202.伝わる情報
-カレン視点-
国王陛下を直接お守りしているセシルと会話し、無事を確認後場内の一掃を図る。
仮面の兵達が多数侵入していたが、私の率いる騎士団で軒並み排除できた。
そんな折、アリスティア様の連絡があった。
ヤマタノオロチ……。
巨大な化け物が、地上を襲うと。
すぐに国王陛下に話を通し、騎士団を使って民の避難を命じて頂いた。
ユグドラシル領はとてつもなく広い。
しかも、全ての国から隣接しているのに、結界により中に入る事はできない。
その結界の外周を、解いて頂けるとの事だった。
私も騎士達に民達の避難誘導を命じた。
「ローガン、貴方が私に変わり、指揮をお取りなさい。良いですわね?」
「ハハッ!」
ローガンは、私はどうするのか、と聞きはしない。
私が何をするつもりなのか、理解しているのだろう。
そんな忠臣の部下であるローガンに微笑み、私は馬を走らせる。
もう決着はついているかもしれない。
その時、立っているのは貴女でしょう?アニス……!
アニスと別れた場所へ辿り着く。
現場には騎士も民もおらず、瓦解した住居の数々が、大きな欠片となって散らばっている。
「アニス……!」
私の言葉に、返事が聞こえる。
愛しい双子の妹の、優しい声が。
「カレンお姉様、お帰りなさいませ。少し時間が余りましたので、仮面の兵達もいくらか捕縛しておきました」
そう、微笑みながら言うアニスに、私も笑みが零れる。
後ろには、"ウロボロス"十傑の一人、剛毅と名乗っていた男が鎖で縛られ、地面に転がされていた。
「お疲れ様アニス。後の事は騎士達に任せましょう」
「はい。それよりも、ヴィクトリアス学園、ですねカレンお姉様」
そう真剣な表情で言うアニスに、相槌を打つ。
「ええ、そうですわ。ヤマタノオロチ……放置するわけにはいかないですわ」
「はい。カレンお姉様、私はどこまでもお供致します……!」
そう言ってくれるアニスの頭を撫でる。
アニスは目を瞑って、そのまま撫でられる。
可愛い妹を愛おしく思いながら、言葉を続ける。
「それにきっと、蓮華お姉様もヴィクトリアス学園に向かうはず。私達の強くなった姿を、蓮華お姉様にお見せするのですわ!」
「はい、カレンお姉様!!」
自国は私の部下達とセシルに任せておけば、もう大丈夫だろう。
元凶を叩く為、私達はヴィクトリアス学園へと馬を走らせる。
その先に、私達が憧れ……尊敬し、目指したお方が居るのだから。
-カレン視点・了-
-春花視点-
街を襲っていた仮面の人達は、大方捕縛したと思う。
今はバニラ様が指揮をとっているのを、ぼけ~っと見ている。
相変わらず、別人みたいにキビキビと指示を出すバニラ様は、凄くカッコいい。
そんな風に眺めていたら、バニラ様がこちらへと笑顔で来た。
うわわわっ!?
「ありがとう春花ちゃん。春花ちゃんのお陰で、この国の被害は本当に小さかった。後で国王陛下からも下賜を賜れると思うわよぉ」
ひぇぇ、王様となんて会ったら、気絶しちゃいますぅ!?
総理大臣とか、アイドルグループの方達とかと会うみたいなものなんですけどぉ!?
「あらあら、春花ちゃんは苦手そうねぇ」
なんて頬に手を当てて苦笑するバニラ様。
はぅ、絵になるんですー!
ゴゴゴゴゴゴッ!!
なんて呆けていたら、突然の地響きに驚いちゃいました。
バニラ様はスマホを確認されて、笑みを消し、真剣な表情をされていた。
ど、どうしたんだろう。
きっと、良くない事が起きたんだよね。
こういう時、漫画でもアニメでも、大抵何かが起こるもん。
「春花ちゃん」
「は、はい!」
突然真剣な表情のバニラ様に声を掛けられて、姿勢を正す。
何を言われても、ちゃんと返せるように。
「ヴィクトリアス学園にね、八岐大蛇っていう巨大な蛇が出現するそうなの」
はい?山田の卸しってなんです?
違う、阿呆ですか私は!
ヤマタノオロチ、八岐大蛇ぃぃぃ!?
あの、八つか九つか知らないですけど、顔、じゃなくて首があるやつですー!?
「っ~!?」
ちゃんと返事をしようと身構えていたのに、想像の斜め上をいっていたので、言葉にできなかった。
そんな私に、バニラ様は言う。
「私は、この国の民達をこれから避難させるわぁ。国王陛下にも知らせにいかなくてはならないし……こんな事を春花ちゃんに頼むのは、本来間違っているのだけれど……その力を、貸してもらっても良いかしらぁ……」
私を気遣うように言って下さるバニラ様。
私は、バニラ様のおかげで、この地上で生きてこられた。
バニラ様が居たから、私は楽しい毎日を送れてる。
だから、だから!そんな顔をしないで欲しいです。
そんな気持ちをのせて、精一杯明るい声で返事をする。
「まっかせてくださいバニラ様!そんな蛇、大根おろしにして皆に出しちゃいますから!」
「!!ふふ、ありがとう春花ちゃん。でもね、春花ちゃんも我が社の大切な受付嬢なんだから、無理はしない事。良いわねぇ?」
そう微笑んで言ってくれるバニラ様に笑顔で返し、私はヴィクトリアス学園に向かう事に……えと、ヴィクトリアス学園って、どこです?
固まった私を見て、バニラ様は笑う。
「うふふ、春花ちゃん、場所が分からないのよねぇ?」
ぎゃー!もろばれですぅ!
「春花ちゃんは昔っからそそっかしい所があるからねぇ。ちょっと待っててね、道案内をしてくれる魔道具を用意させるからぁ」
「は、はい!ありがとうございます!」
そうして、バニラ様の部下の方から魔道具を受け取り、それを使用してヴィクトリアス学園へ向かう。
え?どうやってって、もちろん走ってです!
走った方が速いですから!!
待っててくださいね!今春花が参りますっ!!
-春花視点・了-
こうして、各国を救助してきた実力者達が、ヴィクトリアス学園へと集おうとしていた。




