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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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8話.後任候補③

 黒いゲートを潜ると、そこは白い空間だった。

 地面はあるけど、その地面も白く、他には何もない。


「エリク、あれ……!」


 アークが指差す先を見ると、何もない空間から、黒い影が無数に生まれている。

 その影は人の形や犬のような形と、それぞれ違う形へと変わった。

 これはもしかして、アーネスト様が闘技大会で使った……!


「お前達には、こいつらと戦ってもらうぜ?」


 声は聞こえるけれど、アーネスト様の姿は見えない。


「こいつらは俺の力で生み出した影兵だ。一体一体、それぞれ違う魔物をイメージして創った。こいつらを全滅させれたら、タカヒロさんは合格って言ってくれたぜ」


 白い空間を、無数の黒い影が埋め尽くす。

 これらを、全部……!


「勿論最初から一気に全部突っ込ませるような事はしねぇよ。ただ、単調に攻めてくるとは思うなよ?俺からは以上だ。それじゃ、準備は良いな?」


 俺は周りの皆を見渡す。

 それぞれが武器を構え、頷くのを確認する。


「大丈夫です!アーネスト様!」

「おし!それじゃ戦闘開始だっ!」


 黒い影が3体、こちらへと駆けてくる。

 犬のような形の影だ。

 その軌道から、狙いは俺ではない事に気付く。


「お前達の相手は俺だ!『挑発』!」


 俺の聖騎士スキルの発動に、敵はターゲットを俺へと変えた。

 攻撃を防御するように盾を構える。

 けれど、俺に攻撃が届く事は無かった。

 飛び掛かってくる3体の黒い影に、矢と短剣、そして火魔法が直撃して、その影が消えたからだ。


「ありがとう皆!」

「お前が敵を引き付けてくれるのは分かってたからな、簡単だぜ」

「ええ、動きが分かれば当てるのは造作もありませんから」

「うん、後ろは、任せて、エリク」

「一応『プロテク』掛けてるから、攻撃を受けてもダメージは少ないはずだけど、痛かったら言いなさいよ!すぐ治してあげるから!」


 頼もしい仲間達の言葉を聞いて、俺は視線を前へと移す。

 まだまだたくさんの影が居る。

 全て、倒す!


「行くぞぉっ!!」

「「「おおっ!!」」」




 それから、1時間程俺達は戦い続けた。

 周りの影は全て倒せた、と思う。

 背後からパチパチパチ……と手を叩く音が聞こえた。

 振り返るとそこには、両手に剣を構えたアーネスト様と、タカヒロさんが居た。


「よくやったなお前達。結構色んなタイプの影を創ったんだけどさ、全部に対応できてたじゃねぇか。勉強の賜物だな!」


 そう褒めてくれるアーネスト様に、俺達は笑う。

 努力は当たり前のようにしてきた。

 それが結果として中々でないけれど……それでも、アーネスト様は俺達の実力を褒めてくれる。

 それが嬉しかった。


「これは試験とは関係ねぇけど、お前達の戦いを見てたらさ、うずうずしてきたんだよな!良けりゃ、俺と戦ってくれねぇか?」


 その言葉に、俺達全員が震えた。

 恐怖でじゃない、喜びで、だ。

 アーネスト様は、その強さから大抵の者と戦わない。

 皆それが分かっているから、言葉で諦めてしまうのだ。

 戦ってほしいと言って、お前じゃ楽しめないと思うなって言われたら、誰だって諦めてしまうだろう。

 そんなアーネスト様が、俺達と戦いたいと言ってくれたんだ。

 嬉しくないわけがない。


 俺は皆を見渡す。

 その顔は、戦いたいとかいてあるのが分かったから、聞かない事にした。

 ただ、武器を構える。


「お願いします、アーネスト様!」

「そうこなくちゃなっ!タカヒロさん、この空間の維持はまだ出来るよな?」

「はは、任せろ。いくら消費が激しいと言っても、丸一日でも余裕はあるさ」

「流石だぜ。そんじゃ、準備は良いか?」


 アーネスト様の剣は、刀のように細く、2mくらいの長さだ。

 そんな扱いづらい剣を、両手に持っている。

 その攻撃範囲は恐ろしく広く、そして攻撃力も恐ろしく高いというのに、その速度は常人では捕えられないくらいに速い。

 気を抜けば、一瞬でやられてしまう。


「大丈夫です!」


 気合を入れて、そう答える。

 その言葉の後、アーネスト様の姿が消えたと思ったら、一瞬で目の前に現れた。


「なっ!?」

「甘ぇっ!」


 盾を構えたというのに、剣で弾き飛ばされてしまう。

 これでは防御が出来ない。

 アーネスト様を目がけ、剣を振るうが、難なく避けられる。


「隙だらけだぞエリク!っと!?」


 俺の攻撃後の隙を狙って、アーネスト様が剣を振るおうとした所へ、サージの弓が飛んだ。

 それを避けた場所へソレイユの火魔法が飛び、アーネスト様はそれを剣で薙ぎ払う。


「流石はアーネスト様、魔法を避けるのではなく掻き消すなんて……!」


 だが、それでも相手の力を思えば驚きは最小限。

 ソレイユは連続で魔法を唱える。


「皆!この魔方陣から出ないでね!『ホワイトサークル』!」


 ミリーが唱えた魔法は、魔方陣の上限定だが、与ダメージ上昇、被ダメージ減少の効果がある範囲魔法だ。

 光魔法の中でも中級魔法だが、術者によって効果が大分変わる為、腕の見せ所のある魔法ともいえる。


「効果時間は短いから、急いで!」

「ん、射抜く、よ!『ぺネトレイトアロー』」


 風を纏い、凄まじい音を鳴らしながら放たれる弓を、アーネスト様は回避する。


「さす、が……!!」

「サージ!そのまま射続けてくれ!」

「りょう、かいっ!」


 サージに攻撃を続けて貰う事で、アーネスト様の行動を制限させる。

 そこへ、俺も突撃する!


「障壁を貫通しろ!『粉砕天衝』!!」

「そんな大振りじゃ、当たら……おおっ!?」


 アーネスト様の足元の地面が抉れて、体制を崩す。


「いけぇエリク!」


 アークの仕業だ。

 戦況をちゃんと見て、アーネスト様の動きを観察し、ここだという場所にトラップを仕掛けたのだろう。

 このチャンスは逃さない!


「うおぉぉぉっ!!」

「へへっ、80点ってとこだなっ!」


 俺の一撃は、地面に激突する。

 くっ、避けられた!


 ここからは、特に話せる事はなかった。

 空振りをした俺をアーネスト様の双剣が一薙ぎし、俺は倒れた。

 前衛である俺が倒れた事によって、後衛の皆も総崩れした。


 結果、俺達は全員横になっている。


「はぁっはぁっ……あ、アーネスト様、強すぎますって……」

「はぁ、ふぅ、本当に……どうすりゃ動き止めれるんすか……あのトラップ、全魔力込めた本気の足止めだったんですけど……」


 俺達の呻き声に、アーネスト様は笑う。


「そうだな、もっと皆で同じ事してみたら良かったんじゃないか?ま、そういうのはタカヒロさんに任せるけどな!」

「丸投げかアーネスト。だが、面白そうな奴らなのは確かだな。お前達、普段の授業はどれくらい取っているんだ?」


 慌てて俺達は立ち上がり、答える。


「えっと、俺は受けられる時間全部……」

「俺もです」

「私も、そうです」

「アタシも全部受けてるよ!蓮華先生、じゃなかった、蓮華様の授業が一番楽しかったから、無くなって残念なんですけど……」

「僕も、全部、です」

「成程……」


 俺達の言葉を聞いて、タカヒロさんは少し考えこむように目を瞑った。

 少ししてから目を開けて、驚く事を言った。


「よし、それなら単位は問題ないだろう。明日からはどの授業も受けるな。俺がその時間全てを使って、お前達を鍛えてやる」

「おお、タカヒロさんマジだな!俺も時間あったら覗きに行くからさ、頑張れよ!」

「「「はいっ!!」」」


 こうして俺達は、魔王軍参謀であるタカヒロさんに、鍛えて貰える事になった。

 アーネスト様の期待に応える為にも、そして……俺の目標に近づく為にも、これから頑張ろうと思う。


「よっしゃ!それじゃ今日はこれから皆で遊びに行こうぜ!」

「「「えっ!?」」」


 あのアーネスト様と、一緒に!?

 アーネスト様はお忙しい方だから、基本的に誘われても断る姿しか見ない。

 例外は蓮華様だけど……それなのに、俺達なんかを誘ってくれるなんて……!


「タカヒロさんも良いよな!?」

「俺は構わないが、アリシアを誘わないと後で拗ねるぞ?」

「ぐっ……確かに。なら、一応誘うか……」


 その言葉に、俺達は眩暈がした。

 アーネスト様だけでなく、アリシア様まで!?

 俺達5人は顔を見合わせた。

 ガチガチに緊張している自分達を見て、苦笑してしまうのだった。

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