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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第一章 オーブ編

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23.3つ目のオーブへの道中

 翌朝。

 昨日はバニラさんとずっと話をして終わった。

 私が取るべき道を、しっかりと決めた。

 母さんと兄さんに迷惑はかけない。

 それでいて、穏やかに今後を暮らす方法を。


 私はもう、帰れても帰るつもりはない。

 元の世界よりも、こちらの世界を選んだ。

 まぁ、女性になっている点は非常に残念ではあるのだけど……。

 その点はアーネストが羨ましくもあり。

 でも、女性なら女性で、その人生の楽しみ方を後で見つけようと思う。

 それに、アーネストはもしかしたら、帰る方法があれば、帰るかもしれない。

 むしろ、私は帰りたいと思っても帰れない気がした。


 だから、これで良い。

 最悪、アーネストは居なくなるかもしれないけれど、

 アーネストがそう決めたなら、無理強いはしない。

 まぁ、実際に別れの時が来たら、ちょっと泣くくらいは許してほしい。

 それくらいには、アーネストはもうなくてはならない存在になっている。


「レンちゃん、準備は良いかしらぁ?」


 バニラさんが声を掛けてくる。


「はい、バニラさん」


 そう簡潔に答える。


「あらぁ……アタシの事は、バニラおばぁちゃんって呼んでって言ったじゃなぁい」


「えぇぇぇ……」


 無茶を言わないでほしい。

 どこの世界に、美人の金髪エルフをおばぁちゃんなんて呼べる人が居るのか。

 身長も私より高いし、モデルみたいな体型のくせに、話し方が間延び口調の穏やかなお姉さん、それがバニラさんだ。

 断じておばぁちゃんに見えない。


 聞けば、凄い数の縁談がきていたみたいだけど、誰とも結ばれるつもりはないと公言しているらしい。

 だから、この人は独身だ。

 だからなんだって話だけども。


「無茶言わないで下さいよ……こんな綺麗なお姉さんをおばぁちゃんなんて言ったら、私は目が腐ってるんじゃないかって疑われますよ……」


 本気でそう言ったのだが。


「もぅレンちゃん、アタシを煽ててもなんにもでないんだからねぇ」


 くねくねと動いて言ってくる。

 そんな姿を無視して言う。


「それじゃ、行きましょうかバニラさん」


 おばぁちゃんとは呼ばない。


「レンちゃぁぁん」


 呼ばないったら呼ばない。


「レンちゃん……」


「だぁぁ!なんでそんな可愛い顔で見つめてくるんですか!もぅ!私とバニラさんだけの時だけですよ!?良いですねバニラおばぁちゃん!」


 とやけくそ気味に言った。

 しまった。

 目を輝かせるバニラさん。


「えぇ!えぇ!それでいいわぁ!ありがとぅレンちゃん!」


 なんでこの人はおばぁちゃん呼びに拘るのか……。

 私には理解不能だった。

 こんな可愛い美人のおばぁちゃんが居てたまるか。

 いや目の前に居るんだけど。

 一人でノリ突っ込みしないとならないのが辛い。

 あぁ、アーネストが居れば……。

 思ってもしょうがないので、行く事にした。

 しかし……。


「なんていうか、通路の広い水族館を歩いてるみたいですね。呼吸も普通にできるし」


 そう、水の中何て言うから、あの真っ黒なスーツでも来て、ボンベの代わりに魔道具で酸素を作って潜水するのかと思ってた。


「うふふ、最初はオーブへのこんな道なんてなかったんだけどぉ、それだとオーブに魔力を込めてくれる方が辛いと思ってねぇ。だから、オーブまでの道をねぇ、魔道具で酸素を作り出して、歩けるようにしたのよぉ。もちろん、気圧も一定に保つようにしてねぇ」


 ホントこの人は凄いな。


「あ、それじゃバニラおばぁちゃんは前回の魔力を込めた人を知ってるんですか?」


 私のおばぁちゃん呼びに気を良くしたのか、笑顔で答えてくれる。


「あらぁん。それはレンちゃんが一番良く知ってる方よぉ?」


 え、それってもしかして。


「母さん?」


「そうよぉ。レンちゃんなら知ってると思ってたわぁ」


「いや、母さんそんな話しなかったし……というか、自分でできるならどうして……」


 と言いかけて気付いた。

 そうだ、母さんは厄災の獣を体内に封じ込めていたんだ。

 自分で、行けなくなるかもしれなかったんだ。


「アタシには、何故今回マーガリン様がこなかったのか分からないけれどねぇ、レンちゃんとアーネスト君に託したのは、きっと何か理由があったんだと思うわぁ。大丈夫、きっといつか話してくれるわぁ」


 バニラおばぁちゃんはそう言うが、実はすでに知っていた事だった。


「そう、だね」


 なので、苦笑して答えておいた。

 にしても、この通路のガラス張りとでも言うのだろうか、その外に見える魚や、いわゆるサメのようなものまで見えて、ちょっと怖い。


「あらぁ、やっぱりレンちゃんも、深海の魚達にはびっくりするわよねぇ」


 頷いておく。

 だって、知識では知っていても、実際に見るのは初めての魚が多い。

 中には、魔物に見える魚も……。


 ゴォォォン!!


「っとぉ!?突撃してきたよ!?大丈夫なの!?」


 私は慌てる。

 なんせ、ここでガラスが割れたら溺れる。

 最悪ここで死んでしまうじゃないか。

 泳ぎながら戦うなんて真似、できる気がしない。

 バニラおばぁちゃんは笑いながら答える。


「大丈夫よぉ。ちゃんと耐久力は測ってあるからぁ。そもそも、あれは防壁に当たっただけで、ガラスに届いてもいないからねぇ」


 その言葉に安心したが、やはり怖いものは怖い。

 水の中でも戦えるようにしておかないとなぁと思った。


 それから少し進んだら、通路に魔物が居た。

 が、バニラおばぁちゃんの魔法で一瞬で消し炭になってしまった。

 なんで通路に魔物が居るのか聞いたら。


「自然発生したんでしょうねぇ。オーブの魔力と、龍脈のマナが満ちている場所に繋がっているんだからぁ、そういう事が起きても不思議じゃないわぁ。だからぁ、アタシは定期的に見て周っているのよぉ、これもお仕事のうちだからねぇ」


 成程と思うと同時に感心した。

 でもそれ以上に思うのが、バニラおばぁちゃんの魔力の洗練さが凄まじい事だ。

 同じ魔力を使っているのに、凄く圧縮された、力強い魔力。

 例えるなら、私が水道の蛇口にホースをつけた時、そのままの勢いで流れる水だとしたら、バニラおばぁちゃんは、ホースの先をつまんで、勢い良く出していると言えば想像しやすいだろうか。


 それでいて、魔力の流れが清流のように綺麗で、圧倒される。

 私が10の魔力で行う事を、バニラおばぁちゃんは1の魔力で行っている、という感じだ。

 魔力の最大量は間違いなく私の方が上だけれど……私は多分、バニラおばぁちゃんに勝てない。

 母さんが、私の魔法の威力はおかしいなんて言ってたけど、バニラおばぁちゃんは更に上だ。

 私のように強くはないなんて、謙遜も良いところだと思う。

 これで色々な物を開発して人々の役に立っていて、おまけに性格も良いなんて完璧すぎる。


 あ、いや頭はぶっとんでた気がするな、出会いが忘れられない。

 どんな人にも欠点はあるという事だろうか。

 色々考え込んでいたら、バニラおばぁちゃんが見ていた事に気付いて、頭を傾げる。


「レンちゃん、百面相して可愛いんだからぁ。ずっと見ていたくなっちゃったじゃなぁい」


 なんて言ってくる。

 私は顔が真っ赤になっているだろうな、顔が熱いんだもの。

 それから、バニラおばぁちゃんと雑談しながら、敵が出たら瞬殺し、先へ進んだ。

 奥へ進む毎に下へ向かうからか、明かりが魔道具の光だけになり、幻想的な景色、といえば聞こえは良いのだが、気持ちの悪い姿をした魚が多くなってきて、あんまり周りを見たくなくなっていた。

 そんな時に。


「そろそろオーブの間に着くわよぉレンちゃん」


 とバニラおばぁちゃんが言ってきた。

 気を引き締める。

 だって、今まで全部、オーブがある場所には敵が居た。

 今回もそうだと思っている。

 だと言うのに。


「やっと来てくれたんですねレン。待ちくたびれたじゃないですか」


 なんてフレンドリーに言ってくれたのは、ウンディーネだった。




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