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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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56話.大精霊・レニオン『後編』

 再度天空城の近くに着いた。

 着いたと言うか、空の上だけど。

 ただ、最初に来た時と違って、なんかこう……完全武装形態と言いますか。

 城を凄い壁が覆ってる。そして、その周りを凄い数の何かが飛んでる。


"どういう事なのこれ"

"どうやら、警戒されているようですね"


 もしかして、また来るねって言葉を、侵略するねとでも取ったのだろうか。

 いやいや、そんなわけ……


『しょうこりもなくまた来たのね野蛮人!私とこの【ユートピアパラダイス城】を奪いに来たんでしょう!?そうはさせないわ!』


 スピーカーから聞こえてくるような、大きな声がした。

 まぁ、周り何もないし、私の他に聞こえてるのは妖精さんくらいだろう。

 というか、濃い名前の城だったんだね……なんていうか、聞くだけで楽しそうな城だ。

 現実は、黒光りした2丁の砲台が所狭しと並んでいて、その全てが私に向いているという、パラダイス(楽園)よりもヘル(地獄)なんですけども。


「えっと、話を聞いてくれないかな。私は君と契約というか……話をしに……」

『契約!?そう、そういう事ね!私を奴隷にして、言葉にはできないあんなことやこんな事をっ……!ひぃぃっ!?』


 うん、これ無理。

 この子、被害妄想が酷過ぎる。


『そんな事させない、絶対させないんだからっ!全砲門、侵入者を討てぇっ!!』


 レニオンの言葉と共に、一斉に銃弾が放たれる。

 だー!要塞じゃないんだから!?

 撃ち続けられる銃弾を、全て回避していく。

 なんとか避けられるけど、これじゃ城に近づけない!


"蓮華、当たってもそんなに痛くないかもしれませんよ?"


 え、そうなの?それじゃ、ちょっと当たってみようかな?


 ガガガガガガガガッ!!


「いだだだだだだっ!?」


 動きを止めたら、集中砲火を受けた。

 凄まじく痛い。


"……痛かったみたいですね"

"ユグドラシルゥー!!"


『そんなっ!?光の力を存分に込めた弾丸なのよ!?あれだけ直撃して、まだ倒れないなんて……化け物!?』


 酷い言い草だ。これ、普通の人じゃ死んでるよ本当に。


"それでは蓮華、少し変わりましょうか。お手本を見せてあげましょう"

"うぅ、最初からそうしてよ。これじゃ私痛い思いしただけだよ……"

"ふふ、ごめんなさい。その代り、確実にレニオンと会話させてあげますから"


 それから、私の意識は奥へと沈む。

 自分の体の奥深くへと。


『なっ!?貴方、髪の毛の色が変わるとか、スーパーなんちゃらなの!?』


 ん、んん?レニオンからおかしな単語が聞こえたぞーう。


「さて、今の私は加減が効きませんから。少し壊れても、撃ってきた貴女が悪いですからね?」

『ひっ!?』


 ユグドラシルから、凄まじい殺気を感じる。

 いや中に居て感じるっていうのも変かもしれないけど、証拠にレニオンの声が本気で震えている。


『う、撃て、撃てぇっ!そいつを近づけるなぁっ!』


 再開する砲弾の嵐。

 けれどその凄まじい数の銃弾が、ユグドラシルに当たる直前で止まった。


「術者がそんなに離れていて、コントロールを奪われるとは思わなかったのですか?さぁ、返しましょう。被害が出ても、自業自得ですよ?」


 ニッコリと笑うユグドラシルが、自分の周りの銃弾を全て反射したように見える。

 ドゴンバゴンと城の外壁が崩れていく。


『いやぁぁぁっ!?私の【ユートピアパラダイス城】がぁっ!?』


 うん、叫んでるのは分かるんだけど、名前のせいでそこはかとなく真面目に思えないのはなんでだろう。


『や、やめてっ!降参、降参するからっ!これ以上私の友達を苛めないでっ!』


 友達?


"ユグドラシル、そこまでにして貰って良い?"

"ええ、構いませんよ。ただ返しただけですけどね。蓮華にそれだけの攻撃をしていたのですよ?それを自覚させてあげただけです"


 なんというか、ユグドラシルも母さんや兄さんみたいに、過保護な気がしてきたんだけど。

 というかそれなら、最初になんで受けさせたのか。

 考えていたら、城のシェルターが解除され、中身が出てきた。

 最初に見た、綺麗な城だ。

 庭園の真ん中に、レニオンが立っていた。

 その顔は泣いている。私は、というかユグドラシルは、その場に降り立った。


「レニオン、私はユグドラシルです。話を聞いてもらえますね?」

「は、はい、お母様。お母様だとはつゆしらず、失礼を致しました……」


 へ?お母様?


「ああ、その子から聞いたのですね?」

「はい。その方だけでは、半信半疑だったそうです。ですが、ユグドラシル様が表に出た事で、確信したとの事でした。この度は失礼な真似をして、大変申し訳ありません……」


 ど、どういう事?話が全然見えない。


「蓮華、天空城は生きている意思ある城なのです。その命は、大精霊・レニオンが誕生するよりも前から。ですので、私の事も当然知っています。私の事を、レニオンに伝えたのでしょう」


 そういう事か。


「えっと?」

「私の、というよりは……この体の本来の持ち主に説明したのですよレニオン。それが、蓮華です」

「で、でも、男って……」

「レニオン」

「は、はい……」

「話をしてみなさい。そうすれば、貴女の思う男との違いが、分かるはずです。貴女の知識は偏っていると言わざるをえません。それを、蓮華と話をして改善しなさい。でなければ、大精霊の座を他の者に変えなければならなくなります。これは脅しではありませんよ」

「はい……」


 ユグドラシルに説教を受けて、レニオンは沈んでしまっている。

 でもきっと、レニオンがそう思うようになった理由があるはずなんだよね。


"それでは蓮華、後は頼みますね。レニオンも元は素直で良い子なんです。お願いします"


 そう言って、私が表に出る。


「っ!!」


 ビクッと体を強張らせるレニオンに、出来る限り優しく声をかける。


「えっと……どうして、そんなに男性が嫌いなの?」

「……ついてきて」


 そう言って城の中へ入っていくので、後ろに続く。

 あんまり近づくのもあれなので、少し距離を開けて。

 それからしばらく進んだら、扉の前についた。

 重々しい扉だ。なんというか、玉座の前というか、そんなイメージを受ける。


「ここよ。ここに、全てがあるの」


 ごくりと喉をならす音が聞こえた。

 ギィィッと扉が開いて、中に入る。

 そこには、大きなタンスがズラッと並んでいて、凄まじい数の本が並べてある。


「ここは?」

「聖典を置いてるの。手に取って読んでみて」


 言われたとおり、適当に一冊手に取る。

 ラノベとか漫画は好きだけど、ずっしりと分厚い本って苦手なんだよなぁって思ったら、あれ?なんだか一冊一冊は凄く薄い、ような?

 パラッとめくると、そこには男性と女性がいたしてるシーンが。


「っ~!?」

「ね?」


 ね?じゃないからっ!これはいわゆる薄い本(同人誌)じゃないかっ!


「そこに全てがあるの。男なんて、男なんて……!」


 ちょっと待って。もしかして、ここにある本全部?いやまさかそんな。


「え、えっと。色々と言いたい事はあるんだけど、ここにある本、全部こんなんだとか言わない、よね?」

「当たり前でしょ」


 そりゃそうだよね。良かった、全部そうだったら……


「向かいの部屋にだってあるんだから。その奥はもっとハードなのを集めてるわ。そこら辺は比較的純愛物よ」


 ……。


「ねぇレニオン、そこに正座」

「え?なんで……」

「正座」

「は、はい」

「いい、レニオン。こういう本はね、内容は作り話なの。妄想で出来てるの。現実でこういう事をしてる人なんて、ほとんどいないから、オーケー?」

「う、嘘よ!皆頭の中がこうなら、現実だってこうに決まってる!」

「そんなわけないからっ!皆現実と妄想の違いを楽しんでるだけだからっ!」

「それじゃ、王族と平民の恋愛ストーリーは嘘だと言うの!?」

「い、いや、それはあるかもしれないけど……」

「そうでしょう!?」


 うぐぅ、この子の説得を私にできるのか……。

 それから数時間、あーでもないこーでもないと、本の話で盛り上がってしまった。


「ふぅ。蓮華、貴女の魂は男かもしれないけど、認めるわ。その心は女性よ。それに、器は女性なんだから、何の問題も無いわ。契約だったわよね、蓮華なら良いわ。私とここまで本で語り合えた貴女が、私は気に入ったもの」

「そう、ありがとう……」


 ぐったりしている私は、力なく答えた。

 レニオンが凄まじい勢いで本の内容を語るので、後半は聞いていただけだった。

 けれど、そのどの話も、好きだというのが伝わってきて。

 ただ、その、良い子が見れない話も好んでいて、その話を振られるたびに反応に困った。

 その話に出てくる男が、それはもう下種で屑な奴で、そりゃそんな話ばかり読んでたら、嫌になるとは思ったけど。

 でも、それはお話の都合上仕方なく作者も出してるんであって、全ての男性があんなんじゃないと説明するのが非常に大変だった。

 だからこの次に、私の片割れであるアーネストと会わせる事を約束した。

 あいつなら、男だけどレニオンも心を開きやすいんじゃないかな、と思う。

 また、私が読んだ事のある面白い本も、紹介しようと思う。


「レニオンは男が嫌いだから、この城に?」

「ううん。私はピアと……あ、【ユートピアパラダイス城】の事なんだけどね。ピアと友達だから。一緒に居たいと、思って。やっぱり変、かな?」


 そう不安げに聞いてくるので、笑顔で伝える事にした。


「そんな事ないよ。友達と一緒に居たいって、普通の事だよ」


 私はその普通が普通じゃないとよく言われるけど、これは普通だよね?若干自信がなくなってきつつある私なんだけど。


「……うんっ!」


 可愛い笑顔でそう返事してくれるレニオンに、間違ってなかったと思う。

 もう少し、ここでのんびりしていくかな。

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