39話.水の街レヴィアス
魔界のロッテンベリクの街へと戻った後。
私達はそのまま街を出て、レヴィアタンさんの住む街であるレヴィアスへと向かった。
途中で何度か集落を通り過ぎたけど、よくある貧乏な暮らしをしているというわけでもなく、皆表情は明るかった。
少し前までは戦争で荒んでいたらしいけど、リンスレットさんの政策のお蔭なんだろうな。
ダンジョンが近くにあるらしく、集落間での交流もあるみたいで、物流も盛んのようだった。
小さな集落にも小さなギルドがあって、酒場と兼業みたいになっていたよ。
この世界ではお酒は二十歳になってからとかないみたいで、小さな子も飲んでたのには驚いたけど。
ギルドに途中で狩った魔物を渡して、ギルドポイントを少し貯めたりしながら、数日かけて首都レヴィアスへと辿り着いた。
「凄い!水の街だ……!」
「ええ、綺麗ね」
街の中心には大きな女性の像があって、その手に掲げたツボから水が流れ出ている。
その水は道の下を流れて、街全体へと流れているようだ。
道は透明で、下に流れる水が直に見える。
よく見ると魚も見えるし、人が泳いでいると思ったら、人魚だった。
ここが、大罪の悪魔、嫉妬のレヴィアタンさんが居る街か。
レオン君やリタちゃんも初めて見るらしく、楽しそうに街並みを見ている。
さて、街を見て回るのは後だ。
まずはレヴィアタンさんに会いに行かないとね。
「ノルン、レヴィアタンさんの居る場所は分かる?」
「さぁ?どうせ一番大きい屋敷じゃないの?」
成程、確かにそうかな。
「というか、レヴィアタンに会うのは大精霊と契約した後にしなさいよ。アンタ絶対に面倒事に巻き込まれて、結局大精霊に行くのがまた遅れるかもしれないわよ」
「そ、そんな事……」
ないよ、と言おうとしたんだけど。
「ここまで来るのに、どれだけ寄り道する事になったのか、忘れたとは言わせないわよ?」
「それ私のせいだけじゃないよね!?ノルンだって一枚噛んでるよね!?」
「だからよ。私とアンタが一緒に居るんだから、レヴィアタンと会って手紙を渡して、話をして何事もなくはいさよなら、なんてなる可能性は低いでしょ」
「うぐっ……」
何も反論が出来ない。しかも、さりげなく自分も含めて言ってるから切ないよノルン。
「それじゃ、まずは大精霊の元へ行こうか。レヴィアスが一番近いって聞いたけど、どれくらい掛かるかな?」
「アンタなら一日も掛からないでしょ。私達は街を見て宿も取っておくから」
「え?一緒に行かないの!?」
「当たり前でしょ。大精霊と契約するのはアンタなんだし、私達が居たら邪魔になるかもしれないでしょ」
「そ、そんな事あるわけ……」
「ああ、言い方が悪かったわね。アンタとその大精霊は初めて会うんでしょ。だったら、大精霊の為にもアンタが一人で会ってあげなさいって事よ」
「!!」
そっか、そうだよね。
私にとって、ノルンやレオン君、リタちゃんは信頼できる。
けど、大精霊にとっては初めて会う事になるんだ。私も含めて。
ヴィーナスの時は、母さんがすでに知り合いだったから含めないにしても……自分との契約なんだ、ちゃんと一対一で話をしに行く方が良いかもしれないね。
「……ありがとうノルン。そうだね、一人で行ってくるよ」
「そうしなさい。その間に、私は私で情報を集めておくから」
「というかそれなら、ノルンがレヴィアタンさんに手紙を渡してくれても良いんだよ?」
「アンタが伝えた方が良いって話をもう忘れたの?」
あ、そうだった。
「ま、私達は楽しませてもらうから、アンタは契約頑張りなさい。それじゃレオン、リタ、行くわよ」
「はいノルンお姉ちゃん!蓮華お姉ちゃん、頑張ってくださいね!」
「うん!蓮華お姉ちゃん、気を付けて行ってきてね!待ってるからね!」
「あはは、ありがとう二人とも。それじゃ行ってくるね!」
と言って別れようとして思い出した。
去ろうとする三人を追いかけ、ノルンの肩に手を置く。
「どうしたのよ蓮華」
振り返って不思議そうに聞いてくるノルンに、私は真面目な顔をして答えた。
「場所、知らないんだけど」
「アンタね……他の大精霊召喚するとか、方法はあるでしょうが!」
「い、いやでもね、地上の時ディーネ……ウンディーネは知らないって言ったんだよ?」
「……そうなの?」
「う、うん。私がオーブの祠の場所までの道って分かる?って聞いたら、私が人間の世界の配置など、詳しいわけがないでしょう?って」
口をあんぐりとあけるノルンが面白いとか思っちゃダメかな。
「はぁ、それじゃこの辺りの地図を買うわよ。地図は読めるわよね?」
「大丈夫。母さんからそのあたりの事は叩き込まれたよ」
「本当にアンタに関係する知識はしっかり身に付けさせてるのね。もうちょっと常識を身に付けさせて欲しかったけど」
ノルンに言われて、苦笑するしかない。私の普通が普通じゃないってずっと言われるし。
意外にも道具屋というか、地図を売ってるお店は入口のすぐ近くにあった。
そこで地図を買ってから、今度こそノルン達と一旦別れる事に。
この地図、レヴィアスの周りの詳細が描かれていて、近くにどんな魔物が生息してるとかびっしり書いてある。
これなら迷うことなく進めそうだ。




