96話.圧倒的な力の差
突然現れた彼女は、服装こそボロボロだったけれど、凄く美しい女性だった。
そして、母さんと兄さんからその実力を認められていた。
最初は、ほんの少しの嫉妬から。
彼女の実力を確かめたくて、ノルンに乗る形で戦う事にした。
ガギィィィッ!!
「「!!」」
まるで硬い金属に当たったかのように、音が響き渡る。
リヴァルさんは身動き一つしなかった。
私達の動きを追えていなかったわけじゃない。
その視線は私とノルンの動きに合わせて動いていたし、攻撃が直撃する所まで見ていた。
「やはりな。お前達の攻撃力では、私の障壁を削る事も出来ていないぞ」
「「なっ!?」」
リヴァルさんの言葉に驚いた。障壁にも強度があるのは知っていたけれど、私達の攻撃が全く通らないなんて!
「ま、何もしないのもアレだしな。さ、続けてこい。次はお前達の技を潰してやるよ」
その言葉にカチンときた私は、ネセルに魔力を纏わせる。
分かりやすい挑発なのはわかってる。
何故か、リヴァルさんは私の性格を分かってるような気がする。
「行くよノルン!」
「ええっ!」
私とノルンで同時攻撃をする。
今度はリヴァルさんも動いた!
「『地斬疾空牙』と『鏡面槍』か、遅いな!」
右手の剣で私の『地斬疾空牙』の始動を払われて防がれ、左手にはいつ出現させたのか、槍でノルンの槍に突きを合わせていた。
曲芸師かっ!と言いたくなるような動きで、私達の攻撃を封殺する。
「くっ!ならこれならどうよ!『千峰槍』!」
ノルンの槍が凄まじい速度で突きまくる!
けど、リヴァルさんはそれを全て槍の先端でぶつけ合う。
「なっ!?」
「軌道が真っすぐすぎるな。それじゃ目を瞑っていても防げるぞ」
あのノルンの連撃を、いとも簡単に防ぐなんて。
「でぇやぁぁっ!!」
私も隙を見て攻撃を仕掛ける。
「『絶刀』か、狙いが見え見えだぞ蓮華!」
キィィンッ!
「くっ!『絶刀』をただの突きで!?」
「お返しだ」
リヴァルさんの薙ぎ払いを後ろに飛んで避ける。
ノルンも一旦後ろに下がり、私と並んだ。
「マジかよ……あの蓮華とノルンが全く歯が立たねぇのかよ……!?」
「ふふ、リヴァルちゃんの強さはあんなもんじゃないよーアーちゃん」
「ええ、まだリヴァルは赤子の手をひねる程度の力しか出していませんね」
「……まさかとは思うんだけどさ、あの人母さんや兄貴より上とか言わないよな……?」
アーネストの質問に、私は聞き耳を立てる。
だって、それはすっごく気になる。
「そうだねぇ、ある意味で私達より強いかもしれないわねぇ」
「フ……そうですね」
「「「!?」」」
その言葉に私は心の底から驚いてしまう。
私にとって、この世界に来て最初から最強なのは母さんに兄さんだ。
ユグドラシルもそうだけど、私にとって二人がずっと尊敬して、追いかけている背中だ。
その二人よりも、強い!?
そんなの、母さんと兄さんが認めても、認めるもんかっ!
「お……蓮華、やる気になったか」
私の魔力の高まりを感じたのか、リヴァルさんは笑う。
「私の目標は、母さんと兄さんだ。二人の背中を見て、いつか追い抜きたいと思ってる。例え母さんと兄さんが認めても、私は認めないっ!」
ネセルをリヴァルさんに向け、お腹に力を入れて叫ぶ。
「レンちゃん……」
「蓮華……」
あれ、母さんと兄さんの瞳がちょっと潤んでるのは気のせいですよね?
「はは!ああ、それで良い!私もそうだからなっ!来い、蓮華!」
私も?いや、今は気にしなくて良い!
「うおおおぉぉぉっ!」
リヴァルさんを狙って、技は使わずに剣を振るう。
唐竹、袈裟切り、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、左切り上げ、右切り上げと、全て同時に防がれる。
いや違う。後から防いで同時なのだから、リヴァルさんの方が速いんだ。
「くっ……!」
「どうした、せっかく二人で攻めてるんだろ?それを生かさないでどうするんだ?」
「!!はぁぁっ!!」
私の攻めを見ていたノルンが戦線に加わる。
剣と槍の同時攻撃を、リヴァルさんは剣と槍を使って難なく防ぐ。
ここまで強いのか……!
「チィッ……ならこれならどうよ!」
ノルンの槍の先に魔力が集まるのが分かる。
「蓮華!私の後ろに『ワープ』しなさいっ!」
「!!了解っ!」
言われたとおりに、『ワープ』を使い後ろへと移動する。
が、そのすぐ後ろにリヴァルさんが同時に現れる。
「「なっ!?」」
「『ワープ』を使えるのがお前達だけだと思ったのか?敵に戦法を伝えてどうするんだ」
凄まじい速度で剣を一閃される。
「きゃっ……!」
「うぐっ!」
私達はリヴァルさんの剣を防ぐが、勢いを殺しきれずに吹き飛ばされ、倒れた。
剣の上からだというのに、凄いダメージを受けて足に力が入らない。
リヴァルさんは剣を下げてはいるが、隙が見当たらない。
ネセルに体重を預けながら、なんとか立ち上がる。
「くっ……つ、強いっ……!」
「……悔しいけど、私達じゃ勝てないわねこれは……」
ノルンがそう言う。だけど……まだ全てを出し切ったわけじゃないっ!
「おっと、そこまでだ蓮華。『ソレ』は今使うな。飲み込まれるぞ」
「っ!?」
ど、どうしてリヴァルさんが、ユーちゃんから教えてもらった秘儀を知ってるんだ!?
「さて、どうだ?私は今基礎体術と剣・槍術だけでお前達の相手をした。先生として、これでも認められないか?」
そう微笑んで言うリヴァルさんに、ノルンは頭を下げた。
「非礼をお詫びします。どうか、私に稽古をつけてください」
強くなる事に真摯なノルンだから、潔いんだと思う。
「ああ、任せてくれ。お前達を必ず強くしてやるさ。今度は、負けないようにな」
後半の言葉はまた小さくて聞こえなかったけれど、母さんや兄さんだけでなく、ここまでの強者に教えを乞えるなんて、幸運だと思う。
さて、それじゃ早速特訓を……と考えていたのに。
「それじゃ、リヴァルちゃんの歓迎会しましょっか!」
なんて母さんが言い出して、アリス姉さんまでもが
「良いねマーガリン!皆でパーティーだね!」
そう言うものだから、断れるはずもなく。
あ、でもこれだけは聞いておかないと。
「えっと、聞きそびれてたんだけど、そのアリス姉さんを更に小さくしたようなその人は?さっき居なかったよね?」
アーネストとノルン以外が皆ビクッとしたのを私は見逃さない。
「あ、あはは!私はアリス!宜しくね!」
「アリス……?」
「そう!アリスだよ!」
「……」
「あ、アリスだよ……?」
「さ、さぁパーティーの準備しなくちゃ!レンちゃん、手伝ってね!」
「あ、うん。でも、アリ……」
「そうと決まれば、善は急げよレンちゃん!」
「うわ!?母さん、引っ張らなくても行くから!」
私の追及は、母さんに引っ張られて出来なくなってしまった。
うん、ちゃんと後で聞くからね?
というか、アーネストとノルンも手伝えー!と視線を送る。
アーネストは両手を頭の後ろで組んで、横を向いて口笛を鳴らす真似をしている。
ノルンに至っては、手伝って良いの!?的な目で見てきたので、料理が壊滅的な事を思い出して私が目を逸らしてしまった。
アーネスト、口笛吹けてないからなっ!
ノルンはごめんっ!
とりあえず、アリス姉さんだけは母さんに引っ張られる時に手を掴んでおいた。
「蓮華さんー!?」
強制連行される私達二人。
リヴァルさんは笑ってた。
うん、美人が笑うと絵になるよね。
なんてどうでも良い事を考えながら、母さんに引っ張られている私だった。




