表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

268/714

44話.アーネストを探して

 学園に戻り、理事長であるシオンさんに事情を説明したら、二つ返事で了承を貰えた。


「蓮華先生のなさる事なら、勿論構いませんよ」


 多分、私じゃなく……後ろに居る母さんや兄さん、アリス姉さんを見ての言葉だと思う。

 私自身は、何の実績も残していないのだから。

 そう思っていたのだけど。


「貴女は膨大な知識に加え、この地上で最高の権力をお持ちです。そして単純な力もある。けれど、それらを正しく使おうとされるお方です。貴女のされる事なら、私は否とは言いません」


 そう、穏やかな表情をして言ってくれた。

 シオンさんは、私の周りにあるものだけじゃなく、ちゃんと私自身を見てくれていたんだ。

 その事が嬉しくもあり、恥ずかしくもあり。

 少し照れながら、理事長室を後にした。


「あの理事長、あれで生徒達一人一人を記憶してるのよ。古代の竜、エンシェントドラゴンだって聞いたけど、ヤマタノオロチの封も無くなったのに、なんでまだ居るのかしら?」


 ノルンが不思議そうに聞いてきたけど、その理由はなんとなく予想している。

 昔、母さんやアリス姉さんと共に、世界を巡ったと聞いた。

 きっと、母さんとアリス姉さんが好きだから。だから、もう一つの役目を果たそうとしているんだと思う。

 この地上を、別の側面から守る為に。


 そうして、生徒会についた。

 扉を開けると、全員の視線がこちらに向いた。


「「「蓮華先生!?」」」


 ああ、うん。先生はやめて欲しいんだけどな……同い年だよ。でも中身考えたら正しくそうかもしれないけど。


「あら、ノルンまで居るじゃないですか。どうしたんです?」


 そう言って、アリシアさんが近づいてきた。


「ちょっと話があってね。会長は居る?」

「会長は今少し席を外してまして……待ちますか?」

「アーネストが?うーん、なら私は探しに行こうかな。ノルンはどうする?」

「どうせ生徒会室に戻らないとでしょ?なら任せるわ。私はアリシアと居る事にするから」

「そっか、了解」

「あら、それじゃノルンには少し生徒会の仕事を手伝って貰いましょうか」

「え"。蓮華、やっぱり私も行……」

「逃がしませんよーノルン」

「あ、あはは、い、行ってきます!」


 私は逃げ出した。


「蓮華ー!」


 ノルンの悲鳴のような呼び声は聞こえない、聞こえないったら聞こえない。

 そして、アーネストを探して中庭を巡る。

 生徒達が気軽に挨拶をしてくるので、それに答えながら。

 そうして探していたら、声が聞こえた。

 これは、戦いの掛け声かな?訓練中だろうか。

 気になった私は、声がする方へと足を向けた。

 そこには、5人の生徒達と、タカヒロさん。それにアーネストを見つけた。


「どうした、この程度で陣形を乱されてどうする!エリク!その程度を防げないで、味方を庇いきれると思うか!」

「はい!すみません!」

「サージ!ソレイユ!相手の動きを見るだけじゃなく、予測しろ!見て放っていたら、遅い!」

「「はいっ!」」

「ミリー!回復するのは全体じゃない!ナイトが盾を持てなくなったら前線が崩れるぞ!腕を重点的に回復しろ!」

「は、はいっ!」

「アークはそれで良い!だが、相手が魔物の時は加えて攻撃もするように意識しろ!」

「分かりましたっ!」


 タカヒロさんの叱咤が飛ぶ。

 凄い、キビキビとした、まるで軍隊の様な実戦形式の訓練だ。

 その動きも洗練されていて、無駄な動きが少ないように見える。

 ぼーっと見ていたら、アーネストが気付いたらしく、声をかけてきた。


「お、蓮華!」

「「「「「!?」」」」」

「あ、馬鹿っ!」

「ぐはぁっ!?」

「「「「エリク!?」」」」


 アーネストが私の名を呼んで、5人が私の方を向いて。

 前線を担当していた人がタカヒロさんの攻撃を受けきれず、その場に崩れ落ちた。

 これ、私のせい、だよね?


「えっと、ごめんねタカヒロさん。邪魔しちゃったよね」

「いや、そんな事はないさ。むしろ、突然の事態に対応できなかったこいつらが悪い」

「「「「「うっ……」」」」」


 しょんぼりする皆。

 ご、ごめんよ。空気を変える為に、少しフォローする事にした。


「そ、それにしても凄いね。全員自分の役割をきちんとこなしているように見えたし、動きに無駄が無かったよ」

「ふむ、蓮華にもそう見えるか?」

「うん。タカヒロさん相手にここまで戦えてるし……凄いんじゃないかな?」


 そう言ったら、5人が嬉しそうに笑った。

 努力が認められたら嬉しいよね、分かるよ。

 私も母さんや兄さんに褒められたら、嬉しかったもんね。

 元の世界では、刀の扱い方を父さんに褒められた時は、本当に嬉しかったから。


「そんで蓮華、どうしたんだよ?あ、もしかしてホームシックか!?しょうがねぇなぁ蓮華は!」

「ふんっ!」

「ごふっ!?お、お前、だから力を抜いている時に鳩尾(みぞおち)は……ひでぇ、だろ……?」

「お前が阿呆な事を言うからだ」


 お腹を押さえてうずくまるアーネストに、腕を組んでふんすとしている私。

 それを見て、皆がぽかーんとしているのに気付いた。

 しまった、やってしまった。

 外では結構淑女をイメージしてたのに、アーネストと居ると猫を被りきれない。


「おいアーネスト、この雰囲気をどうしてくれる」

「それ俺のせいじゃねぇよな!?」

「お前がいらんことを言うからだろ!?」

「落ち着けアーネスト、蓮華。俺は慣れたが、こいつらが呆然としてるだろ」

「「あ」」


 くぅ、今思ったばかりだというのに、アーネストめっ!


「あ、あははは。えっと、驚かせてごめんね。後、訓練の邪魔をしてごめんなさい」


 そうして頭を下げたら、皆が滅茶苦茶狼狽した。


「い、いやいや!頭を上げてください!タカヒロ先生から言われたように、あれは俺達のミスですからっ!」

「そ、そうです!蓮華先生に謝罪をされるような事ではありません!どうかそんな事はなされないでください!」


 皆がこぞってそう言うので、頭を上げる。

 訓練をしていたから、息も上がっている。そうだ。


「皆、お詫びというわけじゃないんだけど、これ飲んでみて。体力が回復するよ」


 アイテムポーチから、スタミナポーションを取り出す。

 これは普通のポーションと違う。

 普通のポーションは傷を治すけど、失った体力や精神は癒えない。

 けどこのスタミナポーションは、傷は癒えないけど、体力を回復する事ができるんだ。


「っ!美味しいっ!ポーションって、凄く苦くて不味いのに……」

「本当!フルーツジュースみたい……!アタシ、これならいくらでも飲める!」

「ソレイユにミリーもそう思うって事は、俺の味覚がおかしいわけじゃないんだな。エリク、こんなポーションあんのか!?」

「いや、ヤクート商会でもこんなポーションは取り扱ってないぞアーク!」


 えっ、そうなんだ。そんなに難しいレシピじゃないんだけどな。


「まだまだあるよ?飲む?」


「「「「「はいっ!」」」」」


 皆元気一杯に返事してくれた。


「やれやれ。蓮華、俺も一つ貰っても良いか?」

「あ、俺も俺も!俺は別に疲れてねぇけど、喉が渇いてさ!」


 というわけで、タカヒロさんとアーネストにも渡す。


「うまっ!?なんだこれ、これ本当にポーションなのか蓮華!?」

「確かに、これは美味いな。市販のポーションは糞不味いんだが」


 私、回復魔法が使えるからポーション飲んだ事ないんだよね。

 なので、ちょっと飲んでみる。


「っ?!ゴホッ!ゲホッ!ま、まずぃ。皆これ美味しいの……?」

「「「「「!?」」」」」


 青汁の10倍くらい不味い。

 絶対もう一杯とか気軽に言えない味なんですけど。

 皆の舌どうなってるの?


「ふむ……俺達は美味しいんだけどな。アーネスト、蓮華と一緒に同じ飯を食べてきたんだよな?」

「ああ。だから蓮華の味覚がおかしいって事はねぇと思うけど……」


 何か、原因があるのかな?まぁ、回復魔法があるので、これからも飲む機会はないと思うんだけど。


「あ、本題を忘れかけたよ。アーネスト、それにタカヒロさんも。少し相談したい事があってね、生徒会室に集まれる?」

「俺は問題ねぇぜ」

「そうだな……。よし、お前達は自主練をしておけ。蓮華、その話は長くなりそうか?」

「うん、多分」

「そうか。なら、晩まで自主練をしたら、今日はそのまま休んでいい。終わった後に体を解す事を忘れるなよ」

「「「「「はい!」」」」」

「皆ごめん、タカヒロさんを借りていくね。頑張ってね。それじゃ行こうアーネスト、タカヒロさん」

「おう!」

「ああ」


 そうして、アーネストとタカヒロさんと一緒に生徒会室へと向かう。

 その後ろ姿を、5人の生徒達が眩しそうに見ている事を、私は知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ