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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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6話.後任候補①

 蓮華とノルンが船に乗って魔界へと向かった後。

 俺は生徒会室の自分の部屋へと戻り、書類に目を通す。

 生徒会には優秀な生徒達が揃ってるので、俺がするのは最終確認だけだ。

 全ての書類にざっと目を通し、印を押していく。


「よし、こんなもんか。特に問題は無いな」


 確認の終えた書類をアリシアに渡しに行く為、席を立つ。

 扉を開けてすぐに、声を掛けられた。


「あら会長、もう終えられたんですか?」


 そう微笑むのは、生徒会副会長のアリシアだ。

 その正体は大罪の悪魔、アスモデウス。

 ノルンの護衛としてヴィクトリアス学園に残っていたのに、ノルンが魔界へ帰るのに何故か生徒会に残っている。

 タカヒロさんは俺が引き留めたせいだが。


「ああ、これ理事長に頼むわ。皆さんきゅな、読みやすかったから早く終わったぜ」


 皆に礼を言うと、皆仕事の手を止めて笑ってくれる。

 実際、俺だけでは生徒会は回せない。

 一応頭に生徒会長って役職があって、その下に副会長、その更に下に書記、会計と役員が続く。

 俺の下でサポートしてくれるのは役員達だが、その役員達をサポートしてくれるのが、生徒会メンバーだ。


 会長以外の役員1人につき、10人程サポートする者がいるのだが、それでもこの全国から生徒が集まるマンモス学園では足りないぐらいだ。

 なので、学園に数多くある部から、部長は生徒会メンバーとなって協力する体制になっている。

 情報共有の一環でもある。


 中でも生徒会執行部は、生徒を取り締まる役割なので、かなり強い権限もある。

 悪い事をしてたり、暴力を振るう粗暴な奴らは、この学園の独房に入れられて矯正される。

 以前はその執行部の部長を明がしていたのだが、明はロイヤルガードの研修を受けると言う名目で、バニラおばあちゃんの元に居る。

 なので、今は後任がその役目を果たしている。


「お疲れ様です!アーネスト様!!」


 直立不動でビシッと敬礼して言うこの男。

 名をビスマルク=フォーゲンハイムと言って、以前は執行部NO.2の実力の持ち主だった。

 数少ない空属性の力を扱える為、『ポータル』も使える優秀な男だ。

 まぁ、その……明や俺を盲目的に信仰と言っても過言ではないくらい尊敬してるので、扱いが困る男なんだが。


「ああ、ビスマルクもお疲れ。なんか問題あったりするか?」

「ハッ!大丈夫であります!もしあったとしても、アーネスト様のお手を煩わせるなどありえません!」

「あ、ああ。けど情報は共有しろよ?対処できても、周知は大事だからな」

「ハハッ!!」


 ずっと敬礼してるビスマルクに苦笑しつつ、俺はタカヒロさんに声をかける事にする。


「タカヒロさん、ちょっと良いか?」

「ん?ああ、もう少しで一区切りつくから、いつものとこで待っててくれるか?」

「あいよ。皆、適度に休憩しろよー?」

「「「はいっ!!」」」


 元気の良い生徒会メンバーに笑いつつ、俺は生徒会室を後にした。

 ヴィクトリアス学園の丁度中央には、広い公園のような場所がある。

 そこのベンチに座って、タカヒロさんを待つ。

 この学園は、どの授業を受けるか完全に生徒に一任されているので、時間がいつであっても生徒の皆を見かけない時間は無い。


「あ、アーネスト様!もしお時間がおありでしたら、私達とご一緒できませんか?」


 その為、こういう風に声を掛けてくる女性も割と多い。


「すまねぇ、人を待っててな。またの機会に頼むわ」

「は、はいっ!その時は是非っ!!」


 そう言って、頬を染めて離れていく女生徒達を見送る。

 こちらが見ていたのに気付いたのか、皆頭をぺこっと下げてから、校舎の方へ向かって行った。

 初々しいとは思うけど……なんでだろうな、日本に居た頃の俺なら、それこそ喜んでたと思うんだが。


 今の俺は……なんていうか、そういった気が起きない。

 可愛い人は可愛いし、綺麗な人は綺麗だし、そうは思う。

 だけど、芸術品を見る感じかな?そういった気持ちだけで、愛おしいとは思わないんだよな。

 俺の心は、どうしてしまったんだろうか……そんな事を考えていると、また声を掛けられた。


「すまん、待たせたな」


 その声は、俺が待っていた人の声だった。


「タカヒロさん!いや、俺が呼んだんだから気にしないでくれよ」

「それもそうだったな」


 タカヒロさんは俺の座っている隣に腰かけた。

 俺と同じ黒髪で、伊達(だて)眼鏡(めがね)をかけている。

 なんでも、生前はコンタクトではなく眼鏡だったそうで、つい癖で何もないのに眼鏡をくいっとあげる仕草をしてしまうらしい。

 それをノルンに見られて、何してるの?って笑われたのがきっかけで、度の入っていないメガネをする事にしたんだとか。

 理由を聞いて俺は笑ってしまったけど。


「で、話は後任の件か?」


 どうやら要件を言わずとも察してくれたらしい。

 まぁ、当然か。

 その為にタカヒロさんに残ってもらったと言って良いしな。


「うん。俺さ、人に教えるのとか向いてないんだよな。自分が強くなる為の修行とかは、どんどんやれるんだけど……」


 蓮華は俺と違って指導が上手い。

 元は同じなのに、この差がどうして生まれたのかよく分からないが。


「まぁ、それは適正もあるからな。話を飲み込むのが早いのと、それを伝えるのが上手いのは別の能力だ」

「タカヒロさんには話が早くて助かるよ。それでさ、候補は見つけたんだ。けど……今のままじゃ、ダメだと思ってさ」

「それを俺に鍛えてほしいって事か?」


 俺は頷く。

 タカヒロさんは、なんてったってあのノルンを育てた人だ。

 俺や蓮華よりも強いし、魔力の扱い方や知識の量だって上。

 その上教育者に向いている……これ以上ない適任者だと思う。


「ふーむ……まぁ、見てからでも良いか?」

「!!ああ、勿論!」


 即決はして貰えなかったが、それでも良い。

 タカヒロさんがそいつらを見て、見込みがありそうだと思ったら指導してくれると言うのなら。


 俺は事前に話していたので、寮へ向かう。

 いつも蓮華達と集まっていた場所の近くの部屋だ。

 そこに集まっておくように言っておいたのだ。


「「「アーネスト様!!」」」


 部屋に入ると、寛いでいただろうに、全員立ち上がって俺の前に整列する。


「よ。別に畏まらなくて良いんだけど……まぁ、今回はその方が良いか」


 皆は俺を見てから、その後ろに居たタカヒロさんを見て固まる。


「ま、魔王軍参謀!?」

「魔王リンスレット様の腹心の……て、テレビで見ました……!」

「ほ、本物!?」


 などなど。

 ああ、タカヒロさんはずっと『メタモル』で姿を変えていたし、ヤマタノオロチの時も俺の姿になっていたり、本来の姿を公表していなかった。

 けど、それだとこれから師事を受けるのに良くない。

 という事で、タカヒロさんにはこいつらにだけ、その姿を見せて貰う事にした。


「一応自己紹介しておこうか。といっても、俺はここ1年学園に居たんだけどな。普段、こっちの姿で居たんだ。見かけた事あるだろ?」

「「「あっ……!!」」」


 そう言って、姿を変える魔法である『メタモル』を目の前で掛けて見せ、また本来の姿に戻った。


「もう知ってるみたいだが、タカヒロだ。家名は無いが、リンスレット様にお仕えしている。今回、友であるアーネストにお前達を強くしてくれと頼まれてな、引き受けるかどうかを見極めに来た」


 その言葉に緊張しているのは分かるが、そのままだと困る。


「お前達も自己紹介しろって」

「は、はいっ!俺はエリク=ヤクートと申します!職業は聖騎士です!」

「ヤクート?ああ、ヤクート商会の息子さんなのか」

「はい!でも、父は関係ありません。俺は、俺はインペリアルナイトになりたいんですっ!」

「成程な。っと、話を折ってすまない。続けてくれ」

「私はソレイユです。家名はありません、平民ですので……。職業は魔法使い。一応、火、水、風と適性があります」

「俺はアーク=マウアーと言います。職業は盗賊……です」

「アタシはミリー=バレンタインです。職業は僧侶ですけど、聖女まで上げて見せます!」

「僕はサージ=フォレスト、です。弓使い」

「ふむ……」


 全員の名前と職業を聞いて、タカヒロさんが考え込む。

 認められるだろうか、そう思っていたら、タカヒロさんが笑いだした。


「はは、アーネスト!お前バランスよくパーティ考えすぎだろ!ははははっ!」


 その言葉に、皆はきょとんとしている。

 俺は揃えたメンツの意向を読まれて苦笑する。


「やっぱ分かる?」

「当たり前だろ、俺もドラクエは好きだった」

「ぶはっ!」


 笑いあう俺達に、意味が分からずポカーンとしている5人。

 勇者役に仲間を守る盾の聖騎士、そして複数属性を扱える魔法使いに傷を癒せる僧侶、遠距離を狙え、目の良い弓を使うアーチャーと、罠の発見や魔物の気配が分かるスカウト。

 こいつらはきっと、この学園を卒業後も良いパーティになると踏んだ。


「それでタカヒロさん、ダメかな?」


 そう言ったら、5人は真剣な顔つきになった。

 この5人は、本当に強さを求めているのを知っている。

 授業態度だってそうだ。

 自分に関連する授業は全て受け、なおかつ放課後はずっと鍛錬していた。

 その鍛錬している姿を毎回見かけたから、俺は声を掛けたんだ。

 実力を上げるのに真摯な態度、そして強くなりたいという意思を感じた。

 もちろん、それだけではないが……こいつらは磨けば光る、そう思った。


 顔合わせ自体は、少し前に。

 エリクとアーク、ソレイユとミリーは知り合いだったみたいだが、他は皆初めて知り合ったようだ。

 まぁ当たり前か、授業で被るならともかく、被らない場合は中々知り合えないだろう。


「職業は良い。けど、肝心の腕前を見たいからな。少し後ろに下がってくれるか?」


 タカヒロさんの言葉に従い、後ろに数歩下がる。

 すると、目の前に黒い円形のゲートが出来た。


「この中に入ってくれ。転送に近いが、行く先は亜空間だ。ここなら誰の迷惑にもならないからな」


 皆言われるがまま、ゲートに入っていく。

 5人が入った後、俺も入るとするかと思いゲートを潜ろうとしたら、タカヒロさんに止められた。


「アーネストには、やってもらいたい事がある」

「へ?俺に?」

「ああ。俺もそこまで万能ってわけじゃない。この空間作るのも、結構な魔力を消費するからな」

「俺にできる事あんなら、やるけど……何をすれば良いんだ?」

「それはな……」


 こうして俺とタカヒロさんによる、エリク達5人の試験が始まった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  タカヒロさんが眼鏡を上げる動作をしてそれを見たノルンが笑っているのを想像したらニマニマが止まりません(*^^*)  眼鏡をかけてなくても癖で上げる動作をしてしまう。理解出来るからこそ感…
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