205.弐の頭と六の頭
-カレン視点-
ヴィクトリアス学園へと馬を走らせる。
一秒でも速く、疾く!
そう思いながら馬を走らせていると、ヴィクトリアス学園の方からまた一つ、頭が這い出るのが確認できた。
「カレンお姉様……!」
「ええ、分かっています。まずあちらに向か……」
そうアニスに言い終える前に、スマホに連絡が来る。
それは、アーネスト様からの連絡。
”明は助けた!今出た頭は、俺達が対処する!”
そう簡潔に書いてあった。
流石です、アーネスト様。
「アニス、私達は最初の頭の元へ」
「はい、カレンお姉様!」
再度馬を走らせる。
もう少しでヴィクトリアス学園の敷地内に入る、という所で、すぐ近くで大きな地響きが起こる。
「これはっ!?」
「ヒヒィィィンッ!?」
地面から”何か”が這い出てくるのを、馬から飛び降り避ける。
馬はそのまま”何か”に食われてしまった。
「大丈夫ですかカレンお姉様!!」
駆け寄るアニスに大丈夫と告げ、出現した頭を見上げる。
これが、八岐大蛇の頭の一つ……!
「倒しますわよ、アニス!」
「はい、カレンお姉様っ!」
私は剣を、アニスは大鎌を構える。
「「ハァァァァァッ!!」」
その大きな首に一撃を入れる。
キィィィィンッ!!
「くっ……!か、硬いですわねっ……!」
凄まじい強度を誇るその首に、傷一つ入らない。
「カレンお姉様!」
アニスの呼びかけに頭を見ると、その口を広げ、火の塊が見えた。
「確か弐の頭が、煉獄の頭と書いてありましたわね。地獄の火炎という広範囲ブレスですわね、避けますわよアニス!」
「はいっ!」
瞬間、凄まじい炎が辺りを焼き尽くす。
「この大蛇、狙いを私達に定めておりませんわねっ!?」
「舐めてくれますね。全て、凍らせるですよ!『アブソリュート・ゼロ』」
凄まじい冷気を発し、アニスが唱える最上級氷魔法。
先程まで炎に包まれていた大地が、一気に氷の大地へと変わる。
それには驚いたのか、大蛇の視線がこちらへ向く。
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!
再度、大きな地響きが起こる。
「「まさかっ!!」」
ドオオオオオオオッ!!
二頭目の大蛇の頭が、出現した。
私達は、巨大な大蛇に挟まれる形となる。
アニスと背中合わせに、大蛇を睨む。
「カレンお姉様、あの炎の大蛇は私に任せてください。必ず、私が倒して見せます」
「ええ、任せますわアニス。私は今出たこの頭を始末しますわ。早々に倒し、蓮華お姉様にお会いするのですわ!」
「はいっ!」
私達は、大蛇に向かい駆ける。
目の前の大蛇は、口から氷のブレスを吐いてきた。
成程、私達炎と氷の姉妹に、氷と炎で挑みますか。
その傲慢、死をもって償わせて差し上げますわっ!
蓮華お姉様から頂いたこの力、研鑽を積まなかった日はありません!
氷のブレスを避け、首を駆け上がる!
途中、氷塊を幾度となく生み出してくるが、それらを全て炎を纏わせた剣で薙ぎ払う。
「しゃらくさいですわっ!その程度の氷の魔力、私の自慢の妹の足元にも及びませんわよっ!!」
そして、頭に到達する。
その巨大な眼に、私は全力で一撃を入れる!
「弾けなさいなっ!『ソード・エクスプロージョン』!!」
ドゴオオオオン!!
炎を最大に纏わせた剣の一撃。
それを直撃させる。
「ギャァオオオオオオン!!」
凄まじい音量に、耳を塞ぎたくなる。
暴れる頭に、私は体を支えきれず、空に投げ出されてしまい、地面に降下し始める。
ふふ、私としたことが、これは考慮しておりませんでしたわね……。
「カレンお姉様っ!?」
アニスの叫び声が聞こえる。
ごめんなさいアニス、まさかこんなあっけなく、終わる事になるなんて……。
最後にもう一度、蓮華お姉様にお会いしたかったですわね……。
そう目を瞑った私に、落下する重力が消え、浮遊感を感じる。
え……?
そう思って瞳を開く。
そこには、美しく、優しげに微笑む、待望のお方が居た。
「大丈夫?凄いよカレン、あの頭を一撃で弾き飛ばすなんて」
そう、笑って言って下さる蓮華お姉様に、私は感情を抑える事が出来なかった。
「蓮華お姉様……!私、私、頑張りましたのよ……!蓮華お姉様に認めて貰えるくらい強く、強くなりたいって!ただそれだけを想って……!」
そんな私の言葉に、蓮華お姉様は言って下さった。
「本当に強くなったんだね、ビックリしたよ。今度は、私が力を貸してもらっても良いかな?カレン、アニス」
地面に着地し、アニスが駆け寄ってくる。
「カレンお姉様っ!良かった、良かったです……!!私、カレンお姉様が、死、死んでしまうのではないかって、良かったです……!」
目に涙を浮かべ、アニスがそう言ってくれる。
ああ、私は最愛の妹を残して、何を考えていたのか。
私は、死ねない。
簡単に生を諦めるなんて、してはいけない事だった。
「蓮華お姉様っ……ありがとう、ございます……!」
泣きながらそう言うアニスに、蓮華お姉様は微笑んで、頭を撫でてくださっていた。
「うん、無事で良かった。二人とも強くなったね。さぁ、戦いはこれからだ。まだこの二頭は生きてる。一緒に、戦おう!」
そう言って、刀を構える蓮華お姉様。
私達は、こんな時だと言うのに心が湧き上がるのを感じた。
あの憧れた、蓮華お姉様から……共に戦おうと、言ってもらえた。
蓮華お姉様と、一緒に戦える……!
「「はいっ!蓮華お姉様っ!!」」
私達は、言葉を揃える。
敵が誰であろうと、今の私達は負ける気がしない。
だって隣には、最愛の妹が。
そして、蓮華お姉様が居てくれる。
八岐大蛇、覚悟なさいませ。
私達を敵に回した事、後悔させてあげますわ!
-カレン視点・了-




