表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

280/714

55話.大精霊・レニオン『前編』

 翌朝。不可視の天空城を見つける為の古代魔法、『インビジブルアイ』を母さんから教えて貰った。

 これは視えない物を視る事が出来るようになる魔法で、例えばダンジョンとかで、対策をしていないと壁にしか見えない場所が、ちゃんと通路に見えるとかだね。

 魔力の消費も大した事が無いようなので、常時発動させても問題ない。姿を隠す魔法も、この魔法を使っていれば視えるんだって。

 場所は常に浮遊しながら移動してるらしく、母さんにも正確な場所はつかめないらしい。


「それじゃ、今度こそ行ってくるね!」

「うん、気を付けてねレンちゃん」

「蓮華、疲れたなら帰って休憩するのですよ。何も急ぐ必要はないのですから」


 母さんと兄さんに返事をして、空へと舞い上がる。

 かなり高い位置まで飛んだけど、まだ世界樹の頂きは見えない。

 このどこまでも高く、見上げるほど大きな樹が、ユグドラシルなんだよね。


"蓮華、どうしました?"


感慨に耽っていると、珍しくユグドラシルから声を掛けられた。


"うん、ちょっとね。大きいなぁって思って"


 ここから、世界を見守っているんだよね。


"そうでしたか。それよりも、大精霊・レニオンの居る場所なら分かりますよ。案内しましょうか?"

"ホント!?それならお願い!"

"ふふ、分かりました。では、まずはまっすぐに……"


 そうしてユグドラシルに案内して貰いながら、空を飛ぶ事2時間程。

 ついに、私は空に浮かぶ大きな城を見つけた。


「おぉぉぉっ……!」


 凄い、城が浮かんでる!

 そりゃ魔法がある世界だし、飛んでてもおかしくは無いんだけど!

 それでも、元の世界の常識を知る身としては、空を飛ぶ城にはなんていうか、憧れがあったりして。

 城の外周に近づいてみたけれど、攻撃とかはされなかった。

 城から銃とか大砲が出てきて、問答無用で攻撃されたら困る。

 城の外周に降りた場所は、庭園のようだった。

 色とりどりの花が咲いていて、とても綺麗だ。

 少し庭園を歩いて回っていたら、たくさんの小さな人型をした……妖精だろうか?まぁ妖精と思おう。

 その妖精達が、私の周りに集まってきた。


『ニンゲン、チガウ?』

『セイレイ、デモナイ?』

『イイニオイ、イイニオイ』

『アナタノ、オナマエハ?』


 一気に質問されたので、一つ一つ答えていく事にした。


「えっと、私は人間でも精霊でもないかな?私の名前は蓮華。蓮華=フォン=ユグドラシル」


『ユグドラシル!ユグドラシル!?』

『メガミサマ?メガミサマ!』

『ダカラ、ココチイイ!』


 妖精達がカタコトで同じ単語を繰り返す。

 とても可愛らしいけれど、これだけ集まって言われると姦しいね。

 そんな時、とてもよく透き通る声がした。


「騒がしいと思ったら、珍しい客人が来ているのね。貴女、誰?」


 その姿に言葉を失った。

 だって、服装が……真っ白で統一されていて、スカートは膨らんでいる。靴は厚底のワンストラップシューズ。俗に言うゴシック・アンド・ロリータだったから。

 髪は綺麗な金髪で、あれどうやってするんだろう、と毎回不思議に思っていた縦ロールが良く似合っている。

 身長はアリス姉さんくらいだろうか。小柄で、とても可愛らしい少女だ。


「ねぇ、聞いてるのだけど?」


 おっと、じっと見つめていたら駄目だよね。


「初めまして。私は蓮華=フォン=ユグドラシルと言います。今日は、レニオンさんと契約をしに来ました」

「ユグドラシル?という事は、近頃精霊達が話題にしていたのは貴女なのね。そう、私が光の大精霊、レニオンよ。よろし……っ!?」


 私に手を差し出そうとして、突然ビクッとするレニオン。どうしたんだろう?


「あ、あれ?どうしてかしら。何故か貴女に触れようとすると、拒絶反応が……そんな、ありえないわ。だって、こんなに綺麗で可愛い女の子なのに、そんなわけ……」


 そういえば、母さんがレニオンは潔癖症だと言ってたなぁ。

 昨日の寝る前にちゃんとお風呂に入ったし、今日も行く前に身嗜みは整えてきたんだけど……消毒とかしておいた方が良かったのかな?


「えっと、レニオンは潔癖症、なんだよね?だから、消毒液とかで手を洗ってないからかな?ごめんね。潔癖症って病気なんだよね?」

「ち」

「ち?」

「ちっがーう!私は潔癖症なんて病気じゃないわよ!?そんな事を言った奴はマーガリンね!?あんのババアー!」

「ば……!?」


 凄いな、あの綺麗な母さんをババアなんて言う人、いや人じゃないけど、初めてだよ。


「私は男が嫌いなだけなんだから!本能が刺激されるくらい大嫌いなの!近くに居たら虫唾が走るのよ!」


 へ……?男が、嫌い……?


「脳みそエッチな事ばっかり考えてて、女を見たら性欲のはけ口くらいにしか見てなくて、野蛮で胸毛でガサツでデリカシーがないんだからっ!」


 え、えっと。元男として否定できない所もあるんですけど、胸毛は関係ないような……ってそうじゃなくて。


「その……それ、私が元男だからかも……?」

「は?」


 ヤバい、なんか温度が凄い下がったのを感じる。

 なんだろう、今氷山に居るみたいに寒いんだけど……!


「今、なんて?貴女……いや、お前、男、なの?」


 凄い、視線で人を殺す事が出来るなら、きっとこういう目の事を言うんだろう。

 さっきまでの天使のような雰囲気から、地獄の閻魔のような迫力を感じる。


「あ、いや、その。か、体は間違いなく女性なんですけど……その、魂が男と言いますか……」


 しどろもどろになりながらも、そう伝えた。

 すると……


「い……」

「い?」

「いやぁぁぁぁぁぁっ!寄るなオカマー!」

「ち、違っ!いったぁぁぁっ!?」


 凄まじい大きさの光の矢が空中に浮かび、次々と飛んでくる。

 妖精達は危険を察したのか、いつの間にか周りにはいなかった。


「いやぁぁぁっ!いやぁぁぁっ!!」


 次々と飛んでくる光の矢を前に、このままじゃ話は出来ないと思い、一旦この場を離れる事にした。


「い、一旦帰るから!また来るね!」

「もう来るなー!」


 というわけで、帰ってまいりました。


「という事があってね……どうしようかな……」


 はしたないと分かりながらも、テーブルにぐてっと上半身を預けながら、母さんと兄さんに現状を伝えた。

 今まで順調に契約出来ていたので、まさかこんな事になるとは思わなかった。

 話が出来ないんじゃ、どうしようもないよね……。


「ほぅ……蓮華に、そのような態度を……」

「ふふ、あの子、そう……ふふ……」


 二人が静かに立ち上がった。

 私の第六感が、この二人をそのままにしてはいけないと言ってる!


「母さん、兄さん、どこに行こうとしてるのかな?」

「決まっているでしょう。次の光の大精霊に入れ替えるだけですよ」

「ええ、そうね。私も昔からあの子を知っているけど、ちょっと今回の事は許せないかなー?」


 ひぃ、二人の笑みが黒い!二人の後ろから黒いオーラが抑えきれずに漏れてる!?

 で、でも、こんな事で入れ替えるなんてダメだ!


「お、落ち着いて!最初、ちゃんと話が出来たんだよ!だから、もう一度チャンスを頂戴!ね!?」


 私の必死の懇願に、二人は溜息をつきながらも、了承してくれた。


「ふぅ、分かりました。蓮華の望まぬ事は出来ればしたくはありません。けれど、私の意思に反して、我慢出来ないかもしれませんから、そこは理解してくださいね蓮華」

「分かったよレンちゃん。私だってレンちゃんが嫌な事はしたくないからね。でも、勝手に体が動いてたら、ごめんねー」


 分かってるようで分かってないよねこの二人ー!

 どうしよう、なんとかレニオンと仲良くならないと、レニオンが危ない。

 レニオンの為にもレニオンと話せるようにならないと……でも、私だと同じ事になりそうだし……。

 こんな時、アリス姉さんが居てくれたらなぁ……。


「ねぇ母さん、アリス姉さんってまだ時間掛かりそう?」

「アリスはまだしばらくは帰ってこないでしょうねぇ。帰って来るまで、待っても良いんじゃないレンちゃん?」


 それも手ではあるんだけど……。


"蓮華、なら次は私が話してみましょうか?"

"ユグドラシル!?"

"レニオンは蓮華の話を、きちんと聞いていませんでしたからね。男という部分にのみ反応していました。そこをきちんと理解させましょう"

"良いの?ユグドラシル"

"ふふ、構いませんよ"


「母さん、兄さん!ユグドラシルが手伝ってくれるって!」

「「!!」」


 二人が驚いた顔をしている。二人ともあまり驚いた顔はしないから、珍しい。


「そっか、なら安心だね」

「そうですね。またすぐに行くつもりなんでしょう蓮華」

「うん!当然!それじゃ、行ってくるね!」

「「行ってらっしゃい」」


 二人に笑顔で見送られ、再度天空城へと向かう。

 今度こそ、話が出来ると良いな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ