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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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16話.二人の過去と今

 追いかけてくる魔族から逃げ、黒いローブに身を隠した。

 街にはあまり寄りたくなかったけれど、食料を得る為に仕方が無かった。

 ゴミ箱を漁り、まだ食べられそうな食料を手に入れる。

 ティーパックと呼ばれる、お湯に浸せば味が出る袋と、食べ掛けのチョコレートというお菓子を手に入れ、街を離れた。


「お兄ちゃん、ごめんね……私のせいで、ごめんね……」

「リタのせいなんかじゃないよ、謝らないで。僕はリタを守るって、父さんと母さんと約束した。僕が、絶対に守るから……!」

「うん……」


 リタは背中の両翼を長時間隠す事ができない。

 だから、街で過ごす事はできなかった。

 街の外には魔物が多いけれど、魔王達の争いから逃げるように、魔物も散り散りになっていたのが不幸中の幸いだった。


 街から少し離れた山の麓で、たき火をつけて二人毛布に包まる。

 運良く防空壕の様な洞窟を見つけたから、利用させてもらっている。

 隣のリタは震えていた。

 きっと、寒さでじゃない。


「大丈夫、大丈夫だから……」


 そうリタに声を掛けてすぐ、凄い音がした。

 まるで、隕石でも落ちてきたかのような。

 もしかして、この近くで戦いが!?



「お、お兄ちゃんっ……」


 僕は急いで立ち上がり、外へ出ようとした。


「お兄ちゃん、どうするの……?」

「僕は様子を見てくる。もし戦いになってるなら、位置を把握しておきたいから」

「お兄ちゃん……」


 裾をぎゅっと握ってくるリタに、安心させるように笑えただろうか。


「大丈夫、すぐ戻るからね」


 音がした方に向かうと、そこには血だらけの魔族が倒れていた。

 周りには他に誰も居ないのを確認して、慌てて近寄る。

 良く見ればその魔族は、妹と同じ両翼の色が違った。


「う、ぐ……」


 まだ、意識があるっ!


「大丈夫ですかっ!?」

「……き、みは……にげ、なさい……」


 咄嗟の事だったけれど、誰かに追われているんだろうという事と、逃げろと言ってくれた事から、悪い魔族じゃないと判断した。


「こっちへ……!」

「なに、を……」

「まだ、歩ける力はありますか!?僕に持たれても良い、追われてるなら、助けます!」


 僕が本気で言っているのが伝わったのか、足を引きずりながらもついてきてくれた。

 そして、僕達が寝床に使おうとしていた洞窟へと連れてきた。


「お兄ちゃんっ……!」


 リタが駆け寄ってきて、僕に抱きついてきた。


「リタ、心配かけてごめんね。この方が、倒れてたんだ。癒せるかな?」

「酷い、怪我……!今、治します、ね!」


 リタが両手を前に出し、光魔法を唱える。

 まばゆい光が体全体を包み込み、先程まで血が出て酷い事になっていた部分が、綺麗になっていく。


「ふぅ、おしまい、です。大丈夫、ですか?」

「ありがとう……君は魔族なのに、回復魔法が使えるんだね」

「っ!!それ、は……」

「いや、恩人に不躾な事を言ってしまったね。気にしないで欲しい」


 そういって微笑む彼、彼女?は美しく、思わず見惚れてしまった。


「助けてくれてありがとう。私は……」


 きゅるる……


 自己紹介をしようとしてくれたのだろうけど、可愛い音が鳴った。


「ご、ごめんなさい。お兄ちゃんが無事で、安心したらお腹が……」


 顔を真っ赤にしたリタが、もじもじとしていた。


「あはは。それじゃ、ご飯にしよっか。僕はレオン、この子がリタです。理由は聞きませんけど、夜が明けるまではゆっくりしてください。ここは見つけにくい洞窟ですから、大丈夫だと思います」

「これ、お兄ちゃんの水魔法と火魔法で作ったお湯に、ティーパックをいれた飲み物と、チョコレートです!」

「……良いのかい?それは、君達が一生懸命手に入れた飲み物と、お菓子だろう?」

「良いんです。困ったときはお互い様じゃないですか」

「……!そうか、ありがとう。私はルシファーという。レオン、リタ……君達に感謝する」



 それが、ルシファーさんとの初めての出会いであり、僕達に『コールドスリープ』を掛けてくれた方だったんです。




 カチャン。

 紅茶を一口飲んで、カップを置く音が響く。

 大罪の悪魔の1人、"傲慢"のルシファーか。

 アスモデウスさんや、この地の支配者であるレヴィアタンの仲間、なんだよね。


「ねぇノルン、ルシファーさんの領地って、ここから遠いの?」

「滅茶苦茶遠いわね。っていうか、ここからだと反対側だし、魔界を横断する形になるわよ」


 うへぇ、そんなにか。


「私も行った事ないから『ポータル』は使えないし、これからの移動も考えるなら、馬車も用意した方が良さそうね」

「なんで?」

「アンタね、全員で飛んでいくとか阿呆な事考えてるんじゃないでしょうね」


 考えてましたとは口が裂けても言えない雰囲気だったので、コクコクと頷くことにする。


「はぁ、ったく。アンタが常識の無い奴だってのは分かってるけどさ」


 ノルンだって大概じゃないかーって言おうと思ったけど、藪蛇(やぶへび)になりそうだったので我慢した。


「えっと、それはともかく。レオン君とリタちゃんも、私達の旅に付き合うって事で良いの?」


 二人に問いかけたら、姿勢を正して答えてくれた。


「はい!もしご迷惑でなければ、僕達もご一緒させてくださいっ!お願いします!」

「お願い、します!私達、なんでもします!だから……だから……!」


 ふふん、なんでも、と言いましたね?

 言質取っちゃいましたよ?


「蓮華、あんた悪い顔してるわよ」

「そんなバカな」


 というわけで、私は今二人の服を買いに来ている。

 もちろんノルンも一緒だ。

 レオン君とリタちゃん以外の子供達は、アンジェさんと一緒にギルドへ先に向かった。

 お昼くらいに来てくれたら良いとの事だったので、この買い物を終えてから行くつもりだ。


「レオン君これカッコイイよ!リタちゃんもこれ可愛い!うわー、迷うね!!」

「蓮華、アンタね……」


 ノルンに呆れた目で見られたけど、二人はすっごく可愛い見た目をしているのだ。

 それが黒いローブを羽織っていて、中もボロボロな布の服を着ていた。

 アンジェさんに服まで用意してもらうのも気が引けるし。

 というわけで、先に二人の服と、それから食器類も買っちゃおうと思ったのだ。

 ポケットハウスの中に、置いておきたいからね。


「あ、あの、蓮華お姉ちゃん、良いんですか?」

「良いに決まってるじゃないか。お金なら大丈夫、ノルンお姉ちゃんが出してくれるからね」

「蓮華ー!!」

「だって私お金持ってないんだもん」

「それでなんで堂々と買い物に行こうとすんのよ!?」

「え?だってノルンだって同じ気持ちだと思って」

「うぐっ……!ま、まぁそうだけど……!」

「ごめんね二人とも。ノルンはこれでツンデレだから、自分から言い出さないと思って」

「「ツンデレ?」」

「蓮華ぇぇぇぇっ!!」

「ぎにゃぁぁっ!?両腕を(つね)るのはやめてぇ!?」

「「あは、あははははっ!!」」


 私とノルンのやりとりを見て、二人が笑いだした。

 うん、子供は笑ってるのが良いよね。

 ヒリヒリとする腕をさすりながら、二人に似合いそうな服を選んで、試着してもらった。

 流石に全部買うとかできないので(ノルンのお金だし)、着替えも含めて3着程買う事にした。

 二人ともとても嬉しそうだ。

 ちなみに、リタちゃんの翼については、認識阻害の魔法を掛ける事にしておいた。

 大丈夫だと思うけど、リタちゃんの気持ちの問題だからね。

 リタちゃんがもう大丈夫と思えるまでは、そうしておく事にした。


 買い物も終えたので、今度はギルドへと向かう事にする。

 まだお昼まで時間はあるけれど、早めについても問題ないだろう。

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