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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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220.皆の想いを込めて

「レンゲよ、私が頭と首だけなのを不思議に思わなかったか?」


「別に。そういう存在なんだって思ってたよ」


「ククッ……そうか。だが、当然私にも体はある。遥か昔、古の神々に封じられた為に地下深くに眠っていた」


「眠って、いた?過去形なのか?」


「そう、つい先ほどまでは、な」


「!?」


「封の鍵を担っていたエンシェントドラゴンが倒れた今、もはや私の体を縛る物は何もない!見せてやろうレンゲ!私の真の姿を!!」


 エンシェントドラゴン、つまりシオンさんが、倒れた。

 その事にも驚いたけど、地下から感じる悪寒。

 鳴りやまない地響き。

 これは、マズイ……!


「アーネスト、皆を避難させてくれ!」


「……分かった。確かにこれは、皆にどうこうできる問題じゃねぇな」


 そう言って、アーネストは皆の元へ飛んでいく。

 八岐大蛇は、動かない。

 眼光も光を失い、黒くなっている。

 今のうちに倒したら……そう考えたけれど、体が動かない。

 なんだ、これ……恐怖、か?

 地面から、巨大な体が出現する。

 まるで地面から生えたような巨体。

 足はない、地面の下にはあるのかもしれないけど。

 頭が九つ、それにあれは腕だろうか、それが体から二本生えている。

 首の集まるその体には、凄く大きな、歪な色をしたクリスタルが埋め込まれているように見える。

 体が竦むって、こういう事を言うのか。

 恐怖に飲み込まれそうになる。

 こんな化け物に、私は……。

 弱気になりそうだった私に、皆に指示を出し終えたアーネストが近寄って言ってくれた。


「へへっ……ドキドキするけどさ、お前が居るから、なんとかなる気がするんだよな。やろうぜ、相棒」


 そう笑って言ってくれるアーネスト。

 まったく、お前って奴は……。


「その言葉、そっくりそのまま返すよアーネスト。ああ、やるぞアーネスト!」


 弱気になりそうだった気持ちを投げ捨てる。

 私は、一人じゃない。

 アーネストが居る、皆が居る。

 体が出現し、一つとなった八岐大蛇。

 

「的が絞りやすくなって大変結構だな八岐大蛇」


「ククッ……この私の真の姿を見ても、その威勢を保てるのは評価しようレンゲ。だが、この私の特殊能力を前に、動けるのは貴様達二人だけのようだぞ?」


「「!?」」


 見れば、私とアーネスト以外、地面に座り込んでいる。

 どうしたって言うんだ!?


「私と戦える資格を持つ者は、貴様達だけという事だ。転がられていても邪魔だ、まずは掃除をするとしようか」


 八岐大蛇の口に、力が収束していくのが分かる。

 マズイ、あんなものを撃たれたら!

 私は八岐大蛇の前に立ち塞がる。


「そうだな、貴様はそうするだろうと思っていた。そして、避けまい!消えろレンゲ!『八又の波動・カラミティブラスト』」


 ゴオオオオオッ!!


 凄まじい音を立てながら、全ての頭の口から光線が放たれる。

 私はソウルを前に構え、その光線を受け止める。


 ズズッ……!


「ぐぅぅっ……!!」


 その凄まじい力に、少しづつ後ろへ下がってしまう。


「蓮華っ!!」


 ソウルに、ネセルが合わさる。


「アーネスト!」


「これは、俺が引き受ける……!お前は、行けっ!」


「!?何言ってるんだアーネスト!」


「聞け!あいつがとんでもねぇ強さなのは、魔力の感じで分かるだろ!悔しいけど、今の俺じゃ届かねぇ!でもお前なら……ユグドラシルの力を宿したお前なら、やれるはずだっ!」


「でもっ!!」


「良いか!奴も攻撃を放っている今、それを撃ち終えた後には隙ができるはずだ!その隙を、狙え!この攻撃は俺が、絶対に霧散してやる!皆には届かせねぇ!」


「アーネスト……」


「行け!蓮華!!」


「っ!!」


 私はソウルを引き、空へと跳躍する。

 アーネストは、笑った。

 私に、全てを託してくれた。

 だから、ソウルを鞘に納める。

 魔力を、溜める。

 アーネストが作ってくれるチャンスを、絶対に逃がさない為に。


「蓮華、頼んだぜ……。さぁネセル!お前の力、こんなもんじゃねぇよな!?俺も全力を出しきる!お前も、余裕ぶってんじゃねぇぞ!!」


 アーネストの全身から、黄色い光が輝き始める。

 オーラとは違う色。

 戦いの最中だというのに、綺麗だと思ってしまった。


「おおぉぉぉぉぉっ!!」


 そして、ネセルを振りぬく。

 八岐大蛇が放つ光線が、霧散するのが分かる。


「なんだとっ!?」


「いけぇ、蓮華ぇぇぇっ!!」


「!?」


 八岐大蛇が驚く。

 だけど、遅い。

 私は、アーネストが作ってくれたこの時を、無駄にはしない。


「その首、千切れろっ!『ユグドラシル流居合術極の型・斬鉄』!!」


 バシュゥッ!!


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」


 八岐大蛇の首が、九つ全て分断される。

 断末魔をあげる八岐大蛇。

 倒した、そう思った。

 だけど……。


「ククッ……見事だ、レンゲ。しかし、私は首を落とされても死にはしないのだ」


 斬り落とした首が、再生する。


「!!」


「攻撃の後は隙が出来る、だったか?貴様にもそれは当てはまろう、レンゲ」


 ドゴオオオオ!!


「ぐぅっ!?」


 ドサァッ!!


「蓮華っ!?」


 八岐大蛇から放たれる魔法に、直撃する。

 空から落とされてしまった。

 ダメージを受けはしたけれど、少しづつ癒えていく。

 すぐに空へと戻る。


「ほぅ……流石は神界最強の女神、ユグドラシルの化身だな。私の魔法を直撃して、その程度のダメージである事もさることながら、そのダメージすら、癒えつつあるか」


「お前もな八岐大蛇。倒したと思ったから、油断したよ」


「貴様を倒すには、ただ闇雲に攻撃をするだけでは倒せないようだ。ならば、私の最強の魔法で、貴様を屠ろう、レンゲ」


 八岐大蛇の体から、闇が広がる。

 月の大精霊ルナマリヤによって、私は夜の暗闇を感じない。

 だと言うのに、その闇は黒く、漆黒の闇が垣間見える。

 集まっていく闇。

 その凄まじい魔力は、私よりもすでに圧倒的に高い。


「この世界とお別れは済んだか?さぁ、死ぬが良いレンゲ!『極限の闇・ファイナリティデッドエンド』」


 周り全てを覆い尽くすかのような、凄まじい闇。

 闇が悪いわけじゃない。

 闇は、月を輝かせてくれる。

 眠る時に、優しく包み込んでくれる。

 闇があるから、光もまた存在できる。

 眩しすぎる光は毒にもなるんだ。

 闇と光、共存する存在。

 けれど、この破壊の為の闇は、許すわけにはいかない。


「光よ!闇を打ち払えっ!『エターナル・インフニティ』!!」


 八岐大蛇の放つ闇の波動を、光の波動で相殺する。

 しかし、闇が徐々に光を侵食していく。


「ククッ!その程度ならば、このまま闇で覆い尽くしてやろう……!」


 八岐大蛇の力が増幅されていく。

 くっ……このままじゃ……!


「蓮華ぇぇぇぇっ!!」


 アーネストの呼ぶ声が聞こえる。


「お前は一人で戦ってんじゃねぇぞっ!俺達もいる!俺達の力を、持って行け!世界樹は、普段俺達にマナって力をくれてるだろ!その逆だ!俺達から、力を持って行け、蓮華!!」


 皆の、力を……!?

 ユグドラシル、そんな事が可能なの!?


"可能、といえば可能ですね。私はマナを放出していますが、それを取り込んだ場合、純粋なマナではなく、その人の持つ専属のマナに変わるのです。それは、単純なマナよりも強い物。それを更に力として集めるのでしょう?『エターナルマナ』と呼ぶのですが、今の蓮華に扱えるか、見させてもらいますね"


 そう言って、ユグドラシルが微笑んだ気がする。


「……お願いだ、皆!皆の力を、貸して欲しい!私だけの力じゃ、勝てないかもしれない。だから……!」


「みなまで言うんじゃないわよ、蓮華!持って行きなさい!どうすれば良いの?手をかざせばいいの?」


「ノルン……!うん、手を空へ、力を空へ!」


 この場に居る皆が、手を空へ掲げてくれる。

 私の元へ、力が集まる。

 あったかい……これが、皆の想い。

 伝わってくる、熱い想いが……!!


「おおぉぉぉぉっ!!」


「ぬっ……!?」


 力が拮抗する。

 これだけの力を集めても、駄目なのか!?


「蓮華お姉様……!」


「蓮華……くそ!どうすりゃいい、あと一歩なのに……!」


 皆の言葉が聞こえてくる。

 そんな時に、優しい声が聞こえてくる。


"ユグドラシル領に集まっている皆さん。今、私の息子と娘、そしてその仲間達が、巨大な八岐大蛇と戦っているのは見えていますね。しかし、このままでは負けてしまうでしょう。今、あの子達は窮地に立たされている。それを救えるのは、この映像を見ている貴方達なのです。さぁ、力を貸したいと思ったならば、手を空に向かって掲げてください。あの子達の力になりたいと、想ってくれるのならば"


 母さん……!

 瞬間、世界が震えた気がする。

 とんでもない力が、ヴィクトリアス学園へと向かってくる。

 それは私の中へ、吸収されていく!


「これ、はっ!?」


「馬鹿な、こんな、事が!?」


 八岐大蛇も驚愕しているのが分かる。

 でも、私だって驚いている。

 こんな、こんな凄い力が、集まるなんて……!

 分かる。

 これは、この力は、この想いは、この世界全ての人のもの。

 私は、皆から託されたんだ。

 ……負けられない。

 負けるわけ、あるかっ!


「八岐大蛇!お前が望む世界の果てに、この力は存在するのか!?」


「!?」


「皆の想い、私が預かった!この力で、お前を倒すよ!いけぇっ!!『エターナルリヴァイヴァー』!!」


「おぉっ……!おぉぉぉぉっ!?これ、が、これが光の力だと、いうのかぁぁぁぁっ!!」


 飲み込まれそうだった深い、闇の力。

 それを、更に大きな光が包み込んでいく。

 その光は、やがて八岐大蛇をも飲み込んでいく。


「ぐぅぅぅぅっ!!レン、ゲ……!私は、間違っていたとは、思わぬ……思わぬが……!こん、かいは……貴様の、勝ちだ!ぐあああああああっ!!」


 光が、地上から空へ向かって伸びる。

 爆発が起こったかのように弾け、虹のように光が降り注ぐ。

 八岐大蛇が居た場所には、大きなクレーターが残されていたのみで、その姿は完全に消え去っていた。


「勝った、のか……」


 私は地上に降り、座り込む。

 そこへ、アーネスト達が駆けつけてきた。


「蓮華!やったな!」


「「蓮華お姉様ぁぁぁっ!!」」


「ちょ、まっ!?ぐぇっ!!」


 カレンとアニスに飛び掛かられて、転ぶ。


「ふふっ、たくアンタは」


 ノルンも笑ってる。

 皆が集まってくる。

 だけど、その中に奏音ちゃんの姿は無かった。

 おのれ、逃げたな奏音ちゃん。

 生徒の皆も、歓声を上げている。

 勝ったんだ。

 私も脱力して、そのまま寝転がる。

 まぁ、これからが後始末大変だろうけど……そこら辺は大人に任せよう、うん。

 え、私も大人だろって?

 外見は15歳ですからー!




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