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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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61話.暗躍は上手くいかないという事

 ギルドとの交渉は驚くほどあっけなく終わった。

 というのも、新生シャイデリアギルドの職員達が全員協力的だったからだ。

 まぁ、アンジェさんに派遣されてきたからってのもあるんだろうけど……。

 受付嬢のマチルダさんも、ギルドマスターが新たに配属される事になって喜んでいたよ。

 依頼についてはギルドマスターが配属されるまでは、代理でマチルダさんが取り扱ってくれる事に。

 受付嬢がそんな事までするの?と思ったのだけど、魔界のギルドの職員は、大抵自分でなんでもできる権限があるらしい。

 なので、依頼の取捨選択すらも職員が自由に行っているのだとか。受付嬢とは……。

 そこら辺もギルドマスターが来たら、色々と変わってくるかもしれないけど。

 後、近々ダンジョンの配信も再開するらしい。ギルドの右奥の大部屋には、四角形のテレビの様な形をした物が複数天井に吊るされている。

 テーブルと椅子がたくさん並べられていて、食べ物や飲み物を販売していたであろう場所もある。

 一度見てみたいとは思うけどね。


 ギルドでの話も一段落したので、到着したばかりの皆には、今日は一日自由に過ごしてもらう事にした。

 私はと言うと。私とアーネスト、母さんと兄さん。それにノルンとアスモ、レオン君とリタちゃんを加えて、街を周る事にした。

 冒険者に戻ってもお店を継続している人や、お店は家族に任せた人も居て。

 色んな人達と雑談をかわしながら、病院の事もさりげなく宣伝しておいた。

 皆、蓮華さんがそう言うなら……という感じで、半信半疑ながらも話を聞いてくれた。

 けどやっぱり、全体の印象として、光魔法にはあまり好意を持てない感じだった。


 アーネストはアスモと一緒に、病院に必要な備品やあったら便利な物とかを買い漁っていた。

 お金は私とノルンとで出しあって、とりあえず1000万ゴールド程資産として計上している。

 何を始めるにしても、お金が無いと始められないのは世知辛い所だね……こんな所まで元の世界に似なくても良いと思う。

 まぁ、家にお金掛かってないし、土地代やらなんやら払ってないので、元の世界より大分緩いんですけどね。


 アーネストは疲れきっていたけど、アスモが楽しそうだったから、微笑ましかった。

 私は私で、母さんと兄さんと久しぶりに買い物できて楽しかったし。レオン君にリタちゃんも、色々な物を珍しそうに見ていた。

 食べやすい棒型のアイスキャンディーが売っていたので、全員分買って歩きながら食べたよ。

 昔はバニラやチョコレートが好きだったけど、今回はストロベリーにした。

 アーネストはチョコレートにしていたけど、お互いにバニラだけは何故か選べなかった。うん、何故だろうね……。


「なんでアンタ達、白アイスだけは目を逸らすの?」


 私とアーネストは、ノルンのそのセリフに同時に目を逸らす。

 ちなみにバニラって私達は言うけど、バニラアイスクリームの事を白アイス、チョコレートアイスクリームの事を黒アイスと呼ぶ。

 なので、ノルンが気付かないのは仕方ないと思う。


 そうして買い物を楽しんで、街の入り口らへんに来た時に、それは起きた。


「がはぁぁぁぁっ!!」

「大げさだなぁ。大丈夫、それくらいじゃ死なないよ。ちゃんと手加減はしてるから」


 そこには、背中を斬られて吹き飛ばされた男性が倒れていた。

 腕には、女性を守るように抱きしめて。

 それを見て、私は『ワープ』を使い彼らの前に出ていた。


「へぇ、やるの?」


 いきなり現れた私に驚く事も無く、そう言った。

 おぞましい漆黒のオーラを感じる。

 これは魔力じゃない。凄まじい量の黒いオーラが、目の前の男から溢れ出ている。

 気付けば、ノルンも横に来てくれた。


「ノルン、その人達を」

「分かったわ。気をつけなさい蓮華。そいつ、この世界の者じゃない」

「!!」


 目の前の男から視線を外さず、見据える。

 どことなく、照矢君達のような雰囲気を感じる。

 けれど、その内から感じる力が違う。

 照矢君や玲於奈ちゃんは、体の中から光を感じた。

 けれど、目の前の男は……どす黒い何かを感じる。


「ふぅん?俺の束縛の魔法を無効化してるのか。そういう耐性があるって事か……?」

「束縛の魔法って、最初に私に話しかけた時に掛けてきた魔法か?」

「!!へぇ……どうやら、他の雑魚とは違うようだね」


 肌にチリチリと嫌な感触が離れない。

 こいつは、強敵だと分かる。

 うん、分かってた、んだけどね?


「私達の目の前で、レンちゃんに殺気向けるとか……良い度胸ねぇ?」

「全く……度し難いですね。蓮華に対して呪術を使うとは……死ぬ覚悟は出来ましたか?」

「え……ぐふぉぉぉっ!?」


 母さんと兄さんが、何かした。

 目の前の男が、一瞬で浄化してしまったんですけど。

 まだ、名前すら聞いていない。

 間違いなく、強者だったと思うんだけど……。


「良い気分が台無しね。レンちゃん、もう一度回ろうよー」

「それは良い考えですね。影に隠れていた者も、アーネストが片づけたようですし」


 見れば、アーネストとアスモが何かを引きずって来ていた。

 どうやら隠れた場所に何人か居たみたいだ。

 ってそれよりも、さっきの二人を!


「ノルン!その人達は!?」


 男性は背中の傷が酷い。

 女性に関しては、腕がもう……それに、左肩から右腰にかけてざっくりと斬られていて……酷い傷だ。


「すまないヒルデ……すまない……!」

「だい、じょうぶだから……最後まで、守ってくれて……ありが、とう……ロダン……」


 涙を零しながら、ヒルデと呼ばれた女性を抱きしめる。

 あそこまで深い傷を負ってしまえば、ポーションでは治せない。

 それが分かっているからか、騒ぎに気付いて集まってきた皆の顔は暗い。

 分かっているんだ、もう助からないと。

 でも、それは昨日までならだ。

 今日からは、違う!


「皆、少しだけ待っていて!助けられる人を、連れてくる!」


 私は大声を出してそう言う。皆が驚いた顔をしていたけれど、気にしてる時間はない。

 急いで『ワープ』を使い、病院へと戻る。

 それからイシスちゃんの元に行き、事情を手早く説明して戻ってきた。


「これは酷い……今、治しましょう」

「お願い、イシスちゃん……!」

「はい蓮華様。聖なる光よ、この者達の傷を癒したまえ……『リヴァイバル』」


 イシスちゃんから温かな光が生まれ、二人を包み込むように光が移動する。

 光に触れられた傷跡が、嘘のように無くなっていった。

 周りの皆が、信じられないといった目で見て、驚いている。


「ふぅ……これでもう大丈夫。腕は、動きますか?」

「痛く、ない……それに……動く……動きます!あぁ……!ありがとう、ありがとうございます……!」

「ヒルデ……!ありがとうございます!ありがとうございます……!俺はもう、駄目かと思って……死を受け入れていたのに……!貴女様は命の恩人だ、お名前を是非お聞かせください……!」

「治ったのでしたら、良かった。私はイシス。イシス=ロックバインと申します。蓮華様に怪我の治療をする病院を運営する為に力を貸して欲しいと言われ、本日より参りました。これから、宜しくお願い致します」


 貴族の女性らしくカーテシーをするイシスちゃん。

 その姿は本当の聖女様のようで、素敵だった。

 さりげなく、病院の宣伝までしてくれて。

 皆から拍手と、凄い歓声を受けた。

 母さんと兄さんなら、多分すぐにでも治せたと思う。

 だけどそれをせず、私達を信じてくれた。

 二人の力を借りなくても、私達でなんとかできるという姿を見せれて、良かったと思う。


 それから、何があったのかアーネストとアスモが捕まえた人達から聞こうとしたら、魔物化した。

 どれも一瞬で二人が片づけてしまったけれど、結局話は聞けずじまいで。

 なんとなく、リーダーっぽい奴も母さんと兄さんの琴線(きんせん)に触れたようで、一瞬で消されてしまったし。

 二人に聞いたら、突然襲い掛かってきたそうなので、悪い奴確定だし同情はしない。

 魔物化という事は、ナイトメアが関わっているかもしれない。

 そうすると、何故こんな事をしたのかがよく分からないけれど……。


 一波乱あったものの、病院の事をちゃんと広められた一日となったのだった。

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