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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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37話.穏やかな夜

「はい、これで大丈夫。それを身に付けている間は、もう心の声は聞こえないはずだからね」


 母さんにそう言われて、指輪を小指にはめたレオン君にリタちゃん。


「お兄、ちゃん……あんなに五月蠅(うるさ)かった声が、雑音が……!」

「あぁ、あぁ!消え、た。消えた……!」


 二人の瞳から、涙がポロポロと零れる。

 私はそんな二人を抱きしめた。


「ごめんね、もっと早く気付くべきだったよね。本当にごめんね」

「そんな、そんな事ないです!蓮華お姉ちゃん、本当にありがとうございます……!」

「蓮華お姉ち゛ゃ゛ん゛っ!あ゛り゛がどぅ゛!」


 二人が泣きながら、私を抱きしめる力を強くする。

 きっかけは、夕食の後の帰り、リタちゃんがふらついた時だった。


「どうしたの?リタちゃん」

「あ……な、なんでもないの。その、ちょっと声が聞こえすぎて……()()()()()だから……」


 その言葉を聞いて、私は背筋が凍った。

 そうだよ、どうして思い至らなかったんだ。

 心が読める、そう二人は言った。私はそれを勝手に、()()()()()()()()()と思っていた。

 聞きたくないなら、聞かないで済むのだと。違う、気付ける機会はたくさんあったんだ。

 レオン君もリタちゃんも、()()()()()()()()()と言った。

 その時私は、私の心の声も聞こうとして、出来なかったんだと勝手に思ったんだ。

 だけど、人の心が読めると知ったら、普通どう思うだろうか。

 その事を伝えるのは、どれだけ勇気がいったろうか。


 心優しい二人が、私の心を読もうとするだろうか。この子達は良い子達だ。自分からはしなかったろう。

 だから、私に言ったんだ。読めない、と。だから、一緒に居ても良いかを聞いていたんだ。

 私は、そんな事にも気付いてあげられなかった。


「リタちゃん、ごめん。二人はずっと、私に気付いてほしかっただろうに……本当にごめん……!」

「ち、違うの蓮華お姉ちゃん!私、これくらい耐えられるの!だから、だから捨てないで……!」

「っ!?」


 私は、リタちゃんを抱きしめた。そこまで、そこまで不安にさせてしまったのか……!


「リタちゃん、それにレオン君。安心してほしい。私達はもう友達だ。捨てるとか、捨てないとか……そんな次元の話じゃないんだ。友達が苦しんでる。なら、私に助ける手伝いをさせてくれないかな?」


 できるだけ優しく、ゆっくりとした口調で伝える。

 リタちゃんは、泣きながらも……笑ってくれた。


「……うん、蓮華お姉ちゃん……お願い、します。私を……お兄ちゃんと私を、助けて……この頭の中に鳴り響く騒音を……消して、欲しいです……!」

「分かった。私に出来る事は、なんだってやってみる。それが私の力じゃなくてもね」


 それからユグドラシル領に戻り、夕食を待っていた母さん達がテーブルで暗くなっているのを見て凄く慌てた後。

 明日の朝食は絶対一緒に食べるから、私も一緒に作るから!って言ったら、一気に元気を取り戻した母さんに事情を説明したら、すぐに魔道具を作ってくれた。

 これで、二人はその指輪を外さない限り、心の声を聞く事は無い。


「そういえば母さん、指輪だけど二人はまだ成長すると思うんだけど……」


 合わなくなったら困るんじゃ、と思ったんだけど、そんな心配はするだけ無駄だった。


「大丈夫よレンちゃん。腕の太さくらいまでなら、自動調整するからね」


 魔法を私はまだ舐めていたかもしれない。

 便利だよね。こんなのが普通にあったら、そりゃ化学は発展しないよ。


 それから皆の家に行って、荷物を置いてきた。

 物凄い量があるので、まとめるのに時間がかかるだろうし、今日はそれでお開きだ。

 ノルン達と別れて、外に出る。

 私は母さん達の居る家で寝るからね。


 今は、夜の暗さを感じれるようにしている。

 昼間のように明るく見る事もできるけど、私は夜の静けさも好きだから。

 ゆっくり歩いて、大精霊の皆が住んでいる家の前に辿り着いた。


「皆、自分達の家って思ってくれてたら良いな」

「思ってるわよ?」

「うわぁっ!?」


 一人ボソッと言った言葉を拾われて、驚いて変な声が出てしまった。

 泉の上に三日月が浮いていて、その三日月に寝転がっているルナマリヤだった。

 月明かりの中で輝いていて、とても幻想的に見える。


「ふふ、蓮華もそんな声をあげるのね」

「気配も無くいきなり後ろから声をかけられたら、誰でも驚くからね?」

「そうなの?」


 まるで初めて知ったといわんばかりの態度で、首を傾げるルナマリヤ。

 とても綺麗なその姿に、見惚れそうになる。


「最初に言ったけれど、もう皆ここが自分の家だと思ってるわ。あの落ち着きのないイフリートやサラマンドラでさえも、文句なんて一度も聞いていないわ」


 ああ、うん。確かにあの二人は退屈だとすぐに暴れそうだ。


「そっか。なら、私のした事にも、少しは意味があったのかな」


 私はこの世界に来てから、自分のしたいように生きてきた。

 間違った事だって、してきたかもしれない。だけど……


「蓮華、貴女のお蔭で、私は今素敵な生を感じられているわ。ありがとう」

「っ!!」

「これは、私だけでなく……今この場に居る全大精霊の総意だから」


 そう言って後ろを見るように促すルナマリヤに従うと、そこには大精霊の皆が居た。


「皆……!」

「レンゲー、ナヤンデルー?ワタシデヨケレバ、キクヨー?」

「ヴィーナス、抜け駆けは許しませんよ。ここはレンと一番最初に友達となった私が……」

「ウンディーネも抜け駆けしようとしてるじゃん!?姉御の一の舎弟である俺の方が話を聞くってば!」

「ええい!サラも下がれぃ!ここは蓮華の師匠足るわしがだな!」


 いきなり姦しくなったこの場を、どう静めたら良いんだろうか。


「ああもう、せっかく静かな夜だったのに、貴方達五月蠅いのよ!」


 なんてルナマリヤまでその輪に入っていった。

 私は、気付けば笑っていた。

 この温かい気持ちが、私は大好きだ。

 うん。私はこれからも、自分の好きなように……この異世界での生活を謳歌しよう。

 もちろんアーネスト、お前と一緒に。

 明日から、また大精霊と契約する為の旅を再開しないと。

 アーネストが来るまでに契約していないと、遅いと絶対にからかわれるから。

 それだけは許せないからね!他の誰にからかわれても良いけど、アーネストだけは許さないから!

 そう意気込んで家に戻ったら、アリス姉さんに捕まった。物理的に。


「蓮華さん、後の時間はずっと一緒なんだからね!」

「は、はい……」


 アリス姉さんの後ろに阿修羅が見えたので、私は抵抗できずにずっと一緒にその夜を過ごした。

 しまった、また精霊王について聞けなかったよ……。

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