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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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209.勇気≠無謀

 蓮華への連絡を終えたリリアは、溜息を零す。


「はぁ……憧れの蓮華様への言葉が、あんな一方的な連絡になるなんて……この怒り、あのでっかい首にぶつけてやるわ!行くわよトール!」


「ハッ!我が姫!」


 凄まじい速度で駆けていく行く二人。

 すでに王都ツゥエルヴを襲う仮面の者達は全て捕縛され、仮面の呪いを解かれている所だった。

 大精霊であるアマテラスが参入した事により、浄化が進み、敵であった仮面の兵が元の意思を取り戻し、王国に味方し始めた為である。

 八岐大蛇に近づくにつれ、その巨大さを目のあたりにする。


「で、でかすぎじゃない?トール」


 少し青ざめた表情でリリアは徹に伝える。


「大丈夫でございます、我が姫。姫の太陽の力、そして僭越ながら私の雷の力の前に、あの程度の魔物、瞬殺でございます」


「そ、そうよね!太陽の姫足るこの私の敵じゃないわよね!よーし、行くわよトール!」


「ハハッ!」


 太陽の姫リリアとその従者トールこと徹は、八岐大蛇のすぐ近くまで移動する。

 それを、追って見ている者が居た。


「全く、気になって見に来てみたら……何やってるの神雷は」


 そう、"ウロボロス"の十傑三強の一人、漆黒の刃"奏音"である。

 蓮華との戦いから身を引き、オーガストの隣国であるイングストンの国境を更に越え、王都ツゥエルヴに移動していた。

 時計回りに、国を観察していたのである。

 その道中で十傑である神雷を発見した。

 発見したのは良いが、なにやら仮面の兵達を相手に戦っているし、一緒に可憐な少女が居た。

 なんとも、あの神雷が好きそうな子だった。

 もしかして何かするつもりかと、後を付けてきていた。

 あれなら、その少女を陰ながら救う為に。

 しかし、それは懸念に終わった。

 神雷はその少女に何かするわけではなく、むしろ守っている事が分かったからだ。

 そんな中での、八岐大蛇の出現。

 そこに真っ先に向かっていく二人の後を、気付けば追っていた。


「はぁ……まぁ様子を見てみますか」


 そう零し、姿を消しながら後を追う。

 気配、姿、その両方を完全に消す上位スキルを奏音は所持している為、気付かれずに後を追うのはお手の物だった。


「ほ、本当にデカいわね……頭までどれくらいの距離あるの、これ」


「我が姫、お答えしましょう。おおよその見積もりですが、約700メートル程かと思われます」


「なんでそんな事が分かるのよトールは……。ま、まぁ良いわ。トール、雷なら高さとか関係ないでしょ?やっちゃえトール!」


「ハハッ!我が姫!」


 その瞬間、雷が二人のすぐ傍に落ちる。


 ゴオオオオオオオンッ!!


 耳をつんざくような音に、顔をしかめるリリア。


「ちょっと!?私を黒焦げにする気!?」


「ち、違います我が姫!今のは私ではありません!」


「え、違うの?……て、事は……」


「はい、どうやらこいつは……雷を操るようですね」


 そう、この八岐大蛇の頭は、轟雷の頭であった。


「トール、雷相手に雷は通じるの?」


「ご安心ください我が姫。私も雷を受ければ死んでしまいます」


「それのどこに安心する要素があるのよー!?」


 叫ぶリリアに、穏やかな顔で返す徹。


「はい、ですから、雷を操るからと、それが効かないとは別問題という事でございます」


「ああ、成程……!」


 そうリリアが感心した所へ、徹は続ける。


「しかし、この化け物が雷の属性そのものの体であった場合、吸収されてより強くしてしまうかもしれません」


「どっちなのよー!?」


 そのリリアの叫びに、徹は笑顔で答えながら、魔力を練る。


「我が姫、ですから試してみましょう。我が姫の為、沈むが良い八岐大蛇!神雷よ、我が姫の前に立つ敵を薙ぎ払え!"Mjolnir"!!」


 とてつもない魔力が空に生まれる。

 バチバチと音を立てながら、その塊が八岐大蛇へと降り注ぐ!


 ドガァァァァァン!!

 バヂバヂバヂ!!


 凄まじい音が鳴り響く。

 徹の放つMjolnirが、八岐大蛇の体を撃ち抜く。


「やったの!?トール!」


 リリアの問いに、徹は厳しい表情をする。


「いえ、どうやら……こいつは、雷を吸収するようですね……」


「!!」


 そこには、先程よりも強力に電気を発生させている、八岐大蛇の姿があった。

 その巨大な双眸が、リリアと徹を睨んでいた。

 瞬間、二人の上空に雷が発生する。


「我が姫っ!!」


 徹は、リリアを庇おうと空へジャンプする。

 リリアが直撃しないように、自分を盾にしようと。


「トール!?」


 一瞬の事で、リリアは身動きが取れなかった。


「何やってるのよ、バカ!!」


 その二人をまとめて抱え、瞬間移動して雷を回避する。

 二人が元居た場所には、凄まじい雷が落ちていた。


「お、お前は……」


「ふぅ、勝手に体が動いちゃったじゃないの。神雷じゃ相性最悪でしょ、ここは任せて」


「漆黒……!」


 そう、奏音が二人を助けたのだった。


「あ、貴女は?」


 そのリリアの問いに、奏音は答えない。


「その勇気は認める。だけど、相手との力量を弁えずに戦いを挑むのは、無謀っていうの。覚えておきなさい」


 そう言い、刃を取り出す奏音。

 その姿はまばたきの間に一瞬で消え、次に見た時にはすでに、八岐大蛇に攻撃を仕掛けていた。

 落雷が幾度となく降り注ぐが、奏音は全て回避する。


「す、凄い……!」


 リリアは思わず言葉に出た。

 体が痺れるこの感覚は、蓮華の戦いを見た時に似ていた。


「漆黒……お前がまさか、助けてくれるとはな。我が姫、ここは漆黒に任せ、引きましょう」


 そう徹が言うが、リリアは動かない。


「姫?」


「決めた、決めたわ!蓮華様に追いつく為に、あの方に師匠になってもらうのよ!」


「……」


 徹は絶句してしまった。

 漆黒の事をよく知っているわけではないが、絶対に受けないだろうと思ったからだ。


「その為には、ここで引くわけにはいかないわ!トール、雷が通じなくても、戦う力はあるんでしょ?この姫に続きなさい!」


「我が姫……畏まりました!このトール、身命を賭してお守りいたします!」


「それでこそ私の親衛隊一番隊隊長よ!続けー!!」


 そう言い放ち、八岐大蛇の元へ駆けるリリア。

 それに続く徹。

 その姿を確認した奏音は、溜息をつく。


「はぁ……まったく、逃げろと言ったつもりだったんだけど……しょうがないわね……!」


 強敵を相手に、それでも引かずに戦いを挑む心。

 恐怖心に負けず、挑む勇気。

 無謀と言い換えれはする。

 だが、ここには私も居る。

 奏音は、蓮二の父に勝てないと知りながらも、幾度となく挑む蓮二の姿を重ねた。

 守ってあげるか……そう思ったのだった。




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