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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第一章 オーブ編

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25.役目の終わり

 魔物を瞬殺した後、オーブに魔力を込めた。

 今回は水の魔力を意識したからか、前回と前々回のオーブに魔力を込めた時の10分の1くらいの時間で終わった気がする。


「お疲れ様ですレン」


 労わってくれるウンディーネに、ありがとうと礼を返す。

 さて……。


「これで、私の役目は終わり、かな」


 そう呟く。

 そう、これで母さんから頼まれた、この世界に召喚された理由は終わりだ。

 これからは、私の、私自身の生き方を決める旅に出る事になる。

 その為には、便利すぎるポータルは封じないとな。

 まぁ、ポータルは使える人が限られるらしいけど。

 有事の際に使う事は躊躇わないけど、普段は使わないように心がけよう。

 まずは、家に帰ろう。

 帰って、母さんや兄さん、アーネストに話さないと。

 その前に、アーネストは終わってるのかなぁ。


「それじゃ、帰ろうバニラさん」


 その呼び名に不満そうにしながらも、ウンディーネが居る事を理解したバニラおばぁちゃんは頷く。


「それではレン、私が必要な時はいつでも呼び出してくださいね」


 ん?呼び出す?


「も、もももしかして、召喚術というのですか!?」


 私は興奮して尋ねる。

 だって、召喚術って私の中で上位に入る、やってみたかった事だ。

 そんな私の態度に若干引き気味に答えてくれる。


「え、ええ。我が呼び掛けに応えよ、という言霊の後に、召喚したい大精霊の名前を呼ぶと良いですよ。今は私だけでしょうけれど」


 興奮した私は即座に言う。


「我が呼び掛けに応えよ、ウンディーネ!」


 何も起きない。


「レン……」


「レンちゃん……」


 なんか悲しげな眼で見られた。

 いや、分かってたよ?ここに居るんだもん。

 でも、何か起きるかもって思うのは仕方ないじゃないか。


「レンは時々阿呆ですよね」


 真顔で言われた!?美人にそんな事を言われると結構傷つくものなんだね……。

 四つん這いになって項垂れる私。


「レンちゃん、座ってほしいのぉ?」


 なんて聞いてくる頭がぶっとんだエルフが一人。

 すっと立ち上がって、一言。


「さ、帰ろう」


 私は無かった事にした。

 後ろから手を振って見送るウンディーネを背に、バニラおばぁちゃんと歩いて来た道を戻っていると。


「レンちゃん、『リターン』の魔法を使えば、すぐ戻れるよぉ?」


 その言葉にそんな魔法の存在があったのを思い出した。

 あれ、ならシリウスにカレン、アニスはなんで言わなかったんだろう?

 ってそうか、私がその魔法を使えるかなんて分からないか。

 使えると知ってたら言ってただろうし、むしろ使えるのに使わない理由が無いよね、使わなかったのは単に忘れてた私が悪い。

 あれ?ウンディーネのさっきの言葉、割と私は本当に阿呆っていうか馬鹿なんじゃなかろうか。

 なんか凹んできた。


「そ、そうだね。それじゃ戻るよバニラおばぁちゃん」


 二人に戻ったから、呼び方を変える。

 嬉しそうに微笑むバニラおばぁちゃんの肩に触れ、唱える。


「『リターン』」


 見えていた光景が瞬時に入れ替わり、入り口に戻る。


「ありがとうレンちゃん。アタシはこの手の魔法は使えないから、助かるわぁ」


 そう、魔法には適性がある。

 母さんは異例で全属性の魔法が使えるが、私のように全属性が同等レベルで扱えるというわけじゃない。

 得意な系統、苦手な系統は母さんにもあるのだ。

 どう致しましてと伝え、家の中に戻る。

 行きと同じように車に乗り、ポータル石の前に着く。

 これで、バニラおばぁちゃんともお別れだ。

 と思ったら、いきなりバニラおばぁちゃんにハグされた。


「レンちゃん、もし何か困った事が起きたら、アタシに連絡してね。必ず力になるからねぇ。もちろん、なんでもない時にだって、いつだって来て良いし、どれだけだって居て良いんだからねぇ?」


 なんて、嬉しい事を優しく言ってくれるバニラおばぁちゃん。


「うん、ありがとうバニラおばぁちゃん」


 そう言って、離れてポータルを起動した。

 毎回、これの後に泉の前に着くが、違和感が半端ない。

 さて、家に帰るとするかな。

 これでアーネストが先に帰っていたら、本当に役目は終わりだ。

 家に向かって歩いていると、中から喧騒が聞こえる。

 思わず笑ってしまう。うん、先を越されたか。


「ただいまー」


 言って扉をあける。

 そこには、倒れるアーネストに母さんと兄さんが抱きついていた。

 うん、いつもの光景だな。


「おかえりぃレンちゃん!」


「ああ、蓮華も無事帰ってきてくれましたね、安心しました」


「蓮華、お帰り。俺も今帰った所なんだけどさ、まずは母さんと兄貴を引き離すの手伝ってくれね?」


 なんて三者三様に言ってくるから、思わず笑ってしまった。

 それから居間へ戻り、母さんと兄さんは台所へ。

 アーネストと二人、少し話をしている。


「そっか、蓮華は道を決めたんだな」


「ああ。それで、その……アーネストはどうするつもりなんだ?」


 少し聞くのに勇気が要ったが、聞かないわけにもいかない。

 しかし、聞こえてきた言葉は。


「そうだなぁ、一度帰るか」


 帰る、そう聞こえた。


「そう、か。アーネストは帰るん、だな」


「ああ、母さんや父さん、それに兄さんや友達のあいつらに話さないわけにはいかないだろ?」


 その言葉に、黙って頷くしかなかった。

 そこへ。


 パリィィン!


「「!?」」


 二人そろって驚いて見た先には、母さんがこちらを見ながら、お皿を落とした所だった。


「そ、そうだよね……アーちゃん、帰っちゃうんだね……」


「え?うん、そうだけど……」


 その言葉を聞くたびに、心にズキリとした痛みを感じる。

 そこへ。


「アーネストォォォッ!!」


 物凄い勢いで、兄さんが叫びながらアーネストを抱きしめた。


「ぐはぁっ!あ、兄貴、苦しいって!?」


「今回ばかりは可愛い弟の言い分でも聞いてはやれませんよ!?アーネスト、一体何が不満なのです!?」


「アーちゃん……!」


「アーネスト……」


 私と母さん、兄さんが揃ってアーネストを見つめる。

 いや兄さんは見つめるというか抱きしめてるんだけど。


「いやだから、ちゃんと聞いてた?一度帰るけど、また戻ってくるつもりなんだけど……え、もしかしてできなかったりするの!?」


「「「え?」」」


「え?」


 三人と一人が揃って呆けるこの図はなんだろうか。

 沈黙を破るようにアーネストが続ける。


「母さんって俺を呼んだわけで、送還もできるんじゃないかなぁと思ったんだけど、違った?」


「う、うん、できる、よ?その、何回もは難しいけど……」


 母さんがおずおずと答える。


「良かった。でさ、俺は家族や友人に、お別れを言いたいんだよ。まぁ、信じて貰えるかは分からないけどさ。元気でやってくから、心配するなってさ。蓮華じゃ女の子になっちまってるから、無理だろ?」


 それは確かに。

 仕事場にも行けはしない。

 というか私は戻れるのかどうかすら分からないけども。


「じゃ、じゃぁ、アーちゃんは帰ってきてくれるの……?」


「もちろんだよ。今の俺はもう、母さんと兄貴、それに蓮華の居ない生活なんて考えられないってば。ここが、俺の居場所だって思ってるよ」


「アーちゃぁぁぁん!」


 母さんがアーネストを抱きしめる。


「ぐぇっ……く、苦しいから母さん!美人に抱きしめられて嬉しくないわけがないのに、苦しさが上回るんだけど!?」


 アーネストの言葉に笑ってしまう。

 だけど、アーネストがここを居場所と言ってくれた事は嬉しかった。

 だから、らしくない事をしてしまった。


「ちょ、蓮華まで!?」


「良かった、アーネスト。お前が居なくならないでくれて」


 そう言って、後ろから抱きしめてしまった。

 母さんが前から抱きしめていたから、必然的にそうなったのだが、その後の言葉で私は後悔した。


「やっぱ、母さんよりは小さいよな」


「うん、死ねアーネスト」


 ゴキゴキゴキィ!!


「ぎやぁぁぁぁっ!骨が、骨が折れたって今ぁぁ!?」


 アーネストが叫んだ。

 知るか。


「ぷっ……くくっ、アーちゃん、レンちゃんったら……あははっ……!」


 母さんが涙を拭いながら笑う。


「やれやれ、しょうのない弟ですね」


 なんて、さっき滅茶苦茶慌ててた人とは思えない兄さんが言う。

 だから、追撃してあげる事にした。


「兄さんだって、アーネストが帰るって聞いた時、かつて無いほど驚いてたくせに」


「ぐぅっ!?蓮華、それは言わないお約束という奴ですよ……?」


 なんて顔をしかめながら兄さんが言ってくるので、思わず


「あっはは!兄さんのそんな顔初めて見ました。あははっ!」


 と笑ってしまった。

 兄さんにはやれやれという顔をされたけれど、怒っていないのは分かる。

 だって、兄さんも笑ってるのだから。


「い、良いから、笑ってないで回復魔法を……割と、俺致命傷なんですけど……?」


その言葉に、私達三人が更に笑ったのは言うまでもない。




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