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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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130話.ノルン誘拐

 アーネストが魔の闘技場へ駆けて行くのを見送る。

 リヴァルさんが居て、あの強大な魔力の持ち主である吸血鬼の真祖が居る。

 物理的にも魔力的にもあの二人なら大丈夫だろうし、精神的なものならアーネストが居れば大丈夫だろう。

 少し、悔しいけれど。

 モニターには、今の私よりもはるかに上の魔力を扱う蓮華が映っている。その瞳はいつものエメラルドグリーンではなく、朱く染まっている。

 恐らく、正気ではない。


「蓮華……」


 私は一人、そう零す。蓮華に負けないように、訓練をした。興味の無かった勉強も、強くなる為に取り組んだ。

 私との出会いは最悪だったはずなのに、友達だと言ってくれた蓮華にアーネスト。

 二人に負けたくなくて、対等でありたくて……。

 けれど、そんな私をあざ笑うかのように、蓮華はどんどん、どんどん上に行く。


「ノルン様、ようやく見つけましたよ」

「……マモン?」


 突然声を掛けられた相手は、見知った相手だった。

 リンスレットの部下で、大罪の悪魔の一人、マモン。


「私を探していたようだけど、何か用?」

「フヒッ……ええ、ええ。ずっと探していたのですよ。それが、少し前まで全く気配すら感じなかったモノですから、時間が掛かってしまいました」


 こいつは話し方が色々変わる。どの話し方が素なのか、私には分からない。

 以前から薄気味悪い奴で、私はこいつが苦手だ。


「それで、私を探していたのは分かったけれど、何の用なの?」

「ええ、ええ。実はですね……」


 突然、マモンの体から闇が侵食する。

 私は飛び退こうとするが、体が動かなかった。そのまま浸食され、魔力を封じられてしまう。


「なっ!?」

「勿論勿論、ノルン様が彼と二人で居る時から、準備をしておりましたとも。フヒッ……フヒヒヒ……!」


 私の首元から、小さな蜘蛛が手へと移動する。

 まさかっ……!


「フヒ、フヒヒ……ご明察でございます。私は蜘蛛を使役致します故、気付かれないようにノルン様の元へと移動させ、神経毒を注入させて頂きました。足のみ、動かないでしょう?」


 マモンの言うとおり、声も出せるし上半身は動かせる。なのに、足だけはまるで存在しないかのように動かす事が出来ない。


「この騒ぎでは、声を張り上げても無意味で御座います。大人しく、我々の元へと来て頂きます。フヒ、悪いようには致しません故、ご安心ください」

「何が目的よ」

「最初は蓮華=フォン=ユグドラシルがターゲットでしたが……フヒヒ!ノルン様でも良いとの事で」

「!!まさかアンタ、ナイトメアに!?」

「ヒヒ、おしゃべりが過ぎました。では、失礼致します、フヒ!」

「フン!足が動かないくらいで、私が大人しく捕まるとでも……!」


 封じられた魔力を解放しようと力を込める。けれど、それを途中で止められてしまった。


「ふふ、大人しくして頂きますわよ」

「あ、アンタは……!」


 真っ白な着物を着ており、艶やかで黒い髪は腰まで届いている。眼は獲物を狙う猫のように鋭く、黄金色に輝いていた。

 蓮華と共に戦い、押し負けた相手。


「はつ、ね……!」

「お久しぶりですわね。積もるお話はまた後で」


 そうして、私は初音とマモンによって捕らわれてしまう。

 恐らく、マモンが探していたのに見つけられなかったのは、リヴァルさんが私を隠していたのだと理解する。

 こうなる事態を予測……いや、未来から来たのだから知っていたんだろう。

 ただ、リヴァルさんの予想外の事が起きた。それが蓮華の暴走。それを止める為に、リヴァルさんは力を集中する必要が出て、私に掛けていた力が解除されてしまった。


 ……情けない。私は、またお荷物になってしまうのか。あれだけ力をつける為に努力をしたのに、何も変わっていないのか……!

 悔しさで涙が出そうになる。でも、ここで泣いていられない。

 私を何の目的で攫うのか分からない。だけど、後悔させてやる。

 私を蓮華よりも与し易いって考えた事、絶対に許さないわ。

 それに、考えようによってはチャンスかもしれない。ナイトメアのアジトを突き止められるかもしれない。

 闘技場の騒ぎが収まれば、蓮華達が絶対に私を探してくれる。

 その時まで、私は情報収集を進めよう。雌伏の時ってやつね、前に本で読んだわ。


「マモン、シャイターンに先に伝えてくれるかしら?私は少し野暮用を済ませますわ」

「フヒヒ……お任せください初音殿。ノルン様は私がお連れしても?」

「ええ。ただし、手を出したら許しませんわよ?」

「フヒッ!勿論、勿論でございます」


 このマモンという悪魔は、今は商人のような口調を気に入っているんだろうか。いや、この口調が商人基準ってわけじゃないんだけれど、以前読んだ本の商人が丁度、こんなへりくだったような言葉遣いをしていた。

 以前は侍のような口調を好んでいて、語尾にござるとか言ってた気がする。


「ではでは、失礼致します」


 初音によって腕も糸のような物で拘束されている私は、身動きできずにマモンにお姫様抱っこをされる。


()ー!!」


 口にも猿轡(さるぐつわ)をはめられ、言葉が話せない。

 必死に嫌と言うも、言葉にならない。


「ふふ、正に美女と野獣ですわね」


 初音が微笑んで言うのを、私は苛立ちながら見つめる。


「それでは、任せましたわよマモン」


 そう言って、姿が消える。

 そこで初めて、マモンの口調がまた変わった。


「申し訳ありません、ノルン様。今は……従ってください。決して、ノルン様に危害は加えません……」


 そう言って、また空を進みだす。

 何がなんだか分からなくなってしまった。

 マモンは、ナイトメアの一員じゃないって事?いや、今の言葉だけでは判断できない。

 大罪の悪魔で信頼できるのは、アスモデウスとレヴィアタン、それにルシファーくらいなものだ。

 後の奴らは、腹に一物確実にある奴らだから。


 蓮華、アーネスト……ごめん。いつもアンタらに厳しく言ってるのに、私がまた迷惑をかける事になっちゃったわね。

 でもただでは捕まらない。必ず有益な情報を手に入れて見せるから、それでチャラにさせてね。

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