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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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212.イヴinウルズ

 ヴィクトリアス学園の正門付近、そこには今八岐大蛇だけでなく、多くの魔物が出現していた。

 八岐大蛇の頭の一つ、召喚の頭である。

 勿論それだけならば、アリスティアやノルン、アスモデウスであればすぐに倒せていた。

 問題は、倒れていたイヴが立ち塞がった為だ。

 その瞳は(あか)く、纏う魔力も別物に変わっていた。

 そう、運命神ウルズが憑依したのだ。

 多くの魔物達、そして八岐大蛇の頭を背後に、イヴの姿をしたウルズは命ずる。


「さぁ魔物達、この学園を蹂躙なさい。この地上の核となっている学園が機能しなくなれば、後は放っておいても衰退していくでしょうけれど……もう待つのは嫌。取り戻す為に……行きなさいっ!!」 


「「「「オオォオォォォッ!!」」」」


 魔物達が呼応するように声を張り上げる。

 声が音の振動となり、響く。

 耳を塞ぎたくなるような音量に、ノルンは顔をしかめる。


「ったく、五月蠅いわね……!タカヒロ、頼むわよ……!」


 召喚された魔物達は、もうアーネストの姿を取ってはいないタカヒロの指揮の元、教師と生徒達が共同で倒していた。

 倒しても倒しても召喚される魔物達。

 終わりのない戦いに疲弊していくが、皆は信じていた。

 必ず生徒会長であるアーネストと、闘技大会でそのアーネストすら破った蓮華が、助けに来てくれると。

 その希望を持ち、戦っている。


「負傷者は後ろに下がって治療を受けろ!絶対に無理をするな!お前が倒れなければ、他も倒れはしない!良いか!仲間を支えてるのはお前達一人一人だという事を絶対に忘れるな!」


「「「おおおおっ!!」」」


 タカヒロの言葉に皆が反応する。

 士気は高い。

 だが、イヴの体に憑依したウルズを、3人は押せないでいた。

 召喚の頭にまで攻められないのだ。


「ふふ、士気は高いようだけれど……いつまで持つかしら?召喚の頭を潰させはしないわよ?」


 八岐大蛇を守るように立つウルズは、イヴの力を最大限に引き出している。

 その身を、傷つけながら。


「イヴちゃんを解放しなさいウルズ!ウルズの戦い方だと、イヴちゃんが死んじゃうよ!?」


 アリスティアは、イヴの事を気遣いそうウルズに伝える。

 だが、ウルズは無関心だった。


「だから?アリスティア、貴女を抑える為に用意したのがこの子。いくら全盛期の力から、はるか下に落ちているとはいえ……貴女は精霊女神、侮るわけがないでしょう?切り札の一つや二つ、用意しておかなければね」


 ウルズはイヴの心臓に、いつでも憑依ができるように魔力の杭を打ち込んでいた。

 イヴがそのままアリスティアを倒せればそれでよし。

 倒せなければ、自分が憑依して戦えば良い。

 二段構えだったのだ。


「アリスティアさん、流石にあの力を相手に、元の体の持ち主の事を気にして戦うのは……」


「ごめんアリシアちゃん。でも、イヴちゃんは……何も知らない、純粋な子な気がしたんだ。きっと、お友達になれると思うの。だから……!」


「甘いわねアリスティア。その甘さが、ユグドラシルを助けられなかった原因よ!」


「!!」


「その身を世界樹と変えたユグドラシル。その事を伝えられた時に、誰一人としてユグドラシルを止めなかった。ユグドラシルの意思を尊重したと言えば聞こえは良いでしょう。けれどそれは、ユグドラシルを見殺しにしたのと変わらないでしょう!」


「違う!ユーちゃんは今も生きてる!」


「言葉も話せない、あの樹が生きていると言うのアリスティア!私は認めない!こんな地下世界、滅べば良い……!そうすれば、ユグドラシルは戻ってきてくれる!」


「ウルズ!そんな事をしてもユーちゃんは悲しむだけだよ!?」


 必死に説得を続けるアリスティア。

 だが、その言葉はウルズには届かない。


「同じ神界に居ながら、ユグドラシルを見殺しにしたアリスティアの言葉なんて聞かないわ!」


「っ!!」


「ユグドラシルを助ける為に、イグドラシルもその身を犠牲にした。大好きだった二人を同時に失ったのよ……!その後で貴方達が地下世界を守る為に何かしていようが、関係がないのよ!」


「ウルズ……!」


「私は他に何も要らない。この子も私の道具に過ぎない。二人を、取り戻す。私にはその先しか見えていない!さぁ、魂の牢獄へ逝きなさい!」


 ウルズがイヴの力を更に解放する。

 魔力が膨れ上がり、全身を包む。


「くっ……!アスモデウス、これアンタより高いんじゃないの……!?」


「悔しいですが、そうですね……。まともにやり合ったら、負けちゃいますねこれは」


 その言葉に驚いた顔をするも、すぐに視線をウルズに戻し、構えを取るノルン。


「二人は召喚の頭に隙を見て向かって。私が、なんとかするから」


 そう言うアリスティアに二人は頷き、ウルズへと向かう三人。

 ウルズとの戦いが激化していく中、召喚の頭は絶えず魔物を召喚し続けていた。

 戦況を見守っているタカヒロは、どうしたらこの状況を好転できるか必死に考えていた。


「この学園の他の頭はほとんど倒せたか、流石だな皆。だが、それでも残す一つはまだ出現もしていない。出現したポイントも規則性が無いしな……」


「会長!……じゃなくて、タカヒロさん!」


「どうした?」


「が、学園正門の反対側から、魔物の群れがっ!」


「なんだとっ!?」


 その言葉を聞いていたアリスティア、ノルン、アスモデウスの三人も驚愕する。

 ウルズだけは、その話を聞き口の端を吊り上げる。

 今まで魔物達は正門付近、八岐大蛇の頭の近くで出現していた。

 その事から、八岐大蛇の頭の近くでしか魔物は出現させられないと思い込んでいた。

 それが、学園後方に出現したと報告を受けたのだ、慌てないはずがなかった。

 ただでさえ、正門付近の魔物の処理に追われている。

 これ以上戦力を分散するわけにはいかなかった。


「分かった。そちらには俺が行こう」


「「「!?」」」


 全員が驚く。

 何故なら、これまで上手く戦況が運んでいたのは、ひとえに彼の指揮があったからだ。

 その彼がここから居なくなる。

 どうしても不安が出てしまうのだ。


「心配するな。ここの指揮は、任せられる奴が来たからな」


 ある所に視線を向け、タカヒロは微笑む。

 皆がその視線を追う。

 その先には。


「皆、無事かっ!?」


 待ち焦がれた生徒会長、アーネスト。

 そして、執行部の隊長草薙明。

 その二人の姿を見つける事が出来た。

 戦いの最中だと言うのに、戦場が生徒達の歓声に包まれる。

 それは、魔物達の雄叫びすらも掻き消すほどに。


「アーくん!」


「アリス!遅れてすまねぇ!」


「ううん!グッドタイミングだよー!強くなったんでしょ、頼りにしてるんだからねっ!」


 そうアリスティアに微笑まれ、アーネストもまた笑う。


「おう!ノルンも無事そうだな!アリシ……アスモデウスか!?」


 アリシアと呼ぼうとして、姿が違う事で戸惑うアーネストに、アスモデウスは笑う。


「ふふ、どちらで呼んでも構いませんよ会長」


「そ、そうか?なら俺はアリシアって呼ぶぞ?長いしさ、アスモデウスって」


「ぶふっ!」


 その返答を聞いて、ノルンが吹きだす。


「い、今までアスモデウスに、そんな理由で呼ばないなんて言った人初めてよ……!」


 なんて笑いながら言うノルンに、アスモデウスも笑った。


「クス。ですね、会長らしいと言えばらしいですけど」


「先輩ぃぃぃ……!!」


「心配かけてすまないな皆。俺はアーネストに助けてもらったんだ。今からは名誉挽回の時間だ!」


「「「おおおおおっ!!」」」


 生徒達の士気が、高まっていく。

 それを見てタカヒロは、後方へと移動を開始した。

 そこへ、アーネストが大声をだし呼びかける。


「タカヒロさん!ありがとう!後、また任せる!」


 その言葉に片腕を上げて返事をし、タカヒロは後方へと向かった。

 魔物達を、殲滅する為に。

 生徒達から事情を聞き、アーネストは指示を出す。


「明、それに春花ちゃん。タカヒロさんの所へ行ってくれるか?タカヒロさんは確かに強いけど、一人じゃきついとこも出てくるはずだ」


「分かった。執行部のメンバーも数人借りても良いかい?」


「ああ、そこら辺は明に任せる」


「了解。春花、ついてきてくれるかい」


「はいっ!アーネスト様もご無事で!」


 そう言い、二人はアーネスト達から離れる。

 アーネストは視線をウルズに向ける。


「テメェが親玉か」


「初めましてかしら?私は運命神ウルズ。体は違うけれどね」


「能書きは必要ねぇ。お前を倒して、後ろに控えてる頭をぶっ倒す!」


 アーネストは双剣を構える。

 その頼もしい後姿を見て、アリスティアは微笑む。


「アーくん、頼りにしてるよ?」


「おう、任せな!」


 そう言って笑うアーネストの姿に、生徒達は活力を得る。

 士気が更に高まる。

 八岐大蛇の頭の一つ、召喚。

 その力から生み出される無数の魔物達。

 そしてイヴの体に憑依した運命神ウルズ。

 対するは、ヴィクトリアス学園の教師陣と生徒達。

 そしてアーネスト、アリスティア、ノルン、アスモデウス。

 最後の一つの頭を残し、戦いは激化していくのだった。


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