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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第四章 魔界編

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4話.地上のギルドと魔界のギルドの違い

 『フラート』の魔法を掛け、地面を滑空するように移動を開始してから、すでに5時間が経過している。

 多分車より速いスピードで移動してるはずなんだけど……遠い。

 まさか、アクアマーリン港からシャイデリアまでの道のりが、こんなに遠いとは思わなかった。


 そして、魔物の数が尋常じゃなく多い。

 しかも、こちらを見つけたら猛スピードで突撃してくる。

 まるで、イノシシが赤い布を見て興奮したみたいに。


「はぁぁっ!!」


 ソウルを一閃し、その体を垂直に切断する。


「ガァァァァッ!!」


 断末魔の声を上げて、その体が二つに分断され、地面へと落ちる。


「ふぅ、そろそろアイテムポーチが一杯になりそうね」


 そうノルンが言いつつ、今倒した魔物も収納する。


「えっと、ノルン。今までの全部、換金するの?」

「当たり前じゃない。と言っても、すぐに全部出すわけじゃないわ。依頼を受けて、その分だけ出せば良いでしょ」

「それって、どこかから買ってきても同じ事できちゃうし、カウントされるの?」

「されるわよ。地上じゃどうか知らないけど、魔界では別に冒険者の為のギルドってわけじゃないもの」


 冒険者の為じゃない?

 一体どういう事だろう。

 私が母さんから聞いた、ギルドの情報はこうだ。


 一つ、冒険者ギルドのルールは、破ると想定外の危険があるから定められている。知らないという事は、自らの命をみすみす危険に晒しているのと同じ事なので、しっかりと覚える事。知識も力の一部であり、冒険者の稼業では命を守る方法の一つである事。


 一つ、ギルドカードは対象者の実力を示す物。これにより、ギルドが開示している危険度の高い依頼に応募しても大丈夫かどうかを測る指針の一つである事。


 一つ、ギルドは冒険者の為に存在しているが、実際は冒険者や依頼人の方がギルドを必要としている事。


 この三つ目については、母さんにオウム返しで聞いたら、詳しく教えてくれた。


「良いレンちゃん?ギルドは、冒険者の手間を代わりに請け負ってくれているの。ギルドがなければ、冒険者は仕事の依頼人はどこに居るのかを探さないといけないし、その場でお互いに折り合いをつけて契約を交わして、報酬の受け取りなんかも交渉しなければならないの。それを全部自分でするって、凄く大変よね?」

「……成程、それを助けてくれてるのが、ギルドっていうわけだね」

「うん、そうだね。ギルドとは依頼の処理をするだけでなく、冒険者を総合的にサポートする団体だからね。その代りに、冒険者は手数料を支払うわけだね。持ちつ持たれつなんだよー」


 なんて話をした。

 つまり、冒険者を守る為にギルドとは存在している。

 なので、ノルンが言う冒険者の為のギルドじゃない、という言葉に引っ掛かりを覚えたのだ。


「どういう事?ギルドって、冒険者の為に存在してるんだよね?」

「あー、そこは違い無いけど。そうね、例えば……ギルドランクの低い奴が、自分より高いランクの依頼を受けたら、地上だと止められるわよね?なんで止めるの?」

「え?そりゃ、命を失うかもしれないから、だよね?」

「そうよ。それが、ここじゃ止められないってだけ。他は大体一緒だけど」


 その言葉に戦慄してしまった。

 地上のギルドランクは、冒険者の命を守る為に存在している。

 自分の実力に見合っていない依頼を受けて、死んでしまわないように。

 だというのに、魔界ではそうじゃない、と言うのだから。


「それじゃ、何のために魔界ではギルドランクがあるの?」


 冒険者が無謀な依頼を受けるのを防ぐ為に、ランクがあるのなら。

 魔界には、ギルドランクなんて必要無いのではないか、と思ったんだ。


「簡単よ。自分の強さが一目で示せるでしょ」

「え……」

「魔界は、そういう世界なのよ蓮華。ま、私も偉そうには言えないけどね、教えて貰っただけだから……」


 ノルンはそう、(うつむ)いて言った。

 リンスレットさんや、アリシアさん、それにタカヒロさんといった人達は、私達に近い思想をしていたと思う。

 そんな人達と一緒に居たノルンが、その話を聞いた時、どう思っただろう。

 実際に見ようと思ったノルンは、きっと凄く勇気がいったはずだ。


 外の世界を何も知らない自分が嫌で。

 それでも、自分の好きな人達の力になりたくて。

 だから、まずは知ろうとしたんだと思う。

 知識ではなく、自分の目で見て。


 未知の事を知るのは怖い。

 好奇心だってあるだろうけど、安全な場所から危険な場所へ出るのには、誰だって勇気が必要だ。 

 だけど、ノルンは一人じゃない。私も居る。


「それと地上のギルドとは根本的な違いがあるわ。魔界の住人に戦えない者はほとんど居ないの。この意味、分かる?」

「えっと、魔族って生まれながらに強い魔力を持ってるから、だっけ?」

「そう。だから、大抵の魔物は自分で対処できる。なら、なんでギルドがあると思う?」


 地上では、自分達では倒せない魔物を、戦える力のあるハンターや冒険者に倒してもらう。

 錬金術や薬、武器防具アクセサリーといった装備品の作成素材を集めてもらったりだ。

 でもこれが自分でできるならどうだろう。

 面倒だから依頼する、というのもあるかもしれないが、お金を払うくらいなら自分で、となるんじゃないだろうか。

 答えが分からず首を傾げていると、教えてくれた。


「娯楽なのよ。魔界にはダンジョンも数多くあるし、強い魔物はその奥深くに居る事が多いわ。それを倒して、自分の強さの証明をするといった具合にね」

「なっ……」

「ダンジョンって、ワルドモンスターって言われててね。中での魔物は倒しても時間で復活するわ。ダンジョン内で死ねば、ワルドモンスターの養分になるらしいけど」


 そんなのに、何故挑むんだろうか。

 私には全く理解できない。


「最初に言ったけれど、娯楽なの。ギルドにはモニターがたくさん配置されていて、高難易度のダンジョン攻略を映していたりするわ。ワルドモンスターの最奥には必ずボスモンスターと呼ばれる強力なモンスターが居て、倒したら貴重なアイテムを落としたりするらしいわよ」


 なんだ、それ。

 なんて言うか、ゲームみたいな事を自分の命を使ってしているのか?


「そのアイテムをオークションに出したり、ね。寿命が延びると言われているノルエリクサーとか、魔力の最大値が上がるとされてるマナエリクサーとかが手に入ったら、凄い値がつくもの」

「お金稼ぎにもなるし、自分の実力を見せる事ができるって事?」

「そういう事ね。それに、これはリンスレットの政策からだけれど、魔族間での争いは禁じられているから。好戦的な魔族のうさばらしをする場所が必要って事なんじゃない?もちろん、それで命を失っても自業自得だけど。それでも登録する者は後を絶たないらしいわね」


 成程……そういう意味もあるのか。

 地上のギルドのような、助け合いの精神ではないギルド、か。


「ちなみに、このワルドモンスターが生まれたのは、世界樹の誕生と一緒らしいわよ」

「え?」

「世界樹は、マナを生み出す存在。マナは、魔力をあまり持たない者でも魔術として使えるように空気中に漂ってるわよね。地上では濃く、魔界では薄く。なんで地上の方が濃いのかは、分かるでしょ」

「うん、地上の……人間には、元から持ってる魔力が小さくて、魔法を発現できない人が多いから、だよね」

「ええ。逆に、魔界では魔力を魔法として発現できない者なんてほとんどいない。いえ、居ないわね。自分の魔力を使える者ばかりだから、空気中のマナが減らないのよ。でも、マナは増え続けた。その結果生まれたのが、ワルドモンスターだと言われているわ」

「世界樹のマナから、生まれたモンスター……」

「ワルドモンスターが生まれる事によって、一旦空気中のマナは減るけれど、全部が失われるわけじゃない。そうして、古いマナと新しく生まれたマナが混ざり合って、それが続いていった。そのせいで、魔界のマナは地上とは違うの」


 そっか、それでアリス姉さんは魔界のマナが合わない、のか。

 地上はマナを生活でも多く使ってる。

 魔術としての魔道具を使った『ポータル』もそうだけど、魔道具は基本的に、空気中に含まれるマナを使用する。

 だから、本人に魔力がほんの少ししかなくても、起動できる。

 火をつける魔道具や、氷を作る魔道具だって、全部空気中のマナを取り込んで発動する。


 テレビだってマナを使用してるし、元の世界のガスや電気を全部マナが代用してくれているって感じだ。

 それくらい日常生活に欠かせない存在なのが、地上のマナだ。

 でも、魔界ではそうじゃない。

 自分の魔力で全て足りるのなら、空気中のマナは減らない。

 そうして飽和した魔界のマナが、新たなモノを作り出してしまったという事か。


「ワルドモンスターにもランクはあるみたいで、そのランクをギルドが決めているみたいね。どうやってかは、知らないけど。まぁ多分、発見者から聞いたり、ギルド職員に調べさせてるんでしょうけどね」

「えっと、そのワルドモンスター自体は倒さないの?増え続けたら、不味いとかないの?」

「間引きはしてるみたいよ。それこそが魔界のギルドの仕事みたいなものでしょうし」

「な、成程……」


 うーん、本当に根本的に、ギルドの立ち位置が違うんだな。

 ノルンも言ってたけど、好戦的な魔族の人達のストレス発散の場所にもなるから、リンスレットさんも黙認って形なんだろうか。


「ちなみに、闘技場とかもあるわよ。そっちはそっちでまた専用のカードがいるけど、そっちでもお金は稼げるわ。もちろん出場者じゃなく、どっちが勝つか賭ける側でもね」

「ま、まぁそれは様子見で……。そういえば、魔族の人達って強いんだよね?それじゃ道中の魔物って二束三文にしかならないんじゃ……」


 だって、皆倒せる魔物って事だよね。

 そんなの依頼に出してるとは思えないし……。


「いいえ、そんな事ないわよ。さっき倒した魔物は食料になるから、結構需要あるって聞いてるし」

「そうなんだ。あんまり、美味しそうじゃないけど……」


 だって、魔物だよ。

 牛とか豚じゃないんだよ。

 それも私はスーパーで買うくらいしか無理だったけどね。

 目の前の牛や豚を殺して食べるなんて、私には無理だ。


「そのまんま丸焼きにするわけじゃないんだから、当たり前でしょ」


 ま、まぁそうだよね。

 魚だって、刺身だと美味しいし。

 でも丸ごと焼いて食べると、骨で食べ辛いんだよね……。


「あはは……そうだよね。色々教えてくれてありがとうノルン。さぁ、行こっか」

「ええ、そうね」

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