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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第二章 大精霊編

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36.元の世界の物

 家に帰って翌朝。

 またオーガストに行くかなと準備していたら、ノックの音が聞こえた。


「ん?」


「俺だ、アーネストだよ」


「ああ、入っていいよ」


「さんきゅ。……ああ、もう行くのか?」


「うん、昨日はなんだかんだで行けなかったからさ」


 街道の魔物退治で終わってしまったから。


「そっか。えっとさ蓮華、お前にだけ話しておかなきゃならない事があるんだけどさ」


「なんだよ、やぶからぼうに」


「いやな、前に元の世界に俺帰ったじゃん?」


「ああ、そうだな」


 ちょっと前の事だし、覚えてるさ。


「そん時にさ、俺アイテムポーチ持って行ったままだったんだよな。で、使えるか試してみたら、使えたんだよ」


 その言葉に、血の気がサーッと引いていくのを感じた。


「お、おま、お前まさか、盗」


「ちげぇ!人聞きの悪い事を言おうとするなよ!?俺なんだから、俺がそんな事するわけないって分かるだろ!?」


「あ、ああ、そうだな、悪い」


 本気で焦った。

 いくらもう行く事はないとしても、犯罪者にはなりたくない。

 いくらばれなくても、だ。


「それでさ、一つ言っておかなきゃなのが、貯金全部使ったから」


「ああ、別に構わないよ。どうせ使い道もないし。両親も、私の金は受け取らなかったろうしな。自分で働いて得た金は自分の為に使えって言う親だったからなぁ」


「はは、だよな。でさ、どうせだから、日本にあったもんいっぱい買ってきたんだよ。便利そうなのとか、ゲームとか、携帯食とかさ」


 な、んだと!?


「ま、まさか、カップラーメンも!?」


 ニカッと笑う。


「当然!」


 と言ってくるアーネストに思わず。


「お前が神かっ!」


 という私。


「「あはははは!」」


 笑いあう私達。

 アーネストが言う。


「でもさ、もう多分戻れないから、消耗品は使っちまったら終わりなんだよな。それが勿体ねぇよなぁ」


 確かに。

 同じのを量産できればなぁ……量産、あ……!


「大丈夫だアーネスト!」


「へ?大丈夫って、何がだよ蓮華」


「転生者!元の世界の転生者が居るんだよこの世界に!」


「なんだって!?」


 驚くアーネストに、続ける。


「その人、科学者だったらしくてさ。それに、色々な物を創れるんだよ!だからもしかしたら、現物見せたら、同じのを作れるかもしれない!」


 その言葉に、目を輝かせるアーネスト。


「ま、マジかよ!そいつぁすげぇ!蓮華、その人とは連絡取れるのか!?」


「ああ、多分大丈夫。すぐに会えると思う。行くか?アーネスト!」


「当たり前だろ!今すぐでも良いぜ!」


 二人笑いあう。


「なら、善は急げだな!」


 こうして、私達はバニラおばぁちゃんの元へ行く事にした。

 そして王都・エイランドに着いた。

 着いたのだけど。


「なぁ蓮華、俺ら目立ちすぎじゃないか?」


「うん、どう考えてもお前のせいだけどなアーネスト」


「何度も謝ったじゃないか……」


 そう、私達二人、ポータルを使って転移してきたのは良いのだが。

 転移してすぐに、私達の姿を目撃されると、大勢の人に遠巻きに囲まれた。

 なんていうか、直接何かを言いにくるわけではないのだけど、めっちゃ見られてる。


「なぁ、今さらだけど、認識阻害の魔法なんで使わなかったんだ蓮華?」


「忘れてたに決まってるだろアーネスト」


 なんせ、盛り上がってすぐ実行に移したのだから。


「二人揃っても一人と同じ過ちを犯すよな俺達……」


「言うなよアーネスト、悲しくなるだろ……」


 なんて言いあっていたら。


「あらぁ、なんの騒ぎかと思えばぁ、レンちゃんにアーネスト君ねぇ?」


 この声は!


「バニラさん!」


「アイスクリームかよ!?」


 アーネストの突っ込みに、うん、やっぱそう思うよなと思いながら。


「うふふ、貴方も聞いていた通りなのねぇ。さ、二人とも乗って。アタシの家に案内してあげるからぁ。それとも、他の用事だったかしらぁ?」


 うぅ、できれば乗りたくないけど、乗るしかない。


「バニラさんに用があってきたんだけど、できれば乗りたくないんだけど……」


 乗るしかないと思いつつ言ってしまった私だが。


「おい蓮華、早く乗れって。こんなエルフの美人さんを待たすなんて人としてダメだろ!」


 とか言ってくるアーネストに、エルボーする事にした。


「ぐはぁっ!!し、嫉妬はみっともないぞ蓮華……?」


 なんて言ってくるので、みぞおちに刺さったままの肘をそのまま深く押した。


「ぐぇぇっ……!!」


 と呻き声が聞こえた。

 人、それを自業自得と言う。

 そんな私達を見て我慢できなくなったのか、バニラおばぁちゃんが笑う。


「ぷっ……あははは!ホント、面白いのねぇレンちゃんにアーネスト君は」


 と言いながら、車を走り出すバニラおばぁちゃん。

 ヤバいと思い、心から伝えようとした。


「お願いですから、安全運転でぇぇぇぇっ!?」


 したのだけど、言い切る前に、トップスピードになった。

 言わせてぇ!!


「バニラさん!速い!速いからっ!!」


「うぉぉぉ!車の速度じゃねぇ!?」


 私とアーネストが叫ぶ。


 ドゴォ!!


 ちょ!?なんか轢いた今!


「ば、バニラさん!なんか轢いたよ今!?」


「大丈夫よぉ。この車に当たったら、ヒーリングが掛かるようになってるのぉ。むしろ当たる前より元気になっちゃうかもぉ?」


「「そういう問題じゃないー!!」」


 私達二人の叫びが木霊した。

 そして、バニラさんの家の前に着く。


「ぜぇっ……ぜぇっ……わ、分かったかアーネスト、私が乗るの嫌がった意味が……」


「あ、ああ、すまん蓮華、正直ここまでとは……たまに車に乗ったら人が変わる人って居たけどさ、この人もそうだな……」


 私達二人が息をきらしているのに。


「ほらぁ、早く入りましょぉ?」


 なんて元気いっぱいのハイエルフが一人。

 この人は色んな意味で規格外だと思う。


「さ、座って座ってぇ。王覧試合の大将戦の二人が目の前に揃って居るなんて、アタシ感激よぉ」


 その言葉に微妙な気分になりつつも。


「母さんが言ってたし、蓮華から聞いているかもしれませんが、改めまして。アーネスト=フォン=ユグドラシルと言います。気軽にアーネストと呼び捨ててください、バニラお姉さん」


 とアーネストが礼儀正しく言う。

 バニラおばぁちゃんは美人だからな、緊張してるんだろうけど。


「あらぁ、礼儀正しいのねぇ。アタシの事はバニラおばぁちゃんって呼んでねぇ」


「え?」


 あぁ、この人はこうだからなぁ。

 アーネストは戸惑っているけど、この人はこうだから仕方ない。

 多分拒否しても、ね。


「いや、だってどう見ても若いんですけど……」


 バニラおばぁちゃんはじーっとアーネストを見つめる。


「うっ……」


 見つめる。


「うぅっ……」


 見つめる。


「わ、分かりました!バニラおばぁちゃん!」


「やったぁ♪ありがとうアーネスト君♪」


 アーネストも落ちたか。

 そうだよな、あの表情でじーっと見つめられたら、無理だよな。

 分かるよ、私も無理だったから。


「なぁ蓮華、お前の知り合った人、濃くないか?」


 否定できない。


「私は二人で居る時だけって条件つけたからな。お前よりマシだぞアーネスト」


「おま!ば、バニラさん、俺もそ」


 悲しそうにするバニラおばぁちゃん。


「……バニラおばぁちゃん、と呼ばせて頂きますぅ……」


 途端に笑顔になるバニラおばぁちゃん。

 この人なんでこんなにおばぁちゃん呼びに拘るんだよ。

 こんな美人をおばぁちゃんと呼べとか、一種の罰ゲームだぞ。

 今もすんごく可愛い笑顔だし。

 そして落ちたアーネストを笑えない私。

 うん、仕方ないよアーネスト、あれには勝てない。

 あれ、なんか本題を忘れている気がする。

 私達は決してバニラおばぁちゃんをバニラおばぁちゃんと呼ぶ為に来たわけじゃない。


「それでぇ、今日はなにしにきたのぉ?」


 バニラおばぁちゃんからの一言で、一気に脱力したのは言うまでもなかった。

 気を取り直して。


「えっと、これを見て貰えます?」


 と言って、アーネストがアイテムポーチから、日本から持ってきた色々な物を出す。


「あらぁ!懐かしい物がいっぱい!これってもしかして、日本の物なんじゃなぁい?」


 流石バニラおばぁちゃんはすぐに理解してくれたみたいだ。


「はい。一度、戻る事ができたので。そこで、聞いてみたいんですけど……これって、量産したりできます?」


 アーネストがカップラーメンを手にして言う。

 バニラおばぁちゃんは笑顔で言ってくれる。


「できるわよぉ。本物があるんだもの、簡単よぉ。模倣するだけだからねぇ。原材料も書いてあるし、魔法でいくらでも作れるわぁ」


 その言葉に。


「「やったぁ!!」」


 抱き合う私達。

 それを微笑ましく見るバニラおばぁちゃんに、少し恥ずかしくなって離れる私達。


「それじゃ、これで商売でも始めてみる?レンちゃん、アーネスト君」


「「商売?」」


「そうよぉ。だって、これだけの元があるのよぉ?それに、売れるのは確実だもの。なら、人を雇って事業にしてしまえば良いわぁ」


 なんか大がかりな事になってきた。


「でも、私達、そういうの詳しくないですよ?」


「大丈夫よぉ。元の世界で言う、代表取締役がレンちゃん、アーネスト君の二人でぇ、他はアタシやアタシの仲間でやってあげるからぁ。名前だけ貸してってことねぇ」


 やれと言われても多分私達には出来ないし。


「バニラおばぁちゃんに丸投げしちゃいますけど、良いんですか?」


 と聞いてみる。

 すると、なんでもない事のようにバニラおばあぁちゃんは言ってくれる。


「アタシから提案したんだから、任せてぇ。うふふ、これから忙しくなるわねぇ。会社名、どうするレンちゃん、アーネスト君」


 会社名、か。


「アーネスト、どうする?」


「いや、急に言われても。好きにしてもらっていいと思うけど」


「私もそう思うんだけど……」


「ダーメ。会社名は、レンちゃんとアーネスト君が決めてねぇ。これだけは譲れないのぉ」


 なんて言ってくる。

 うーん、どうしよう。

 流石に会社を設立とか考えた事もなかった。

 ユグドラシル領だし、ユグドラシル社とかあっても良いかもしれないな。


「なら、ユグドラシルで良いんじゃない?領があるんだから、社もあっても良いじゃない?」


 って思いつきで言ってみたんだけど。


「おお、良いんじゃね?俺もユグドラシル社って良いと思う!」


「うふふ、承知致しましたぁ、レンちゃん、アーネスト君」


 なんて好意的だったから、良しとする。


「レンちゃん、ポータルの魔法は使えるかしらぁ?」


 なんて突然バニラおばぁちゃんが言ってきた。


「えぇと……ディーネが言うには、使えるらしいんだけど、まだ成功した事ないんだよね」


 と正直に言う。


「そっかぁ、もし使えるようになったら、アタシの家の中にポータル石設置して良いからねぇ。毎回王都のポータル石じゃ面倒でしょぉ?」


「え、でも良いんですか?」


「レンちゃんとアーネスト君だったら、構わないわぁ。もちろん、大精霊様もねぇ」


 なんて言ってくれる。ホント、どこまで大らかなんだろうか、この人は。


「うん、それじゃ使えるようになったら、使わせてもらいますね」


 と言っておいた。


「よろしくねぇ」


 なんて笑顔で言ってくるこの人は、綺麗で可愛くて、とてもじゃないがおばあちゃんには見えないのが困る。

 

「なんで見た目こんなに良いのに、性格も良いのに、変な所が強烈なんだこの人は……」


 と言って、アーネストも残念そうにしていた。

 分かる、分かるよアーネスト……。

 さて、用事も済んだ。


「それじゃ、私はまだ用があるので、これで帰りますねバニラさん」


「レンちゃん、アーネスト君と居る時も、二人と変わらないよねぇ?」


 なんて言ってくる。

 おのれ、この可愛いおばぁちゃんめ。


「ぐっ……バニラ、おばぁちゃん」


「はぁい♪」


 とても良い笑顔を返してくれる。

 くそぅ、これだから嫌がれない。


「俺も帰って勉強しないと。もうすぐ学園に編入するからさ」


「あらぁ、アーネスト君は学園に入るのねぇ。なら、アタシも講師の依頼がずっときてるの、少しは考慮しようかしらぁ」


 なんて言ってる。

 私もバニラおばぁちゃんの授業なら受けたいな。


「それじゃ、送るから外に出ましょうかぁ」


 その言葉に。


「「帰りは歩いて帰ります!!」」


 とハモる私達だったのだが。


「遠慮しなくて良いのよぉ♪」


 と言いながら私達を無理やり車に乗せるバニラおばぁちゃん。


「「ぎゃぁぁぁぁー!!誰か轢いたぁー!!」」


 帰りも私達の叫び声は木霊した。



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