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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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107話.成長の実感

「シリウス……!」

「「「「「シリウス様っ……!!」」」」


 巨大な前足に踏みつけられ、その姿を見る事が出来なくなる。

 手を握りしめ、今すぐにでも助けに行きたい衝動をなんとか抑える。


「みな、耐えよ。俺達の役目を思い出せ。カレン卿やアニス卿が撤退を決定した時、俺達はその退路を命を賭けて守らねばならない」


 唇を力強く噛む。鉄のような血の味が口の中に広がっていく。

 皆一様に、今すぐにでも駆け付けたいのを我慢している。

 そんな時、後方が少し騒がしい事に気付く。


「どうし……!?」


 俺の言葉は、憧れの方を見つけた事により続きを言えなかった。


「アルスさん!私達はこのまま行かせてもらうよ!」

「俺達に後は任せてくれっ!」


 風のように駆け抜けていく、二人の後ろ姿。

 蓮華=フォン=ユグドラシル様に、アーネスト=フォン=ユグドラシル様。

 俺の憧れた、目指すべき先を見せてくれた方々。

 俺は咄嗟に頭を下げる。


「頼みます……シリウスを、どうか……!」


 俺の言葉が届いたのか、二人は振り返らずに手を出し、親指を立てた。

 それを見ただけで、俺の気持ちは軽くなった。

 ああ、あの姿こそ……人々に安心感を与える背中なんだ。

 俺は、シリウスの所へ駆ける二人の後ろ姿を、ただ見つめていた。






 住民の避難を誘導している騎士団の姿を発見し、アーネストと共にその先へと走った。

 途中でアルスさんを発見し、そこへ向かっている途中でシリウスが巨大な化け物に踏みつけられる所を見た。


「シリウス……!飛ばすぞアーネスト」

「ああ!」


 速く、速く!


「どうし……!?」


 途中アルスさんを横切る。

 話している時間は無いから、走りながら声を掛ける。



「アルスさん!私達はこのまま行かせてもらうよ!」

「俺達に後は任せてくれっ!」


 シリウスを早く助けないと……!


「頼みます……シリウスを、どうか……!」


 後ろからアルスさんの声が聞こえたので、右手を横へ出して親指をグッと立てておく。

 大丈夫、友達を死なせたりするもんか……!


「このっ!お放しなさいなっ!」

「その前足を、どけろですっ!」


 見れば、カレンとアニスが前足に攻撃を仕掛けている。けれど、弾かれている。

 どうやら、かなり硬いようだね……なら!

 ソウルの柄に手を掛け、走りながら『斬鉄』の準備をする。


「直線上に居る二人を頼むアーネスト!」

「おお、了解だぜっ!」


 私が何をするのか理解したアーネストは、私よりも更に速く移動する。


「あ、アーネスト様!?」

「説明してる時間はねぇ!ちょっと失礼するぜ!」

「「きゃっ!?」」


 アーネストが二人を抱きしめて、そこから離脱する。


「良いぞ、蓮華!」

「さんきゅアーネスト!私の友達を、離せ化け物!『ユグドラシル流居合術極の型・斬鉄』!」


 音速を超える刃が、化け物の手足を両断する。


「ガァァァァッ!!」


 化け物は手足を失い、その場に倒れ込む。

 私は急いでシリウスの上にある残った足を蹴り飛ばした。


「シリウスッ!」

「……」


 そこには血を吐き、鎧がボロボロになっているシリウスが横たわっていた。

 急いでシリウスに『ヒーリング』をかける。

 幸い命はまだ失っていない。それなら、完全に治してあげられる。


「よく頑張ったね、シリウス。後は、私達に任せて」


 そう声をかけながら、シリウスを抱き上げる。


「アーネスト、シリウスをアルスさんの所へ連れて行ってくる。そいつ、殺すなよ?私が仕留めるから」

「お、おお。了解だぜ」


 アーネストの顔が若干引きつっていた。

 私は今、結構怒っている。それが隠せていないせいかもしれない。


「シリウス!蓮華様……本当に、本当にありがとうございます……!」


 お礼を言うアルスさんに、シリウスを手渡す。


「後は、任せて。あいつは絶対に、私が倒すから」


 そう言い残し、私はアーネストの元へと戻る。

 どうやらちゃんと生きてるようで安心する。


「「蓮華お姉様!!」」


 カレンとアニスが私の元へ駆けてくる。

 だけど、今は抱擁されてるわけにはいかない。


「二人とも、話は後で。まずは戦いを終らせないとね」

「ええ、分かりました蓮華お姉様!」

「はい!蓮華お姉様!」


 元気良く返事をする二人に、少しだけ心が落ち着く。


「照矢君達も戦っていたんだね。大丈夫だった?」

「あ、はい!でもあいつ、滅茶苦茶強くて……」

「こっちの攻撃が全く効かないじゃン……」

「貴方達も蓮華お姉様の知り合いでしたの?」

「知り合いというか、世話になっているっていうか……」


 攻撃が効かない、か。多分、それはオーラで体を硬質化してるな。

 それなら、それ以上のオーラの量をぶつければ良いだけだ。


「蓮華、少しの間だというのに、凄まじく魔力の制御が上手くなっているようじゃな」


 ミレイユは一発で分かったようだ。

 でも、上がったのは魔力の制御だけじゃないんだよね。


「ま、見ててよ。死に物狂いで特訓したからね。なぁアーネスト」

「おう。そんじょそこらの奴にゃ負けねぇぜ?っていうか、俺は知らねぇ奴らだよな?お前どんだけ知り合ってんだよ」


 あ、そういえばアーネストは会ってなかったっけ。


「後でなアーネスト。さて、よくも私の友達を傷つけてくれたね。シリウスが受けた痛み、倍にして返してやる」


 ソウルを鞘から抜き、魔力を纏わせる。


「グゥゥ……我ガ手足ガ再生セヌ、ダト……!?」


 ああ、以前の未熟な『斬鉄』なら再生してただろうね。

 でも今の『斬鉄』で斬られた箇所は、再生不能だよ。


「ダルマのようにサンドバッグにしてやるから、覚悟しろ」


 化け物の傍に駆け寄り、ソウルで一閃する。

 私の魔力で強度を上げまくったソウルは、容易くその肉を斬り破る。


「グアァァァァッ!?」

「「「「「!!」」」」」


 うん、斬れる斬れる。

 それじゃ、漫画肉みたいに焼いて食べれるように細切れにしようか。


「はぁぁぁぁぁっ!!」


 身動きの取れない化け物を、斬って斬って斬りまくる。


「ガアァァッ!!バ、バカナ……!コノ獣王ノ肉体ヲ、コウモ簡単二貫クナド……!?ソナタ、何者ダ……!」


 聞かれたので、ソウルで斬るのを一時止め、名乗る事にする。


「私は蓮華。蓮華=フォン=ユグドラシル。冥途の土産にすると良いよ」

「ソナタガ……!」


 驚いた顔をした、気がする。

 ライオンの顔してるので、あんまり違いが分からないので、多分。


「おっと、動くなよお前ら。蓮華の邪魔すんなら、俺がお前らの相手すっからな」

「「!!」」


 後ろに居た二人が、アーネストに睨まれて固まる。

 うん、アーネストは強いよ?お前達がどれくらい強いのか分からないけど……アーネストに攻撃されたら、一瞬で終わると思う。


「我ハ獣王バ……」

「ああ、お前達の名前に興味無いんだ。だって、ここでお別れだからね。シリウスを殺す所だったよね?許さないよ?」


 再度ソウルで斬る。今度は、胴体を縦に。


「グアァァァァッ!!ヨモヤ、コレホドノ力ヲ持ツ者ガ、今ノ地上二居ヨウトハ……ム、無念……」


 その言葉を最後に、獣王と言ったこいつは目を閉じた。

 そしてその巨体は、紫色の煙となって、空に消えていった。


「なんだ、弱いじゃないか。さて、見た所お前達も敵かな?」

「「!!」」


 さっきアーネストに止められた二人を見る。


「まさかバルバスが、本体じゃないとはいえ……あーも簡単に倒されるなんて……」

「契約はあいつを捕獲だったっけ?無理じゃないこれ」


 何か言ってるけど、敵ならやる事は一つ。


「アーネスト。私はさっきの取っちゃったし、そいつら任せるよ」

「お、良いのか?じゃ、遠慮なく!」


 笑顔でネセルを構えるアーネスト。


「「ひっ!?」」


 それを見て二人が震え上がる。

 うん、分かるよ。刃物持った人が笑うと、異様に怖いよね。

 まぁあっちはアーネストに任せよう。

 シリウスを助けられた。

 それに、強くなってる。それを実感できただけでも、嬉しいね。

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