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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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141話.ナイトメアの暗躍

 灯りを落とし、わずかな蝋燭の炎だけで照らされるサンスリー国の国王デュークの私室は、密談をするのにふさわしい静けさに包まれている。

 部屋からは王妃ユリア以外追い出されており、蝋燭の炎が影を落とすテーブルを挟んで二人きり。

 寝るには早いが、夜食を取るには遅い時分なので、手元のテーブルにはミルクティーだけを用意している。


 一つに結い固めている金色の髪をほどき、クリーム色のナイトガウン姿のユリアは、一見すると寛いでいるように見える。しかしその翡翠色の瞳は油断のない色を宿していた。

 対してテーブルを挟み向かい側に座るデュークは、思案顔でユリアを見つめていた。


「ユリア、マーガリン様から連絡を頂いた後、海上都市には兵を送り防備を強化した。しかし、あの学園都市ヴィクトリアスで起こった戦いから兵達の練度をあげる為の対策をしてきたとはいえ……魔界の魔物達に勝てるであろうか?」

「陛下……」


 不安げに語るデュークへ、ユリアは扇子を口元で広げ答える。


「我が国にはインペリアルナイトが居りませんから、陛下が不安に思うのも致し方ありません。けれど、各国のインペリアルナイト、そしてロイヤルガードの方々から指導を受け、兵達の力は向上していると聞いております。何より、陛下が自分の兵達を信じなくてどうするのですか」

「ユリア……うむ、そうだな……。私は戦う力を持たない、故に……(みな)には迷惑をかけるな」

「王の資質は、戦う力だけではありません、陛下。戦での力は、平和な世を治める力とはまた別の力なのです。それに……私達の子、シロウは3属性、トリプルの資質を有しています。私の火、水の2属性デュアルの力と、陛下の風属性全てを扱える。あの子がきっと、陣頭に立ってくれます」


 デュークは一度目を瞑り……再度その眼を開いた時、迷いは消えていた。


「そうだな……うむ、ありがとうユリア。明日、シロウに命を出そう。我が国の民を守るように」

「はい、陛下」

「くふふ、そう上手くいきますかねぇ?」

「「!?」」


 二人の会話を遮るように、影から声が聞こえた。その影は形を変え、やがて人型と成り、その地へと降り立った。


「何者だ!?」


 デュークはユリアを庇うように前に立つ。


「はじめまして国王陛下、並びに王妃殿下。私は『ナイトメア』首領、シャイターンと申す者。本来であれば部下に任せるのですがねぇ……色々と出払っておりまして、こちらには私が来たのですよ」

「こちらには、だと!?」

「おやおや、流石ですねぇ。ええ、ええ。お察しの通り、各国に送り込んでおります。手足に過ぎない兵達に手を出すより、ブレインを支配する方が手っ取り早いですからねぇ」

「!!」


 シャイターンは、手を前に掲げる。その手から溢れ出る黒い靄が、少しづつ二人に近づいていく。


「私達をどうするつもりだ」

「命の心配はありませんので、そこは安心して良いですねぇ。ただ少し、言うとおりに従って貰うだけですのでねぇ……」

「くっ……ユリア、お前だけでも逃げろ……!」

「いいえ陛下、私は陛下に最後までお供いたしますわ」


 ユリアは手に握りしめていた宝石を発動させる。それは、マーガリンより渡されていた魔道具である。


『マーガリン様、今の私に出来るのはこれだけ……どうか、後はお願い致します……』


「ククッ……さて、もう良いですかねぇ。これから私の指示に従ってもらいますよ?」

「「はい、シャイターン様……」」


 この夜、時計の位置で言えば3の位置にあるサンスリー国は『ナイトメア』の支配下に置かれる事となった。

 地上海から魔界海に一番近いこの国は、防衛拠点の要となる。その為各国からも支援部隊が派遣される事になっていたが、先に手を打たれたのだ。


「さて、他の国はどうなっていますかねぇ……」


 その姿を再度影の中へと潜ませ、シャイターンはその姿を消すのだった。



 同時刻、フォース城


「陛下っ!ご無事ですかっ!?」

「おおカレン卿、アニス卿。助かった、大義であったぞ」

「いえ、ご無事で何よりです」

「です」


 カレンはその剣についた血を振り落とした。アニスはその大鎌を、倒れている賊の首元へと近づける。


「ぐぅぅ……まさか、地上のナイツマスターがここまでの強さ、とは……」

「確かに、以前の私達ならば敗れていたかもしれませんわね。さぁ、どうやってこの厳重な城の警備を潜り抜け、陛下の寝室まで忍び込めたのか……また、何を目的としていたのか、色々と吐いてもらいますわよ」


 カレンが一歩近づくと、倒れていた体が闇に溶けていく。


「「!?」」

「元より、失敗すれば無くなる命……貴様達の強さは、首領に届けておく……先に、地獄で待っているとしよう……」


 そう言い残し、闇へと消えてしまった。


「……申し訳ありません陛下、賊を捕縛失敗致しました」

「構わぬ、あれはどうしようもないであろう。それより、マーガリン様の言っていた通りならば……サンスリー国が危ういな」

「はい。陛下、現場はアニスに任せ、私が直接調査に向かう事を許可して頂けないでしょうか?」

「うむ……カレン卿を我が国から一時とはいえ離れさせるのは痛いが……全体で見れば、そうした方が良いのであろうな。分かった、カレン卿に任せよう」

「はっ!アニス、任せましたわよ」

「はい。カレンお姉様もお気をつけて。何かあればすぐに連絡してください」

「あ、アニス!」

「ふむ、すぐに連絡とは?」


 スマホの事は国王にも秘密にしていた為、カレンは焦ったが時すでに遅し。

 アニスも失言に気付いて小さくなったが、これ以上国王の追及を避ける事はできず、二人はしぶしぶながら伝える事にした。


「成程、これはマーガリン様ではなく、そのご息女の蓮華嬢の会社で作った試作品、か。ふはは、凄いな。製品化が出来たのならば、是非我が国にも卸してほしいものだな」

「「あ、あはは……」」


 国王からの忌憚ない言葉に、二人は愛想笑いを返す事しか出来ないのであった。

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