102話.VSパイコーン
俺達は今、隣町への街道を商人の護衛を兼ねながら進んでいる。
通常討伐クエストで複数パーティになる事は少なく、こういった護衛依頼で複数のパーティを組む事が多いそうだ。
担当は俺達が馬車を守りつつ、グレクさん達が魔物達を蹴散らしている。
玲於奈と口喧嘩をしていたコレンさんの索敵魔法はかなり範囲が広いらしく、魔物の位置を正確に把握していて、奇襲される事も無く楽だった。
グレクさんはその筋肉を生かした剛剣を扱って魔物を斬るというより、押しつぶしていた。
アッシさんは杖からエネルギーのような刃を発生させて、それを剣のように扱う魔法剣士って感じだな。
コレンさんは火の魔法が得意らしく、遠い位置に潜んでいる魔物に『ファイアーボール』を打ち込んで先制したり、魔物の数が多い時は『ファイアーストーム』で魔物を狙うんじゃなく、近づけさせないように使ったりと多彩な戦術を見せてくれた。
これがAランクパーティの実力か。
そうこうしている間に、隣町であるパルスオキシという街に着いた。
道中魔物は多かったものの、討伐目標であるパイコーンに出会う事はなかった。
「よし、この街でも何か依頼受けていくか。テリヤ達はどうする?」
グレクさんからそう聞かれたので、俺が代表で答える事にする。
「俺達はこの街初めてでさ。ちょっと見回りたいんだ。だから、また1時間後にここに集合って事で良いかい?」
なんせ、ミレイユが瞳を輝かせて街を見て周りたいと訴えかけてくるので。
「そうか、ならまた後でな。ついでに回復アイテムも『アイテムポーチ』に入るだけ買っとくかアッシ」
「そうだね。僕が補充しておくから、二人はギルドに行ってて良いよ」
「何言ってるのよ、そんな使いっぱしりみたいな事しなくて良いわよ。全員でギルドに行って、全員で買いに行きましょ」
「はは、だな!アッシ、それで良いよな?」
「分かったよ。ありがとう二人とも」
そう言って、三人は俺達とは反対側へと歩いて行った。
あれが本当のチームっていうんだろうな。
よくパーティの一部の人を見下したり雑に扱ったりするのを話で読んだ事あるけど、それとは無縁で良かった。
「兄ちゃん、私達も」
「うん、そうだな。にしても、流通してる『アイテムポーチ』って、性能がかなり差があるみたいだなぁ」
商人達が持ってる『アイテムポーチ』は結構容量はあるようだけど、それでも持ち運べない量を馬車で運んでいる。
でも多分、言えないけど俺達の持ってる『アイテムポーチ』なら、全部入ったと思う。
「あの人が作ったんだったっけ?ホント規格外じゃン……」
それには心の底から同意する。
そして、俺達は街を少しの間見回ってから、また別れた場所に戻ってきた。
王都オーガストで偶に見かけたフードを被った集団が、この街にも居た。
なんでそんなあからさまに、自分達は怪しいですって恰好してるのかが分からない……。
まぁ、何か悪さしてるわけでもないので、そのまま素通りだったけど。
「安心せよテリー。あやつらに魔力探知魔法を纏わせておいたのじゃ。この街とオーガストに居る間は、妾が見張っておるでな」
流石魔王、そういう魔法もあるんだ。便利だな。
何かあれば、居場所が分かるなら捕まえられるな。
それから少しして、グレクさん達がやってきた。
「お!すまねぇ、待たせたか?」
「いえ、俺達も今きた所ですよ」
「恋人の待ち合わせじゃねぇンだから、ちゃんと待った時間言ってもいいじゃン」
玲於奈に突っ込まれたので苦笑しておく。
グレクさんも苦笑してるけど、悪気が無いのは分かっているのか、特に何も言わなかった。
「そんじゃ、今度こそパイコーンの討伐に行くか!」
グレクさんの掛け声とともに、俺達は街道を進み始める。
コレンさんの索敵魔法でも近くにはパイコーンの反応は見つからないらしい。
どういう事だろう。
「ふむ。ギルドの討伐依頼に出ていたくらいなのじゃから、街道を塞いでおったのではないのか?それとも、もう他者に討伐されたか」
ミレイユが思案顔でそう言うけど、俺も気にかかる。
そもそも、行きで出会わなかったのが分からない。
そんな話をしていたら、コレンさんから慌てた声が聞こえる。
「なっ!?そんな、今さっきまで反応なんてっ……!気を付けて!上よっ!」
上!?見上げると、巨大な馬のような物体が、数体空から落ちてくる。
「うぉぉ!?」
「チィッ!ぶっ飛べぇっ!」
俺の真上に落ちてくる巨大な馬を、玲於奈が飛び蹴りで吹き飛ばす。
「すまん玲於奈!」
俺はすぐに剣を構えて体制を整えた。
俺達は背中を合わせ、円陣を組む。俺達を囲うように、巨大な馬が前足を前後に動かす。
まるで今から突撃すると言わんばかりの態度だ。
「パイコーン!それも群れかっ!」
「一体でA級なのに、数体……これはいくらなんでも……」
「弱気になんなアッシ!何の為にこれまで強くなる特訓をしてきたんだ!?蓮華様に認めてもらうためだろ!?こんなとこで負けてるようじゃ、いつまでたってもあの人に追いつけねぇぞ!」
「っ!うん……!」
パイコーンに囲まれ、弱気になっていたアッシさんを、グレクさんが励まして持ち直させた。
良いチームだな。よし、俺達も負けてられないな!
「玲於奈、正面の奴は任せて良いか?」
「了解。兄ちゃんもヘマすンじゃねぇぞ」
徒手空拳で構える玲於奈に、頼もしさで笑ってしまう。
「おう。ミレイユとスラリンはやりすぎないようにな?」
「分かっておるのじゃ」
「はいですー」
「ハルコさんはいつものサポート魔法陣頼むよ!」
「わ、分かりました!」
それぞれに指示を出し、パイコーンに意識を向ける。
「そっちも準備は良いみたいだな。やっこさんもやる気満々だ、俺達から打って出るぞ!」
「了解です!行くぞ皆!」
「「「「「おおおぉぉおっ!!」」」」」
ミレイユとスラリン、ハルコさんにコレンさんはその場に残り、俺と玲於奈は北側のパイコーン達の方へ、グレクさんとアッシさんは南側のパイコーン達の群れへと駆ける。
「喰らえぇっ!」
剣を振るい、パイコーンを斬り捨てる。
「GYAAAAAA!?」
声にならない声を上げるパイコーン、でも一撃では倒せなかった。
目が鋭くなり、こちらを睨みつけてくる。
その角にバチバチと音がしたかと思うと、雷が落ちてきた。
「げっ!?」
「兄ちゃん!」
「させぬのじゃ!『ロックブレイク』」
ミレイユの唱えた魔法が俺の前に展開し、雷を防ぐ。
成程、避雷針みたいなものか!
「舐めてくれんじゃン!雷がそっちの専売特許だと思うなよ!」
『アイテムポーチ』から剣を取り出し、玲於奈が剣を逆手に持つ。そこへ、雷が落ちてきた。
「同属性が回復すっか試してやンよ!喰らいなぁっ!『ギガストラッシュ』!」
玲於奈が剣を降りぬくと同時に、パイコーンの体が二つに分断される。
「GYAAAAAA!?」
そのまま地面に倒れ、二つの肉の塊と変わった。
「普通に効くじゃン?さぁ、どんどん来なっ!」
やだ、我が妹ながらカッコイイ。
残りのパイコーンの群れも、心なしか玲於奈を見て怯えている気がする。
見ていると、パイコーンと目が合った。
あれ、なんかちょっと笑ったような気が……?そう思っていたら、残りのパイコーンがこちらへと突っ込んできた!
「ちょっ!?残り全部こっちに来るとかどういう事ー!?」
「あー、テリー様の方が弱そうですもんねー」
「そうじゃなぁ」
「お二人とも……まぁ確かに、お姉様の方が怖いですけど」
なんてのほほんと見ながら言う三人。
「助けて欲しいんですけど!?」
そう叫んだら、後ろに追いかけてくるパイコーンを、玲於奈が斬り裂いた。
「GYAAAAAA!!」
次々とパイコーンを斬り捨てていく玲於奈。
「これでしまいだっ!おとといきなっ!」
こちら側の最後の一頭を斬り捨てる玲於奈。
あれ、俺ひょっとして何もしてない?
「ふぅ、まぁちょこっと他より強かったンかな?よく分かンないけど」
そう言いながら、剣に付いた血をブンッと勢いよく剣を振って落とす玲於奈。
我が妹ながらカッコイイ。二度目。
後ろを振り返り、ミレイユ達のさらに奥。
グレクさん達の方を見る。
まだ戦っているようなら、加勢に行かないと。
そう思っていたんだけれど。
「これで、ラストだっ!」
「GYAAAAAA!!」
グレクさんの大剣がパイコーンを一刀両断する。
凄い破壊力だ。威力だけなら、玲於奈より上な気がする。
どうやらグレクさん側も、大した被害も無く殲滅完了したようだ。
「やった……!俺達も、ついにやったんだな……!」
「ええ……!強くなってる……私達、強くなってるわ……!」
「うん……!うん……!」
三人はとても嬉しそうに抱き合っている。
俺達には分からないけど、きっと三人には思う所があったんだろうな、この討伐に。
三人の邪魔をするのもあれだから、俺達はパイコーンを『アイテムポーチ』に収納していく。またこれでお金が稼げるし、自由に使えるお金が増えるのは良い事だ。
そうして全てのパイコーンをしまったあたりで、グレクさん達がこちらに来た。
「後ろを任せられるのがお前達で良かったよ。お前達ならすぐにAランクに上がれるだろう。それと、ありがとう」
「こちらこそ。また機会があれば、一緒にやりましょう」
「ああ、お前達なら歓迎だよ」
そうグレクさんと笑いあう。
「その、最初に失礼な事を言ってごめんなさい。貴女の実力は本物だった」
「良いよ、気にしてない。それに、偶々私は強かっただけだし。多くはコレンさンが言って気付かせてやった方が良いと思うしさ」
「ありがとう玲於奈さん」
あっちも仲直りしてたみたいだ、良かった。
まぁ、元々玲於奈は良い子だし、コレンさんも相手の事を想って言うような良い人だし、和解するのも当然か。
それから俺達はオーガストに戻り、ギルドに行って報酬を受け取り、グレクさん達と別れてレストランで食事を取った。
シリウスさんの家に戻るか、そう思っていた時に、事件は起こった。




