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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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49話.悪魔と魔物

「グリオスが死んだか。報告ご苦労、戻って良い」

「ハッ」


 恭しく礼をし、その場を辞する男。

 その男にはさして興味はないのか、報告を受けた男は、横で煙草を吸いながら胡坐をかいている男に声をかける。


「なぁグルド、グリオスに任せていた場所を覚えているか?」


 グルドと呼ばれた男は、吸っていた煙草を灰皿に押し付け、気怠そうに答えた。


「あぁン?俺が下級兵の事まで覚えてるわけねぇだろ?」

「下級兵という事は覚えているのか」

「違う、俺が覚えてるのは上等兵以上の奴だけなんだよ。その俺に記憶がねえって事は、下級兵って事だろーが」

「フ、成程な。では勇者殿、貴殿は覚えているかな?」


 グルドの正面に腰かける男。

 勇者と呼ばれたその男は、真っ直ぐに視線を合わせ、答えた。


「うん、覚えてるよ。確か、レヴィアタン領のロッテンベリクで資金を集めている小隊長だったね。それくらいはマスターも覚えているだろうから……その質問の意図は、解決()してこいって事かな?」


 その言葉に、ニヤリと笑うグルド。


「おいおい、そーいう事なら俺に任せろよサタン!」

「ここではマスター、もしくは首領と呼べグルド」

「おっとすまねぇマスター!」


 血気に流行る二人を見て、笑うサタン。


「まぁここは、勇者殿に任せよう。調査し、原因となった者を始末するように。私は地下の培養施設に行ってくる」

「方法は好きにして構いませんか?」

「ああ、いつも通りにな」

「承知しました」


 そう言い、勇者と呼ばれた男は、口を三日月のように変え、その場を離れる。


「俺が言うのもなんだけどよ、あいつが勇者とか嘘だろ?」

「彼は転生者で職業はそうなっていた。ただ、勇気ある者が勇者と呼ばれたのと違い、職に縛られただけの存在だ。その在り方が勇者というわけではない」

「なるほどなぁ。んで、魔物と魔物を配合してるあいつも、転生者なんだろ?」

「ええ。彼はそれが楽しいとの事で。配合方法をメモしながら、楽しんでいますよ」

「俺は殺せれば良いけどよ、あーいう陰険なのは嫌いだぜ」

「そうですか?彼が創った魔物と楽しそうに戦っていたではないですか」

「出来上がりとあいつの行いは別なんだよ」

「クックッ……そうですか。まぁ、彼の行いは私も非常に楽しみでしてね。もしかしたら、彼なら神をも創造できるかもしれない……ああ、考えるだけでワクワクしませんかぁ!?」


 サタンは口元を歪め、その残虐性を露わにしていた。

 グルドはそれを指摘する。


「おいおい、マスターの顔はどうした。戻っちまってるぞ」


 その指摘にサタンは表情を引き締める。


「おっと、すまない。演技も板についてきたと思っていたんだが、どうしてもな」


 グルドはそんなサタンを見て、笑う。心から。


「はははっ!まぁ俺はマスターの元の方が好きだぜ?しょうがねぇ、俺達魔の者は、根っからの悪魔なんだからなぁ」

「フフ、私もグルドの事は大変好きですよ。何故君は男なのでしょう?」

「うげ、気持ち悪い事言うんじゃねぇよ!」


 自分の体を抱きしめ、嫌悪感を隠そうともしないグルドに、サタンは笑う。


「冗談だとも。さて、ではまた後でな」

「ああ」


 サタンは魔方陣の上に乗る。そうして飛ばされた場所は、ギルドハウスの地下。

 そこでは、魔物と魔物の配合が行われていた。


「マサト、経過はどうだ?」

「マスター。ああ、そのノートに纏めてるから、見ててくれ。俺は今次の配合で忙しいんだ。あ、それより魔物の種類が減ってきた。元となる奴を多めに運んでくれないか?」

「良いだろう、手配しておく。……ふむ、魔物の配合は多岐に渡るようだな。やはり、転生者のスキルは面白いな。特に、下級の魔物と下級の魔物を合成して出来た魔物を、更に同列の魔物と配合する事で、上位の魔物になるとは……」


 サタンは配合の結果が示されたノートを見て、笑った。

 思惑通りに進んでいたからだ。


「しかしマサト、これだけの事をしてくれているのに、本当に報酬は要らないのか?」

「ああ、俺はこれが人道に外れた事をしていると理解してる。だから俺は、二度目の生もきっと、ろくな死に方はしないと分かってる」

「ほぅ……」


 サタンは、マサトの気質を好んでいた。単純な悪ではなく、善を知ったうえで、悪を行っているその心を。


「でもさ、仕方がないだろ?俺はゲームでしか、これを味わえなかった。強力なモンスターを育て、競わせ、新たなもっと強いモンスターを作る。ゲームでしかできなかった事が、現実になったんだ!やらないなんて事、できるわけがない!」


 そう瞳を輝かせるマサトを、サタンは心底好んでいた。


「はは、マサトは好きな事をして良いのだ。それが結果的に、私の為にもなるのだからな。それで、コロシアムに連れて行っても良い魔物はいつもの場所に置いているか?」

「ああ。それは大丈夫。殺しても良いけど、死体が残ったら持ち帰ってくるように言っておいて。グール系も配合を試してるんだ」

「ククッ……了解だマサト。お前をナイトメアに加入させられた事を、本当に嬉しく思うぞ」

「それは俺こそ礼を言いたい。この平穏な世界で、俺の趣味は絶対に理解されないから。俺自身は弱い、だけど……俺の魔物は、最強さ」


 正しく狂っていたマサトに、サタンは笑みを向ける。

 そして、ギルドハウスから外へ出たサタンの元へ、一人の女が現れる。


「ねぇ、貴方がナイトメアの首領さんかしら?」

「!!」


 サタンはその計り知れない闇を感じ取り、笑顔を向けた。


「ええ、今はシャイターンと名乗っております」

「そう……私は初音。以後、お見知りおきを」


 最強の悪魔と、最狂の魔物が出会った瞬間だった。

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