118話.索敵能力の向上
『メジャー』で戦闘力を数値化して見る事ができるようになって数日。
私達は日々実戦の様な戦いを繰り返し、力を上げていった。
寝る前にお互いの数値を測り(『メジャー』は自分自身を測れないので、測ってもらう必要がある)、一日にどれくらい上がったかを見るのが楽しみになった。
ゲームのステータスのように、力や魔力がどれだけ上がったかの詳細は分からないけれど、総合でどれくらい上がったかを目視できるようになったのは、私達のモチベーションを高く保ってくれた。
そして今日もまた、いつものように戦うのだと思っていたんだけど。
「蓮華、アーネスト、ノルン。今日はお前達にある物を探して貰う」
「「「ある物?」」」
私達は全員首を傾げる。リヴァルさんでも見つけられない物なんだろうか?
「ああ、勿論私が見つけられなかったとかそういう意味じゃなくて、この石をユグドラシル領の数か所に隠してきたから、それを見つけろって事さ」
そう言ってリヴァルさんが掌に乗せているのは、星形の珍しい形の石だった。
でも、形以外は特段珍しくも無い、普通の石に見える。
「ちなみに、これはただの石だぞ?そこら辺にあった石を私がこの形に削っただけだからな。でも綺麗にできてるだろ?」
何故かドヤ顔である。リヴァルさんも、こういった子供っぽい所があって微笑ましく思ってしまう。
「もしかして、それも訓練って事か?」
「勿論そうだ」
アーネストが首を傾げながら聞くのを、リヴァルさんは頷く。
石を探すって、亀の甲羅でも背負いながら探すのかな。
「お前達は今後、多くの敵に狙われる事があるかもしれない。その時に、敵の気配を感じるだけでなく、その位置まで分かるようになったら便利だろ?その為の訓練の一つさ」
「リヴァルさん、それは『サーチ』とは別で……?」
「勿論『サーチ』も有効な手段だが、中にはそれを無効化する奴もいる。ちなみに私も無効化できるから、『サーチ』を使っても私を見つけられないぞ。例え目の前に居てもだ」
「「「!!」」」
驚いた。しかも、私が試そうとするのを見越して先に言われてしまった。
「つまり、スキルや魔法に頼らず、感覚として身に付けろと言う事ね?」
ノルンが真剣な表情で聞くのを、リヴァルさんは微笑んで頷いた。
「そういう事だ。今から渡す石の魔力を感じてみてくれ」
リヴァルさんが私とアーネスト、ノルンにそれぞれ星形の石を手渡す。
受け取った石から感じる、ほのかな魔力の残り香……あれ、これって……。
「ノルンの、魔力……?」
「え、これ蓮華の魔力……?」
「なんだ!?リヴァルさんの魔力か!?」
「「「え?」」」
私が受け取った石からはノルンの魔力が、そしてどうやらノルンが受け取った石からは私の、アーネストの受け取った石からはリヴァルさんの魔力を感じるみたいだ。
「分かったな?その微弱な魔力を感じ取りながら、石を探してくれ。それと、お前達はその石に込められた魔力と同等の魔力に調節して、ニュートラル状態を維持するように」
通常、魔力を体内に保持していても、魔力を表面に出している人は居ない。
その魔力を出していない通常の状態の事をロウ状態と言う。
今リヴァルさんの言ったニュートラル状態とは、反対に体内の魔力を体全体に均一に纏う状態の事を言う。
この状態の時、肉体は普段よりも強固になり、身体能力が格段に上がる。
ただ、その分魔力も消費するので、どれくらいの量を纏わせておくと魔力が減らないかを見極めるのが難しかったりする。
私の場合、魔力の自然回復量が滅茶苦茶高いので、無意識レベルでニュートラル状態だったみたいで。
逆にロウ状態にするのが、調節が難しくて苦手だ。それと似た様なもので、極小の魔力を纏わせたニュートラル状態を維持しながら物を探すのは、大変難しいと思う。
「リヴァルさん、俺は魔力使えねぇんだけど……」
「私が知らないと思ったら大間違いだぞ。マーガリンさんの原初回廊の魔力を扱えるだろ?」
「げっ……」
そうなのだ。アーネスト自身の魔力は0だ。
だけど、母さんの魔力回路を埋め込まれているアーネストは、母さんと同等の魔力を内包しているんだ。
しかも、毎日生成される魔力をストックできる。どれだけできるのかは私は知らないけれど、私以上に魔法を扱う事だって可能なはずだ。
「敵に見つかったら不味い場合に、魔力の量を調整しながら動く事も大事だからな。でなければ、自分の居場所を敵に見つけてくれと言っているようなものになる」
リヴァルさんが言うのはもっともな事だと思う。
まぁ、あまりそういった事は起こらないとは思うけど……何事も最悪の状況を想定しておくのは悪い事じゃない。
「何よりも、守らなければならない者が居る場合、が厄介だ。それは自分を守る事以上に、大変な事だぞ」
リヴァルさんが声のトーンを落として言った言葉。
何故か、その言葉は凄く重みを感じた。恐らく、リヴァルさんはそういった経験をしてきたんだろう。
私達の誰かを守るとは違った意味での、本当の意味での守る戦いを。
「それじゃ、今から昼までに見つけて戻ってくるように。ちなみに、魔法も魔術も使用禁止だ。己の肉体のみで探して持ってくるんだ。昼までに持って来れなかったら、昼ごはん抜きだからな」
「「「ええええっ!?」」」
最後の最後に滅茶苦茶な事を言ってくれる!
ちなみに、今日のお昼ご飯は昨日兄さんが狩ってきたティラノサウルスの肉汁たっぷりの弾力あるステーキだ。
これを食べられないとか、キツスギル!
「今日の昼飯ってあれだよな、ステーキだよな?」
「うん、兄さんが狩ってきたあれだよ」
「あの肉美味しいわよね。分厚いのに豆腐みたいに柔らかくて、舌で溶けていくのよね……」
私達三人は、以前食べたあの味を思い出す。
「「「絶対に昼までに見つけ出す!」」」
私達三人は手を合わせ、エイエイオー!と言わんばかりの気合を入れて、それぞれ駆けだした。
それを見ていたリヴァルさんが、凄く笑っていたのだけど……くそう、絶対見つけてやるー!




