表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

205/714

204.出会う親子

-アーネスト視点-



 アリスから送られてきた内容に、舌打ちする。


「明、これ見て見ろ」


 そう言って、隣に居る明にスマホを渡す。

 それを見た明が、表情を変える。


「これ、本当に……?」


「アリスが嘘を言ってなけりゃな。で、アリスがこの場面でそんな事言うわけがねぇ。つまり……」


「真実、って事か。参ったな、まだ遠いこの位置ですら、あの巨大な首と頭が見えてるっていうのに、あれがあと8つもあるのかい?」


「そうなるな。ったく、とりあえず次々出される前に、一個でも潰しに行こうぜ明」


「そうだね……!アーネスト、行こう!」


「おうっ!」


 明と頷き合い、俺達はヴィクトリアス学園へ急ぐ。

 街の人達は皆ユグドラシル領へ避難を始めている為、ほとんどすれ違う事はない。

 でもそんな中で、一直線にヴィクトリアス学園の方へ向かっている少女が居る。


「お、おい!そこの子!そっちは危ねぇぞ!?」


 思わず声を掛けてしまった。

 そりゃ、あんな小さな子がって、どっかで見たような?

 キキーッと、まるでタイヤが急停止したかのような音を立てて、立ち止まるその子。

 思い出した、この子ユグドラシル社で受付に居た子じゃないか!?


「あ、あああああアーネスト様ぁ!?」


 どうやら、向こうも俺の事を知っているみたいだな。

 って当たり前か、一応俺名前だけだけど社長だもんな。


「何してんだ?あのでかいのが見えてるだろ?危ねぇぞ?」


「あ、はいっ!見えてるから、一直線に来ましたっ!」


「へ?」


「あの、私戦えます!邪魔にはならないと思います!私も、協力させてくださいっ!」


 そう真剣な表情で言うこの子。

 ただ、俺の直感が正しければ、この子は見た目通りの子じゃない。


「……分かった。えっと、俺の事は知ってるだろうけど、アーネストだ。んで、こっちは草薙明。よろしくな」


「はい!宜しくお願いしますアーネスト様!草薙さん!私は桜井春花と言います!」


「おう、よろしくな。……どうした明?」


「そん……な……まさ、か……!?そんな事、あるわけ……」


 明を見たら、カタカタと小刻みに震えて、驚愕の表情をしていた。

 まるで、お化けでも見たような顔だ。


「あの、どうかしたんです?」


 可愛らしく小首を傾げるその子に、明は問いかけた。


「桜井……春花……ちゃん。俺の、間違いだったら、そう言って欲しい。君は、もしかして……前世と同じ名前、だったりしないかい?」


「!?」


 桜井春花と名乗った少女が、明らかに動揺したのが分かる。

 どういう事だ?


「どうして、その事を?私、その事は地上ではバニラ様にしか話していないのに……」


「やっぱり、そうか……!そうかぁ……あぁぁ……あぁぁぁぁぁっ!!」


 突然泣き出し、地面に座り込む明に驚く。


「お、おい、どうしたんだよ明!?」


「っ……アー、ネスト、俺さ……今日ほど、神様に感謝した事、ないよ……。俺の亡くした、宝物に……また、会える、なんて……」


「亡くした、宝物?」


「ああ……。俺の前の名前、教えてなかったかアーネスト。俺の前の世界での名前は、桜井昭。今と漢字は違う昭だけどさ、呼び名は一緒なんだ……」


 その言葉に、目の前の少女の瞳から、涙が零れる。


「ま、さか……お父、さん……?」


「ああ、ああ……!春花、会いたかったよ……俺は、お前を助けてあげる事が出来なくて……!血を吐きながらも、俺達の事を大好きだと言ってくれた、俺達の宝物を!守れなくてっ!!ごめん、ごめんなぁ春花ぁぁぁっ!!」


「お父……さんっ!!」


 二人、涙を流しながら再開を祝う。

 そうか、こんな出会いも、あるんだな。

 元の世界で死んでしまった二人が、時と場所を違えて、また出会えるなんて。

 それも、すれ違ってはいたんだ。

 こんな事が無ければ、ずっと気付けなかったかもしれない。

 時間は確かに無い。

 だから、俺はそっとその場を離れる。

 ようやく会えた親子なんだ。

 このまま、避難してほしい。

 そして今度こそ、親子で幸せに生きてくれ。

 そう思って。

 だけど、明は俺の名を呼んだ。


「アーネスト!待ってくれ!俺も、俺達も行く!」


「行くってお前……やっと、会えたんじゃねぇか。わざわざ危険な所に行く必要はねぇ。お前達も一緒に避難してこい」


 そう、できるだけ優しく言った。

 けど、明はそれに同意しなかった。


「アーネスト、俺はお前と出会わなければ、灰色に見える世界をただ生きていた。お前と出会えたから、俺の世界に色がついた。お前と出会えたから、春花とこうして再会できた。俺に、お前を助けさせてくれ!」


「明……」


「アーネスト様!お父さんとのお話は、後でいくらでもできます!だけど今は、あの蛇をなんとかしないとです!私も、頑張ります!」


 二人の気迫に、俺は両手を上げる。


「分かった、分かったよこの馬鹿野郎共が。ったく、親子揃って頑固っぽいよな。お前達の力、貸してくれ!」


「おうっ!」


「はいっ!」


 二人の頼もしい返事を聞いて、俺達はヴィクトリアス学園へ、八岐大蛇の首の元へ急ぐ。

 しかし、そうしようとしたそのすぐ後。

 遠くでずっと鳴り響いていた地響きが、大きな音となりすぐ近くで聞こえてくる。


 ゴゴゴゴゴゴッ!!


「アーネスト、これはっ!!」


「ああ、どうやらここにも出るみたいだな、八岐大蛇の頭の一つがっ!」


「よーし、移動の手間が省けちゃいました!一気に倒してしまいましょうお父さん!アーネスト様!」


「ははっ!全く、頼もしい子だな明?」


「全くだ。でも、無理はするんじゃないぞ春花!」


「大丈夫だよお父さん!私、もう病弱じゃないからね!今はもう、立派に戦えるってとこ、お父さんに見せてあげるから!」


 そう笑顔で言う春花ちゃん。

 明も笑顔だ。

 この二人の笑顔を守る為にも、この頭を早々にぶっ潰す!


 ゴゴゴゴゴゴッ!!

 ドゴオオオオオオオ!!


 凄まじい地響きと共に、現れる巨大な頭。

 こいつからしたら、俺達は蟻のようなものだろう。

 間近で見れば、それが良く分かる。


「ネセル、力を解放するぜ。人間の力、化け物に見せてやろうじゃねぇかっ!!」



-アーネスト視点・了-

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ