103話.闇魔界からの召喚者達
「ふぅ~、労働の後の飯はやっぱ美味しかったな~」
「兄ちゃんほとんど何もしてないけどな」
「ぐっ……!」
「あはは……」
妹の毒舌が厳しい。ハルコさんも苦笑してフォローしてくれない、悲しい。
「テリー」
そんな中、ミレイユが厳しい表情で俺を見つめてきた。
「どうしたんだミレイユ?腹でも壊したのか?」
少しの間とはいえ食べてきたわけだし、この世界の飯が合わないなんて事はないと思うけど。
「マーキングをしていた者達が、この街に居た怪しい奴らと集まっておる。そしてその位置に、禍々しい魔力を感じるのじゃ」
「!!」
パルスオキシの街に居た奴らが、オーガストに来てたのか。
それに、禍々しい魔力って……こういう場合、何かの召喚だったりするのがセオリーだけど……。
「きゃぁぁぁっ!!」
「うわぁぁぁっ!!」
考えていたら、少し先から叫び声が聞こえた。
「兄ちゃん!」
「ああ!行こう皆!」
頷き合い、声が聞こえた方へと走る。
時間が時間なので、まだ人は多い。
離れようとしている人達を避けながら、なんとか現場にたどり着く。
するとそこには、巨大な三体の魔物が人々を襲っていた。
「たす、け……ぐぶっ……」
こちらと目が合い、助けを求めた人が、その巨大な手で握り潰される。
「やめろぉぉぉっ!!」
一も二も無く、俺は激情にかられて魔物へと飛び掛かった。
「だぁぁぁっ!!」
渾身の力で剣を振り、その体を真っ二つにしてやろうとした。
けれど、魔物は俺の一撃を片腕で受け止めた。
「何っ……!?」
「コノ獣王ニ、ソノ程度ノ力デハ傷モツカヌゾ」
この魔物も言葉を話せるのか!
「そンじゃこれならどうよっ!」
俺の剣を片腕で受けている所に、玲於奈が飛び蹴りを食らわせる。
「ウオオオッ!?」
そのままお店まで吹き飛ぶ獣王。
流石玲於奈、剣より殴った(蹴った)方が強いってもう……。
「レオナ!後ろじゃ!」
地面に着地した玲於奈に、ミレイユが叫ぶ。
残りの二体の魔物が玲於奈を狙う。
「残像って奴じゃン?」
「「!!」」
しかし、二体の魔物の攻撃は空を斬る。
玲於奈はすでに、俺の横に居た。本当に頼もしい妹だ。
「兄ちゃん、こいつらがさっき居た足元に、例のローブきてた奴らが転がってるじゃン?きっと、そういう事じゃン?」
玲於奈の言葉に、頷く。
多分、こいつら三体を召喚する為の生贄になったとか、そういうのだろう。
なんで命を粗末にするんだよ……!
「良キ力ダ。ソノ辺ノ雑魚トハ違ウヨウダナ」
玲於奈に蹴り飛ばされた獣王が、こちらへとのんびり歩いてきた。
「我ガ名ハ獣王・バルバス。ソナタラノ名ヲ聞コウ」
人殺しに名乗る名前なんてないね。
「テリヤ様ー!ファイトーですー!」
「テリー様、そんな肉だるま軽くやっちゃってくださいねー」
と思っていたのに、うちの仲間から簡単にバラされる。
君達ワザとじゃないよね?
「……照矢だ。バルバス、お前は召喚されたのか?」
「ソウダ。ソノ命ヲ魔力ヘト変換シ、我等ヲ召喚シタヨウダナ」
やっぱりか。でも分からないのは、その目的だ。
「バルバス、契約だけは果たしましょう?そうすれば、私達は自由」
「あのリンスレットに閉じ込められた闇魔界から、このまま解放される為なら、この契約は遂行しないと」
残りの二体の魔物も、言葉を話してきた。それも、バルバスよりも流暢で聞き取りやすい。
バルバスはなんていうか、カタコトに聞こえる。
「パイモン、バティン。ソウダナ……アノ時ノ雪辱、晴ラサズオレヌ……!」
何かわけのわからない話をしているけれど、その契約っていうのは多分……
「この街を破壊するつもりなのか?」
「我等ノ契約内容ハタダヒトツ。レンゲ=フォン=ユグドラシル、トイウ者ヲ捕獲シテホシイトイウモノダッタ」
「なっ!?蓮華さんを!?」
「ドウヤラ、対象ヲシッテイルヨウダナ。ソナタラヲ倒シ、案内シテ貰ウトシヨウ」
しまった、俺の悪い癖だな。
でも、どちらにしても蓮華さんを捕まえさせたりなんてしない!
「そうはさせない!俺達がお前達を止める!」
「蓮華サンを捕獲って、させるわけないじゃン?世話になってる人だかンな。恩返ししとかねぇと」
そう言って構えをとる玲於奈が頼もしい。
「バルバス、パイモン、バティン……いずれもどこかで聞いたような名じゃな……どこじゃったか……」
なにやらブツブツと言っているミレイユだけど、まぁミレイユは強いし大丈夫だろう。スラリンやハルコさんも近くに居る事だし。
「行くぞ玲於奈!」
「ああ兄ちゃん!」
俺達は同時に駆ける。
まずはバルバスを一気に片付けて、次に残る二体を倒す。
その為にも、このバルバスを全力で!
「喰らえっ!『ギガントブレイク』!」
雷を纏わせた剣での一撃。
後ろの二体は全く動かず、助けに行く様子は見えない。
「グオオオオッ!」
その巨大な腕で防御され、肉の真ん中で剣が止まる。
くっ、硬いっ……!
力を入れるが、動かない。
マズイ、このままじゃ狙い撃ちされる!と思っていたその時。
「まずは腕一本っ!」
玲於奈が剣の上から蹴りをかまし、そのまま剣が腕を断ち切る。
「ガァァァァッ!!」
これには堪らず獣王も叫ぶ。よし、このまま……!
連撃を仕掛けようとしたら、獣王の斬られた腕がジュクジュクと気持ちの悪い音がしだした。
そして、切り落とした腕が生えてくる。
「再生!?」
「ンなのアリかよ、めんどくせぇなぁ」
「ヤルナ、ソナタラハヤハリ強イ。舐メテハカカレヌヨウダ。マダ魔力ガ十分デハナイガ……本来ノ姿二成ロウ」
そうバルバスが言うや否や、体が変形していく。
「思い出したのじゃ!バルバス、パイモン、バティン!ソロモンの悪魔、72柱に指名されておる奴らなのじゃ!」
ソロモンの悪魔!俺でも聞いた事がある!
悪魔達を率いる王達の軍団だよな!?
なんてもん召喚してんだ!
みるみると姿を変えていくバルバス。
その姿はライオンのようで、更に巨体。
もう俺の剣では片腕すら斬り裂けないだろう、それくらい大きい。
「テリー、幸い奴らはこの街の住人の殺戮が目的ではない。勝てぬとなれば、撤退し蓮華に連絡を取るのじゃ」
俺の横へと飛んできたミレイユが、そう告げる。
頷き、バルバスへと視線を戻す。
そこには俺達を見下ろす、どでかいライオンが居た。
「サァ、ココカラガ本当ノ勝負ダ」
凄まじい音量で聞こえるその声に、耳を塞ぎたくなる。
これだけ大きければ、街の外からでも確認できそうだ。
シリウスさん達にも報告が行くだろう。
救援も期待できるし、やれるだけやるしかない!




