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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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80話.起死回生の一手

 私の名は、シリウス=ローランド。

 ローランド侯爵家の長女で、王国オーガストのロイヤルガードの一人だ。

 しかしてその実態は、蓮華様の従者に成る事を夢見る乙女だったりする。


 蓮華様の強さに憧れ、その美しさに目を奪われ、その優しさに惚れこんだ。

 そんな蓮華様からの手紙に内心ドキドキしながら読んだ中身は、トキメキとは程遠い内容ではあった。

 だが、蓮華様が私を頼ってくれた。その事が嬉しくて、全面的に協力をする事にした。

 この世界ではなく、他の世界から来たと言う彼らは、話してみればどこにでも居るような、普通の者達だった。

 私とそう変わらない年齢で、話しやすくすぐに打ち解けられた。

 化粧についてとても詳しい玲於奈嬢の事は、思わず師匠呼びしてしまう程だった。

 断られてしまったのは悲しかったが、ナイトメアの事やキメラの事を調べさせている数日の間に、色々と教えて貰った。


 私も城での仕事があるが、同じロイヤルガードの同僚アルスや、王国最強のロイヤルガードであるグルヴェイグ様から、蓮華様の依頼があるのなら、そちらを優先して良いと言われている。

 理解のある同僚で嬉しい。


 それから、私の部隊の者達ですら街におかしなところは見つけられなかった。

 情報もこれといって無く、途方に暮れた。

 なので一応、キメラが出た場所も調べてみる事にした。

 ここでも何もなければ、少なくとも王都では何も行われていなかったという事になる。


 しかし、事態は変わる。

 玲於奈嬢が、オーブの安置されている間で不可思議な事を発見したからだ。

 私には、何の変哲もない蝋燭にしか見えなかった。

 だが、玲於奈嬢は違いを発見し、隠し階段を見つけてしまったのだ。

 この事実は、王国内部に裏切り者が居る事に他ならない。

 言葉少なく、階段を降りる。

 私は国家の裏切り者をあぶりだす為に、皆にここで捕まえる事を提案した。

 快く受諾してくれたので、私達はここで隠れて待機する事にした。

 そう時間が経つ事も無く、男が階段を下りて行く。

 私達はばれないように追う。すると男が魔物をどこかから取り出し、その魔物が消えたと思ったら、新たな魔物が出現した。

 あんな呪法を私は知らない。

 間違いなく国家を脅かす事態だ。

 ここで捕まえ、吐かせなければならない。

 そう思っていたら、後ろから突然声を掛けられる。

 気付いた時にはすでに遅かった。

 照矢殿が倒れ、人質に取られてしまった。


「ご安心をご安心を。なーに、簡単な契約でございます。レンゲ=フォン=ユグドラシルの肉体を、ここへ持ってきてほしいのですよ。ただ、それだけでございます。それで彼を解放すると約束致しましょう。勿論、貴方達に手を出す事も致しませんとも」


 この悪魔は今、なんと言ったのか。

 蓮華様を、差し出せ、だと?

 はらわたが煮えくり返るのを何とか抑え、声を絞り出す。


「そんな事を認めると思ったか悪魔め」


 私は剣を抜いた。いくら照矢殿が人質に取られているとはいえ、この人数差で掛かれば勝てるはず。

 そう思っていたのだが、ミレイユ嬢はそう思ってくれなかったようだ。

 シャイターンと名乗った悪魔に背を向け、私の方に向き合った。


「すまぬ。その悪魔は、恐らく妾でも倒せぬ。じゃから、お主を今は……倒させてもらう。シャイターンとやら、この者の命まで取れとは言わぬな?」

「ククッ!勿論でございますとも。私は悪魔ですから、こういう展開は大好物でございますからして。良いですねぇ、楽しいですねぇ」

「チッ……マジでやンのミレイユ」

「……今は、従って欲しいのじゃ、レオナ」


 玲於奈嬢も悩んだのだろう。頭を掻いた後に悔しそうに、私の方を向いた。

 敵として、認識を変えたのだろうな。


「すまねぇシリウスサン。兄ちゃんを助ける為に、今は敵対させて貰う」


 私の背には、敵がまだ居るが……どうやら傍観するようだ。

 目の前のミレイユ嬢、玲於奈嬢、ハルコ嬢を見る。

 む……?何か、誰か一人忘れているような……私達は5人、だったか?

 頭を振る。今は雑念を捨てるべきだ。

 彼女達は強い。それは訓練の時にも分かっている。

 ロイヤルガードの称号を得た私は、蓮華様の強さに一度は折れた。

 しかし、より強く、熱く、私の剣は再度磨かれた。

 全ては、蓮華様に追いつく為。

 今までの修練よりも厳しい修練を毎日繰り返してきた。

 蓮華様に、強くなったねと笑いかけてほしくて。ただ、それだけを望んで。

 そんな蓮華様を要求したこの悪魔を、私は許さない。

 剣を構え、口上を叫ぶ。仲間と思った者に剣を向けるのだ……気合を入れる為に、お腹から精一杯の声を絞り出す。


「我は王国オーガストのロイヤルガードが一人、シリウス!参るっ!」


 私の横薙ぎの剣を、玲於奈嬢は受け止める。

 蓮華様に、私の剣はまっすぐすぎると言われてから、色々と工夫をする訓練をした。

 その剣技の一つが、これだっ!


「防げるか玲於奈嬢!『ラピッドムーブ』!」

「うぉっ!残像かっ!?」


 凄まじい速度で動き、斬りまくる単純な技だが、避けるのは至難だ。

 しかし、玲於奈嬢は一刀の元に技を放ち、私の動きを止めた。


「『ギガスラッシュ』ってな。すげー速さで残像が出てるだけなら、本体は一つじゃン?」


 私はこんな時だというのに、微笑んでしまう。

 抜群の戦闘センス。玲於奈嬢のような部下が居たら、どれだけ楽しい毎日になった事だろう。


「そ、それ!『クリムゾンエッジ』!」


 瞬間、ハルコ嬢による火の刃が飛んでくる。

 後ろにバックステップで避けると、追いかけてきた。


「追尾式、です!当たると痛いですよ!」

「なら、切り払おうっ!」


 愛刀で向かってくる火の刃を一閃する。

 ボシュッという音ともに、火の刃は掻き消えた。


「ひんひんっ!?魔法を剣で消すとか、この世界の人どうなってるんですかー!?」

「いや、割とそれ出来る人多いじゃン……」


 玲於奈嬢が冷静に突っ込んでいるが、私も蓮華様の事がなければ、出来たかどうか分からない。

 努力は、私を裏切らない。


「良いですねぇ、面白いですねぇ。貴女は戦わないのですかぁ?」


 シャイターンがミレイユ嬢にそう言う。

 私は二人を睨む。すると、ミレイユ嬢は溜息をつきながら、答えた。


「そうじゃな、もう確保は済んだかスラリン?」

「はーいー。テリー様はもう大丈夫ですよー。私が魔素を食べておきましたからー操られる事もありませんー」

「「「「「!!」」」」」


 なん、と。そうか、誰かを忘れていると思っていたら、スラリン嬢だったか!


「すまぬなシリウス。敵を騙すには、まず味方からと言うじゃろう?気取られぬように、従う振りをしておったのじゃ」

「おま、そういう事は先に言えよ!?私思いっきりシリウスサンに敵対しちゃったじゃン!?」

「ひんひん!私もですよう!」

「いや、お主ら演技下手そうじゃからなぁ……」

「「うぐっ!」」


 言葉に詰まる二人がおかしくて、私は笑ってしまった。


「ははっ。そうか、良かった。シャイターン、形勢逆転だな」

「これはこれは。ええ、ええ。驚きました。まさか貴女、魔王クラスの力をお持ちとは。いえいえ、これは私が相手を見くびりすぎておりましたねぇ。スライムに擬態した魔王とは、いやはや……これは一本取られました」

「……貴方、ムカつきますねー」


 照矢殿を覆っていたスラリン嬢が、人型と成る。

 最初に見た時は透明だったのが、今は本当の人のように見える。


「私、この世界の者じゃないんですよー。だから、見逃してあげようかと思ってたんですけどー……テリヤ様を餌にするつもりでしたねー?それはちょっと、いえかなり腹が立ってるんですよねー」


 スラリン嬢から、凄まじい魔力が吹き荒れる。

 この力は……!?


「ローズ、抑えよ。ここでお主が全力で戦えば、遺跡が潰れる」

「でもミレイユ様ー」

「いやはや、これは凄まじい。貴女方の様な素晴らしい者達に出会えたのは、収穫でございました。マサト、ここは放棄しますよ。構いませんね?」

「ああ。データはとれたし、カードに戻したから問題ない。ここにあった本はもう必要ない」

「それは僥倖。では皆様方、今日はこの辺で失礼いたします。また、お会いしましょう。その勇者様にも、よろしくお伝えくださいませ」

「「!!」」

「逃がすかっ!」


 急ぎ駆けるが、『ワープ』を使われたようで追いつけなかった。


「くっ!」


 逃げられてしまったか。


「この世界には、恐るべき力を持つ者がいるのじゃな。これは中々に厄介な者に目をつけられたやもしれぬ」

「ミレイユ様、テリヤ様の事を誰も話していないのに、シャイターンは勇者と言いましたねー。つまり……」

「うむ……」


 色々と話したい事が増えてしまったが、ひとまずは。


「皆、照矢殿を頼めるか?目を覚ましたら、一旦家に帰ろう。この場所の事も王に伝えねばならないし、先程の事もあるからな」

「ン。その、シリウスサン。ゴメン……」

「ごめんなさい、シリウスさん……」


 玲於奈嬢とハルコ嬢が頭を下げる。

 しかし、大事な兄を人質に取られたのだから、仕方がないと理解している。


「それを言うなら、私はお前達の兄を見捨てたと言って良い。罵倒される事はあっても、謝られる事はない」

「ンな事ねぇよ!シリウスサンは、兄ちゃんを見捨ててなンかねぇ!」


 玲於奈嬢の言葉に、私は心が軽くなるのを感じた。


「ありがとう玲於奈嬢。私を信じてくれて」


 それから私達は、この場所の物をアイテムポーチに入れ、あの者達に再度利用される事はないだろうと、とりあえず破壊はしない事にした。

 これから、王国をあげての調査が始まるだろう。

 蓮華様にも、この事を伝えねば。

 どう手紙を書こうかと、少し胸をときめかせながら……私達は帰路についた。

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