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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第一章 オーブ編

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22.バニラ=ハーゲンダッツ

 それから、私のこの世界に来た経緯を話して、バニラさんからこの国の事を詳しく聞いた。

 ロイヤルガードという階級と、騎士団の事等だ。

 ロイヤルガードを頂点として、その下に騎士団長と魔法師団長がそれぞれ君臨し、そこから更に隊長職がついていくんだそうだ。

 上に行くには功績と実力が必要で、試験等もあるらしい。

 そこら辺はある程度勉強していたので、知ってはいたが。

 途中、何度かメイドさんが来て、お菓子や飲み物を持ってきてくれたのだが、これが全てとても美味しかった。

 話を聞いたら、バニラさんがレシピを公開して広めたそうな。

 この人なんでもできるな……。

 そうそう、バニラさんに種族を聞いたら、ハイエルフとの事だった。

 だから、320歳でも若い方なのよぉ本当はって言ってた。

 でも、人間換算したらおばぁちゃんだから、おばぁちゃんって言う事にしてるのぉって。

 こんな見た目可愛くて若いおばぁちゃんがいてたまるかと思ったのは言わない。

 ハイエルフには寿命がないらしい。

 中には1万歳を超える者もいるらしいが、そういった方達はもう、外の世界へ出てこないのだそうだ。

 驚いたのが、世界樹と一体化して眠っているとの事。


「にしても、世界樹の化身ねぇ。レンちゃん、辛くない?」


 なんて聞いてきた。


「別になんとも思わないですけど」


 って言ったら、悲しい表情をするバニラさん。


「レンちゃん、貴女はきっとぉ、これから様々な事に巻き込まれるわぁ。その力を狙ってねぇ。レンちゃんが望もうと、望むまいと、それらは唐突にやってくるのぉ」


 なんとなく、漠然と厄介ごとに巻き込まれるだろうなぁとは思ってた。

 だけど、私は一人じゃない。

 アーネストが居るし、母さんに兄さんも居る。

 だから、何も心配していなかった。


「大丈夫です。私は、一人じゃないので」


 そう笑顔で言った。

 バニラさんはそれを見て。


「そう、心から信じられる人が居るのねぇ。それなら……大丈夫ねん。アタシもレンちゃんにそう思って貰えるように頑張るわねぇ」


 なんて言ってきた。

 その言葉に。


「え、えっと」


 と言いよどんだのは仕方ない。

 だってそれは、バニラさんは今は含んでいないと言っているようなものなのだから。

 でも、そんな事は当たり前だと言わんばかりに


「うふふ、アタシもまさか会ったばかりでそんな存在になれるなんて思ってないわぁ。でも、水魚の交わりって知ってるレンちゃん?アタシは、レンちゃんにそんな想いを抱いてるのぉ。だってそうでしょぉ?レンちゃんは、アタシの話を全く疑っていないものぉ」


 言われてハッと気付く。

 そういえば、何故かバニラさんの話を疑おうとは思わなかった。


「アタシもね、本気で話してるつもりよぉ。でもね、アタシの話を最初から信じてくれた人は居なかったわぁ。もちろん、アタシが階級を上げていくにつれて、疑う人は居なくなったけれど。でも、アタシの事を全く知らない人が、アタシの言う事を信じてくれた人なんて、一人も居なかったのよぉ」


 悲しげにバニラさんが言う。

 そうだ、バニラさんだって、前世の記憶を取り戻してから、それを伝えるのに苦労したはずなんだ。

 結果を出さなければ信じて貰えないから、苦手な事にだって挑戦し続けてきたはずだ。

 おまけにハイエルフ、好奇の目にだって晒されたはずだ。


「レンちゃん、ありがとう。今、アタシの事で苦しんでくれたでしょう?そんな貴女だから、アタシは……」


 そう言って、私を抱きしめるバニラさん。

 私はそのまま身を任せる事にした。


「レンちゃんも辛かったよねぇ。だって、いきなり知らない世界に来たんだものぉ。幸いにも、会えた方は素晴らしい方だったから、そう感じなかったのかもしれないけどぉ……今までの繋がりを全て失って、悲しくないわけがないわぁ。家族、仲の良い友達、毎日していた趣味とか……全部、全部なくなっちゃったんだものぉ。それらを失って、異世界に来たのをただ喜べる人は、元の世界をよほど嫌ってた人だけよぉ。レンちゃんは、家族も大事にしていたし、親しい友人も居たんでしょぉ?」


 その言葉に、涙が溢れてくる。幸い、バニラさんに抱きしめられているので、見えてはいないはずだ。


「ずっとしていた趣味だってあったんでしょぉ?それらを全て失ったのよぉ。辛くないわけがないわぁ。でも、この世界で生きて行こうと、切り替えたんだよねぇ。偉いわぁレンちゃん……でもねぇ、貴女だって甘えて良いのよぉ?三十五年と、一年だったかしらぁ?そんなの、アタシにとって子供と変わらないわぁ」


 その言葉に、年甲斐もなく泣いてしまった。

 そうだ、寂しくなかったわけじゃない。

 確かに元の世界ではおっさんと呼ばれるくらいの年齢だった。

 だけど、両親のどちらかでも亡くなれば泣いただろうし、兄だって亡くなれば泣いたに違いない。

 友達だって、仕事をするようになってからは、あまり会えなくはなったが、スマホを使って連絡くらいはとっていた。

 いつものお互いの愚痴を言いあい、また月曜日から仕事を頑張る、その毎日。

 その合間に趣味のゲームをしたり、花を育てたり、読書をしたり……。

 そんな毎日が、急に無くなった。

 本当は辛かった、苦しかった。

 でもそれを、悔やんでいる母さんの前で出すわけにはいかなかった。

 だから、封じこんだ、心の奥底へ。

 アーネストだってきっと同じだ。

 だって私達は大人だから。

 成人した大人だったから、そうした。

 辛い事は我慢するのが普通だったから。

 でも、バニラさんは、そんな私を子供だと言う。


「レンちゃん、アタシはマーガリン様の代わりにはなれないけれどぉ、レンちゃんを支える一人になってあげたいのぉ。だから、頑張れなんて言わないわぁ。頑張ってる子に、頑張れ何て言わない。だから……自分のペースで、良いからねぇ」


 なんでこの人は、こんなに心に響く言葉をかけてくれるんだろうか。

 しばらくの間、肩を震わせて嗚咽を漏らす私を、バニラさんは黙って抱きしめ続けてくれた。

 そして数分だろうか、数十分だろうか……分からないけれど、経ってから離れる。

 顔は真っ赤に違いない。


「うふふ、恥ずかしがる事なんてないのにぃ」


 なんて言ってくれるが、無茶を言うなと言いたい。

 私は今後、この人に頭が上がらない気がする。

 それからバニラさんが、提案をしてきた。


「レンちゃん、オーブの事だけどぉ、今日はこのまま屋敷に泊まってぇ、明日から行かないかしらぁ?」


「え?私としては今日これから行こうかと思ってたんだけど、どうして明日?」


 早く終わらせれるなら、終わらせてしまいたかったのだ。


「うぅん、それなんだけれどぉ……レンちゃんは今後の事、考えてるぅ?」


 今後?オーブに魔力を注いだ後の事だろうか。

 そういえば、別に何も考えていなかった。

 オーブに魔力を注いで、地上がまた安定期を迎えたなら、私の役目は終わり。

 元の世界に戻れるのかも分からないし、戻れないなら、アーネストや母さん達とゆっくり過ごせば良いと考えていた。


「その様子だとぉ、何も考えてなかったみたいねぇ」


「うっ」


「レンちゃん、マーガリン様が、どうしてレンちゃんとアーネスト君に、手加減の仕方を念入りに教えたか、分かるかしらぁ?」


 それは、人に怪我をさせない為だよね?言われなくてもそれくらいは分かる。


「つまりねぇ、人達が生きる場所で、貴方達を住ませるつもりだという事よぉ」


「!!」


 その言葉に衝撃を受ける。だって、母さんが、私達を……?


「レンちゃんにアーネスト君は、国にとって放置できない存在なのよぉ。だって、私達ロイヤルガードや、インペリアルナイトですら、相手にならない程の力の持ち主を、放置しておけると思うのぉ?」


 そこまでは考えていなかった。


「マーガリン様は、特別公爵家のご当主様という立場もあるし、ユグドラシル領をずっと守ってきてくださった実績もあるわぁ。だから、誰も何も言えないのぉ。けれど、貴方達は違うわよねぇ」


 その言葉に項垂れるしかできない。


「だから、多分だけれど……レンちゃんとアーネスト君は、学園に入学する事になると思うのぉ」


 学園?そういえば、母さん達とギルドに行った時に、学校がどうとか言っていたような。


「そこで、貴方達の立場を明確にして、貴方達に役職を設けて、管理しようとするのでしょうねぇ」


 管理、その言葉に少し反応する。


「大丈夫よぉ。私もそうだけどぉ、マーガリン様がレンちゃん達を守ろうとしてくださるはずよぉ」


 その言葉に安堵するが、私も守られてばかりじゃいられない。


「私は、どうしたら良いと思いますか、バニラさん」


 だけど、何をどうしたら良いのか分からない私には、頭を下げてその方法を尋ねる事しかできない。


「うふふ、その事を、今日ゆっくり話そうとおもったのぉ。多分、レンちゃんがオーブの事を解決したら、こんな時間は取れないからぁ」


 その言葉に、嬉しくなる自分が居た。

 だって、この人は、最初からそれを見据えて、話していてくれたのだから。

 バニラ=ハーゲンダッツさん。

 名前に驚いてしまった私を、どうか許してほしい。

 貴女は本当に、凄い人です。



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