62話.せん○も病気には効かない
母さん達は夕方には帰り(物凄く残りたそうだったのは気のせいじゃないと思う)レオン君とリタちゃんをレヴィの元へと帰した。
二人とも楽しそうにしていたから、良かった。
アスモはもう少しの間、レヴィの元で補佐してくれる事になった。
アーネストの一言が効いたようで。
「アリシアのお蔭で領が上手くいってんだろ?すげーじゃん」
アーネストの何気ない一言で、アスモが滅茶苦茶やる気を出した気がする。
その日は私とノルンも病院で泊まる事にした。
魔界での事や、皆の学園での事、色々と話していたら夜遅くになってしまった。
翌日、病院を正式オープンした。
昨日イシスちゃんが治療したロダンさんとヒルデさんが、何か手伝えることはないかっていの一番に来てくれた。
まだ開業したばかりだし、気持ちだけ受け取っておく事にした。
二人は、病院の事を仲間に広めますねって言ってくれた。こうして街の人達が少しづつ協力してくれたら、皆に浸透するのも早いと思う。
それから、流石に最初から人が一杯来るって事は無かったけど(怪我を治す為の病院に人が一杯来るのもどうかもしれないけれど)子連れのお爺さんやお婆さんが噂を聞いて来てくれた。
子供達にはおもちゃや本を読めるスペースで自由にしてもらった。
お爺さんやお婆さんは怪我をしたから来たと言うわけじゃなく、腰が痛いだったり、元の世界でも良く聞く症状で来ていた。
光属性の回復魔法では、怪我は治せてもそういうのは治せない。
日属性の回復魔法は、傷ではなく体力を回復させられるけど、どうだろう。
ポーションにも種類がある。
傷や魔力を回復する光属性系のポーション。ただ、こちらは失った体力や精神力までは回復してくれない。魔法と同じだね。
その体力や精神力を回復してくれるのが、日属性系のポーションだ。
今回集まってもらったメンバーは、光属性を扱える人達と、日属性を扱える人達だ。
両方使えるって人は3人ほどしかいないけれど。イシスちゃんも日属性の魔法は扱えない。
ミアちゃんが日属性の魔法を扱えるみたいだけど、できるだけポーション系の製作に注力してもらいたいからね。
手が空いたら手伝って貰うのも良いかもしれないけれど。
ミアちゃんには地上でも流通していないスタミナポーションのレシピを伝えた。
流石の腕前で、私が作るスタミナポーションよりも上等だった。
「ミアちゃん、凄いよ!」
「そんな、蓮華様の方が……」
「いやいや、鑑定してみてよ。私のスタミナポーションは普通だけど、ミアちゃんのスタミナポーションはかっこして上って成ってるでしょ?」
「あうぅ……でもでも、蓮華様の方が凄いです!」
「えぇぇ……」
このミアちゃんの信頼が凄い。私より確実に上なのになぁ。
「と、とにかく。この品質なら皆に出して大丈夫だね。そうだミアちゃん、お爺さんお婆さんが腰が痛いって来るのには、どんなポーションが良いと思う?」
「うーん、そちらは腰まわりの筋肉や関節が衰えて、こわばって柔軟性が失われることが原因ですから……」
「そうだよね……というかミアちゃん詳しいね」
「あ、はい。私のお母さんが、薬学に詳しくて……手伝っているうちに自然と、そういう事も勉強できたんです。あの、ユリィ君とか、よく怪我をして……私が錬金術が出来る前は、ハーブとか薬草で治していたんです」
「へぇー」
成程なぁ。ユリィ君も昔はやんちゃだったって事だね。今もかな?
「えっと、話を戻しますね。痛みを和らげる事は出来ますが、魔法の効いている間だけになっちゃいます。根本の加齢とともに腰まわりの筋肉や関節が衰えていくのが治せないと、どうしようも……」
仙豆も病気には効かなかったよね?
あれ?腰痛って病気じゃないよね?あ、でもヘルニアは病気だっけ?
うーん、記憶が曖昧だ。私はまだ腰痛に悩まされる年齢じゃなかったし……。
ただまぁ、骨を若返らせるとか、根本を治す事は大精霊の力を使えば可能かもしれない。
でも、それをしてしまって良い物かどうか。それに治療が出来るのが、大精霊の力を直で扱える私だけになってしまう。私は病院に常駐するわけじゃないし、偶々誰かを治した事で、私が居ない時に治してくれない、なんて事になっても困る。
皆が使える治療法なら良いかもしれないけれど、特定の誰かしか無理な治療は、しない方が良いだろう。
「なら、痛みを和らげる事にしようか。それも、治るわけじゃないと伝えて、また痛みが我慢出来なくなったら来てくださいって伝えるようにしよう」
「はい。それが良いと思います。お薬として、何日分か出すのも良いかもしれませんね」
「あー、なら誰に何を出したかとか、こちらで把握しやすい物を作るのが良いね。お薬手帳とかどうだろう?」
「お薬手帳、ですか?」
そう、元の世界でもあった。他の病院や診療所にかかった時に、この手帳を医師に見せることで薬の重複などを避けることができたはず。他にも外出時に急な事故にあった時、この手帳を携帯する事でいつも服用している薬の内容が分かり、医療機関による救急救命処置が円滑に行いやすくなるとかだったかな?
まぁこの場合は次回に来た時に、何を出したのかすぐに分かるように、だね。
理由を説明して、それをノルンにも伝えた。
すぐに採用になったので、皆に説明して、次から受診する人に無料で作る事にした。
時折ギルドから冷やかしに来る人達も居て、そんなに忙しくないので、軽く談笑していた。
学園の生徒達は初めて話す人達ばかりなので、顔見せもかねて皆で話す事に。
皆を守る為に警護で居る騎士の皆も、今はのんびりしている。
ギルド職員さんも時々こちらに来て、皆と会話を楽しんでいた。
少しの間、様子を見る為に私も居たけれど、闇の大精霊の元にレニオンと一緒に行く予定があるので、後の事はノルンに任せる事に。
「任せて良いから、さっさと契約してきなさい」
いつも通りツンとすましてそう言うノルンに頼もしさを覚えながらも、私はユグドラシル領へと戻る事にした。
レニオンが待っているだろうからね。




