43話.レヴィアタン領の統治
「良いぞ、蓮華とノルンの好きなようにして良い」
「「……」」
手紙を渡して、事情を説明したら、このセリフが返ってきて絶句してしまった。
いやあの、貴女の治めてる領地の事なんですけど。
「ん?意外そうな顔だな。私は正直、領地を貰ってもどうしたら良いのか分からないんだ。だから、適当にやるくらいなら、何もしない方が勝手に良いようにするだろうと思ってな!」
「「えぇー……」」
放置の極みじゃないか。二重のじゃないよ?
「そこは、そういう事に詳しい人を募集するとかしなかったの?」
「もちろん最初にしたぞ。だけどさ、皆戦の時の私を知っているからな。ビビッて誰も来なかったんだ」
「……」
「まったく、不甲斐ない領民共さ。だから、私も放置した。勝手に良いようにすれば良い。なーに、なんとかなるもんさ」
確かに集落の皆は自分達で強く逞しく生きていたけども。
「それじゃ、税とかは取ってないって事?」
「そんもの要らないからな。私は水があれば生きていけるし、腹が減ったら魔物を焼いて食べる」
えー。この人私に近い考え方してるけど、統治者としての資格0なんですけどー!?
「そ、それだと門番の人とか、どうやってお給金を出してるんですか?」
「そんなもの出してないぞ。門番もあいつらが勝手にやっているだけだからな。この城に集まってる奴らは、勝手に来て住み着いてるだけだ」
もうヤダこの人。ここまで放任主義の人初めてだよ!
「ノルン、これはもう徹底的に開拓しなくちゃダメだと思うんだけど」
「奇遇ね、私もそう思ったわ。一応魔界の責任者の一人なんだから、なんとかしなくちゃリンスレットの心労がまた増えるわ」
「おお、頑張れ!」
「「レヴィアタンさん(アンタ)の事だから!」」
「お、おぅ?そうだ蓮華、私の事はレヴィと呼べ」
「え?ええと、良いんですか?」
「ああ、勿論だ。ノルンも以前そう呼べと言ったんだが、鰾膠も無く断られてな。せめてお前がそう呼んでくれると嬉しいんだが」
「分かりました。それじゃレヴィ、レヴィアタン領の開拓を進めようと思う。ちょっと人手も増やすよ、私達だけじゃ分からない事もあるからね」
「分かった、好きにしてくれ!」
「アンタも参加するに決まってるでしょ!全部私達任せとか許さないからね!?」
「お、おお、落ち着けノルン。分かっているさ」
という事で、レヴィアタン領の法整備というか、ルールを作る事になった。
流石に私とノルンだけじゃ分からない事が多すぎるので、専門の人に手伝って貰う事にしたんだけど……。
「国に属してる人はダメだよね」
「そうね。それに今回はマーガリンさんやロキさんもダメよ蓮華」
「うん、分かってる。って事は……学園の政治に詳しい人達に協力を頼むのが良いよね」
「それが最善かしらね。生徒会って、その優秀なメンバーの頂点が集まってるんでしょ?」
「それじゃ、まずはアーネストに相談してみようか。あと、シオンさんにも話を通さないとね。病院の事もあるし」
「順序が逆でしょ。まず理事長に話をして、それからでしょうが」
「あ、そっか」
私はついついアーネストを優先してしまう。
「蓮華、ノルン。私の領の事を手伝って貰うんだ。せめて部屋くらいは提供させてくれ」
ポケットハウスもあるので、断ろうかと思ったけど、ノルンがそれを制した。
理由を後で聞いたら、レオン君とリタちゃんを呼んで、ここで学ばせたいらしい。
給与の事も勉強させて、あれならレヴィの元で就職させようって魂胆を聞いた。
流石、ノルンは二人の将来も考えていたみたいだ。
私とは違って、ノルンはしっかりしているよね。
「それじゃ、まずはレオン君とリタちゃんを呼んで、レヴィと顔合わせがすんだら学園へ行こっか」
「ええ、そうしましょ」
というわけで、私とノルンは一旦宿へと戻り、理由を二人に説明してからレヴィとまた会った。
レヴィは二人とは初対面だったみたいだ。
けど、二人はそうではないようで、ブルブルと震えていた。
レヴィは慣れているようで、私の戦いを知っている者は、皆そうなるって笑っていた。
恐らく、二人はレヴィの戦いを見た事があるんだろうね。
もしくは、噂で聞いて、なのかもしれないけれど。
「えっと、レヴィの家というか城で寝るのは嫌かな?」
「あ……だ、大丈夫です。その、噂で怒らせたら食べられるって聞いてて、それで……」
「う、うん……」
どんな噂だ。そしてそんな噂を二人は信じてしまってるのか。
「あー、確かに食べてたけど、別に怒らせたからじゃなくて、腹が減ってたからなんだけどな!」
「「ひぃぃっ!?」」
「うん、レヴィちょっと黙ってて?」
「お、おぅ」
「大丈夫だからね二人とも。このお姉さん言動はあれだけど、怖い人じゃないから。ね?」
「は、はい。蓮華お姉ちゃんがそう言うなら……」
「こ、怖くない、です……!」
「あはははっ!小さくて可愛らしいな!私が触れたら壊れちまいそうだし、気を付けよう!」
うん、本当に言動はあれなんだけど、姉御って感じがするんだよねレヴィ。
それから二人に部屋を用意してもらった。
もし、レヴィの元で働く事になったら、ポケットハウスの物も移せば良いだろう。
どうなるかは分からないけどね。
さて、私達は学園へ行こう。




