているぞ!そのまま防げるか蓮華、アーネスト!『ネクロスフィア・グングニル』」


 凄まじい魔力の波動砲がリンスレットさんの手から地面へと向けて放たれる。


「間に合え!『スターダスト・グローリー』!」


 黒い波動砲が、光の壁へと直撃する。ギヂヂヂヂ……!と嫌な音を響かせ、壁を打ち破らんとその威力を増していく!


「蓮華、そのまま耐えてろっ!俺がやるっ!」


 私の後ろで態勢を整えたアーネストが、魔法を放つリンスレットさんへと飛ぶ。


「良い判断だアーネスト。しかし、私の手は二つあるぞ」

「うぉっ!?」


 右手で私に魔法を放ちながら、左手でアーネストへと攻撃する。その場から動かなかった為ギリギリ避けれたアーネストだったが、その額には汗が出ていた。


「マジかよ、その状態でも隙がねぇとか有りか!」

「フ……こんな事もできるぞ。避けれるかアーネスト」


 リンスレットさんの左手に、また黒い複数の球体が出現する。


「げっ!?」

「そら、直撃すれば痛いぞ?」


 左手をアーネストの方へと降ると、一斉に球体が飛んでいく。


「んなろっ!そんな直線状の攻撃に当たるかよっ!」

「そうか、だが攻撃はまだ続いているぞ?」

「んなっ!?」


 アーネストの避けた球体は、そのまま壁にぶつかることは無く、アーネストの方へと再度飛んでいく。


「まさかこれ一つ一つコントロールしてんのか!?」

「当然だ。魔王とは魔力が高いだけで魔王なのではない。魔に誰よりも精通しているからこそ魔王なんだぞ」


 そう言って、更に追加で球体を作り出すリンスレットさん。まずい、あれ以上増やされたら、いくらアーネストでも避けきれない!


「うおぉぉぉっ!!」

「むっ?」


 私は結界を二重掛けし、リンスレットさんの方へと突進していく。後ろにはもうアーネストは居ないのだから、広域を防ぐ必要は無い。私の前方を重点的に強化して、近づいてやる!


「良い判断だ。だが、このまま撃ち続ける必要も無い」

「なっ!?」


 突然魔力波が消え、それを防ぐ為に力を込めていた私は態勢を崩される。その隙を見逃してくれるリンスレットさんじゃない。


「これは痛いかも、な!」


 振りかぶられた腕から放たれる、強力なパンチ。


「がはっ……!」

「蓮華ッ!?」


 そのまま地面へと背中がぶつかる。強烈な衝撃に、胃液が逆流しそうになった。それでも、背中よりもパンチを受けたお腹の方が痛い。

 私の障壁はとっくに無くなっている。凄まじい攻撃力だ。


「そらアーネスト、そろそろ当てるぞ?」

「!?」


 空を見れば、アーネストは球体に囲まれている。あれでは避けられない!


「死ぬなよ?」

「くっ!?ぐぁぁぁぁっ!!」

「アーネストォッ!」


 腕をクロスさせ、防御態勢をとったアーネストだったが、その攻撃を全て受けた後……地面へと落ちてきた。


「ぐはっ……ちっきしょう、なんて威力だ……」


 なんとか立とうと力を入れているようだが、腕が震えて立ち上がれていない。あのアーネストがここまで……!なんとかアーネストが回復する時間を稼がないと……


「ほう、立ち上がるか?蓮華。その意気や良しだな。それで……ノルン、ゼロ。どうした?二人はここまで頑張っているが、お前達は向かってこないのか?」

「「っ!!」」


 ノルンにゼロは、顔を真っ青にしながら私達の戦いを見ていた。

 下手にリンスレットさんの実力を知っている分、恐慌状態になっているのかもしれない。私は立ち上がろうとして、膝をついてしまう。


「蓮華っ……!」


 ノルンの悲鳴に近い声が聞こえる。


「もう良い、もう良いわ。ありがとう……アンタ達がここまでやる事は……」


 ノルンが首を振りながらそう言うのを、私は遮る。


「勘違い、しちゃいけないよノルン……」

「そう、だぜ……」


 私達は、立ち上がる。そう、こんな程度で負けられない。


「私は私の為に、戦ってる!」

「俺は俺の為に戦ってんだぜ!」


 私達は剣をリンスレットさんへと向ける。最初はノルン達と一緒に特訓を許可して貰う為だったけれど、途中から変わったんだ。

 私は今、ユグドラシルの代わりに戦っているんだ!


「負けない、負けられないんだ!」

「おお、行くぜぇっ!」

「フ……良い気概だ蓮華、アーネスト。願わくば、その強き意思を……ノルンも抱いて欲しいのだがな」


 最後の方は小声で聞こえなかったけれど、リンスレットさんは再度構えを取る。

 第二ラウンド開始だっ!

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