27.最初に行く場所
第二章、スタートです。
お楽しみ頂けたら幸いです。
外の世界へと意気込んで、泉まできて気が付いた。
またポータル使ったら意味ないよね。
んー……歩いてユグドラシル領を出ようにも、結構広いんだよねここ……。
しかも、人と誰も会えないのは確定している。
それはここが母さんの管理する、ユグドラシル領だからで、人の出入りを一切禁止しているからだ。
入れるのは母さんと兄さん、それにアーネストと私だけだと聞いている。
さて、どうしよう……安易にポータルに頼らないと決めた私だけど、まさか最初っから使う事になるとは……。
まぁうん、どこにでも繋がるあれを使うわけじゃないし、良い事にしよう、そうしよう。
適応大事。
と自分に言い訳を済ませて、使う事にする。
でも、街の名前を言いかけて止まる。
どこに行くか決めてないんだよねぇ、これぞ行き当たりばったり。
私の本来の性格が蓮華という存在を穢している気がしてならない。
さて、どうする。
場所が分かっている大精霊が、オーブに関わる、私が行った祠の木、火、水と、アーネストの行った金、土、日・月の祠だ。
なんで日・月だけ祠が一つなのか母さんに聞いたら、日は朝と夕方前まで、月は夕方から朝前まででその姿が変わるらしい。
日・月は特殊な属性なんだそうだ。
私は一週間かよって突っ込みを、当初心の中でいれていた。
とまぁ、話が逸れかけたが、その基本属性の7つと、派生属性として、風、炎、氷、雷、光、闇、時、空といった属性があるらしい。
それらに該当しない無属性というのもあるが、これは属性が無いという意味だ。
『マジックアロー』といった、魔力の塊をぶつけるだけだったり、『アタックアップ』、『ディフェンシヴ』、『スピードアップ』といった、単純に能力を上昇させる系統はこれに当たる。
学園までに私の残された時間は1年と少し。
その間に、これら14か所、いや水は行かなくていいから13か所か。
それだけ周って、契約を取り付けないといけない。
っていうか、私を認めてくれるんだろうか……ウンディーネとも、認めるというか単に友達になっただけなんだけどなぁ……。
ここで考えていても仕方ない。
まずは最初をどうするかだ。
基本属性の場所はオーブに関係しているから、私が行っていない場所も誰かに聞けば分かるだろう。
ただ、派生属性の場所は分からない。
一度行った事のある木、火が一番手軽かなぁ。
そだ、ウンディーネに相談してみようかな。
「我が呼び掛けに応えよ、ウンディーネ!」
その後、目の前に大きな滝が出来たかと思うと、そこからウンディーネが現れた。
「召喚に応じ、参りました」
と言ってきたので。
「ウンディーネ!」
と召喚できた嬉しさに呼んだ。
「こんなに早く、また敵が居るわけでもなく、どうしたんですか?」
と聞いてきた。
「次どこに行くか決められなくて、相談したくて呼んじゃった」
だから、正直に答えた。
一瞬驚いた顔をしたウンディーネだったが。
「しょうがない方ですねレンは」
と若干呆れながらも、微笑んでくれた。
それから、私の状況を説明した。
ウンディーネはしばらく悩んだみたいだが、顔を上げて言ってくれた。
「なら、まずは火・木・土・金・日・月の5か所に行くべきですね。他の派生属性は、この地上ではない所にありますから」
「え、世界樹の力って、地上だけじゃないの?」
確か、オーブは地上全体にマナを循環させる為の物だったはず。
「あら、レン。世界樹のマナは地上だけでなく、世界全体を包んでいるのですよ?ただ、地上は世界樹のマナに頼りきった生活をしているから、マナが使えなくなれば大混乱が起きる、というだけです」
そうだったのか。
私は勘違いをしていたみたいだ。
「ベースとなる属性は全て地上にありますが、派生だったり、特殊な属性の祠は別の場所にあるのですレン」
だからオーブは6か所だったのかな?ウンディーネが続ける。
「派生属性である氷、炎、風、雷、光・闇の祠は魔界にありますし、空は天上界、時は冥界にあるのです」
うへぇ、もしかして私は全属性の大精霊と契約する為には、それこそ全世界周らないとダメって事か。
「ふふ。ですので、レンは学園に行くまでに、この地上の大精霊達と契約する事を目標にすると良いでしょう」
「そっか、そうだね。ありがとうウンディーネ」
「いえいえ、レンが全大精霊と契約する気になってくれたのは嬉しいですしね。早く真の主様になってくださいね?」
なんて言ってくるウンディーネに苦笑で返す。
でもそっか、まずは地上のオーブのある祠か。
アーネストの行った場所も行かないとダメなんだよな。
それなら場所はアーネストに聞いた方が速いかな?
どうせしばらくは家にいるんだろうし、一度帰った時に聞くとするかな。
なら、まずは選択肢は2つか。
木のオーブのあるオーガストか、火のオーブのあるフォース。
水はもうウンディーネ居るし、バニラおばぁちゃんに相談する事も今はないかな。
よし、どっちに行こうかな。
あ、それより聞いておきたい事があったんだ。
「ウンディーネ、聞きたいんだけど、ウンディーネを召喚している間って、私は魔力消費し続けてるの?」
「どちらでも可能ですよ?」
うん?どちらでも?
「私を召喚する時に使った魔力が尽きれば私は戻りますし、レンが新たに供給してくださるなら、レンが供給し続ける限り、私はその場に留まる事が可能です」
成程。
うーん、できればウンディーネと一緒に行動したいけど、大精霊と一緒に歩いてたら、間違いなく注目の的だよね。
「レン、もし私と共に行動したいと考えているのでしたら」
心読まれた!?
「認識阻害の魔法をレンが使えば大丈夫ですよ」
あ、成程。
それならウンディーネをウンディーネと認識しなくなるのか。
直接相対して話したら分からないけど、遠目から見る分には、背景と同じになる。
「それに、レンは魔力がほぼ減らないですからね。私だけでなく、全ての大精霊を召喚し続ける事も可能なはずですよ」
え?減らない?いや、結構使った後疲れたような……ほら、厄災の獣と戦った時に使った魔法とか。
「レン、厄災の獣と戦った時に使った魔法は、闇と炎の合成魔法。最上級合成魔法を、更にレンの魔力のほとんどを込めましたね?だから一時的に減っただけで、その後すぐに回復したでしょう?」
あ、そういえば。
撃った直後は動けないくらい疲れたけど、その後割とすぐに動けたような。
「言っておきますが、普通の者が魔力切れを起こすと気絶します。もしくは、フラフラになって動けません。回復するのも一晩は寝込みますから、魔力切れには細心の注意を払うものですよ」
げ、そうだったのか。
「魔力とは自身に最も影響するモノですからね」
あれ?だとするなら。
「アーネストって魔力無いらしいんだけど、もしかしてそれって……」
「はい、異常ですね。普通は少しは体の為に必要なのですから。それが無いとか、生物ではありませんね」
はい、人外どころか生物認定されてませんでした、大精霊に。
何者なんだよアーネストって。
私は人の事言えないけど。
「まぁそれは良いです。彼の者はレンに必要な者ですから。それより、レンは私と行動を共にしたいのですか?」
私に必要な者?いやまぁ確かに必要だけれど。
ってそれよりも。
「うん、そう思ってるんだけど、やっぱり難しい?大精霊、だもんね」
色々とやらなければならない事や、役目もあるんだろうし。
「いえ、構いませんよ?レンと一緒に居られるなら、楽しそうですから」
意外にも許可がおりた。
「ホント?やった!」
普通に嬉しかった。
ウンディーネと一緒に行動できるなんて、思ってなかった。
「それならレン、私も人型になりますね。いくら認識阻害の魔法を使うといっても、効果に限りはありますから」
と言って、すっごい美女に変わった。
なんだこの美女。
聖女か?ってくらい綺麗なんですけど。
「それでは、私の事はディーネと呼んでくださいねレン」
その言葉に。
「うん、よろしくねディーネ!」
と嬉しかったので元気よく答えておいた。
っと、そういえばどっちに行くか決めてなかったな。
シリウスに王都を案内して貰える約束もあるし、まずはオーガストに向かうかな。
「ディーネ、それじゃ最初は王都・オーガストに行こうと思うんだ」
「オーガストという事は、ドライアドですね。彼女とは特に仲が良いので、会うのが楽しみです」
「ドライアド?」
「はい。木のオーブのある祠へ行くのでしょう?あそこには大精霊、ドライアドが居るのです。彼女は大らかな性格をしているので、きっと契約もすんなりいきますよ」
とディーネが微笑む。
そっか、ディーネと仲が良いなら、楽しみだな。
「それじゃ、行こっかディーネ」
「はい、レン」
こうして、私はもう一度、王都・オーガストへ行く事になった。
今度は、地上の為じゃなく、私の為に。
学園に入学するまでという期間はあるものの、それは大した縛りじゃない。
これからが本当の旅だと思うと、心がワクワクするのは何故だろう。
さぁ、冒険の始まりだ。




