表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

199/712

198.激戦の始まり

 各国がウロボロスの先兵である仮面の者達の手により、苦境に立たされていた。

 そんな中、ヴィクトリアス学園もまた、激しい戦いが繰り広げられていた。


 ドゴオオオオン!!


「こんのぉっ!!」


「アリスティア、強い。だけど、私も、強いよ!」


 ドゴオオオオオッ!!


 アリスティアのパンチを正面からパンチで受け止めるイヴ。

 イヴとだけでも互角なのに、そこに大蛇の攻撃が加わり、段々と押されていくアリスティア。


「くっ……!」


 大蛇の攻撃を避け、イヴの攻撃に合わせ、距離を取るアリスティア。

 そんなアリスティアを休ませまいと、怒涛の勢いで攻撃を仕掛ける大蛇とイヴ。


「とら、えたっ!!」


「!?」


 ブン!!


 ガスゥ!!


「ぐっ!?」


 ドオオオンッ!!


 イヴの攻撃により、ピンポン玉のように弾かれるアリスティア。

 立ち上がろうとするアリスティアに、追撃の手が迫る。


「そのまま、死ね……!」


 大蛇がアリスティアにとどめを刺そうとした正にその時。


「死ぬのは、アンタよぉっ!!」


「ぬっ!?」


 凄まじい速度で薙ぎ払われた剣を、瞬時に後方へ飛ぶことで回避する大蛇。

 イヴは新たな敵の登場に、目を細める。


「アリスティアさん!大丈夫!?」


「あのアリスティアさんをここまで……どうやら、凄まじい力の持ち主のようですね」


「ノルン、ちゃん……アリシア、ちゃん……!」


 二人の救援に、なんとか立ち上がるアリスティアは微笑みを零す。


「ごめん、ね。私だけじゃやられちゃってたかも……助かるよ」


「気にしないで下さいアリスティアさん。それに、私の分身体がすぐにやられてしまった事もありますから……遅くなってすみません」


「ううん、そのお陰で二人に連絡がすぐに行ったんでしょ?ありがと!」


 その言葉に微笑むアスモデウス。

 ノルンは見ていた。

 会話中に、どんどんと傷の癒えていくアリスティアを。

 これが原初の存在、その力の一旦。

 その事を内心驚きながら、目の前の大蛇に視線を向けるノルン。


「よーし、勝負はこれからだよ!ノルンちゃん!アリシアちゃん!そっちの大蛇、任せて良い!?」


「ええ、任せて。元より、そいつに借りを返しに来たのよ!」


「はい、ノルンの言う通りです。アリスティアさんは、その少女を宜しくお願いしますね」


「うん!まっかせて!」


 会話もそこそこに、敵を見据える三人。


「貴様は……大罪の大悪魔、アスモデウスか。面白い……イグドラシルの化身共々、私の血肉としてやろう」


「アリスティア、一対一だろうと、負けない!」


 もはや、街道は道の体を成していない。

 その付近に居た者達は皆、アリスティア達の戦いの被害に合わぬよう、退いていた。

 獣道から襲い来る仮面の者達を、タカヒロの指揮を受けた学園の生徒達が、数で押し留めていく。

 戦いは、均衡を保っていた。

 しかし、このヴィクトリアス学園を中心に、更なる戦いの狼煙がきって落とされようとは、この時誰も想像していなかった。



-大蛇視点-



 最後の一撃を入れる寸前に辿り着く気配を感じ、攻める風を装っていた私は、攻撃を回避する。

 この場に猛烈なスピードで向かっている二人の気配を、感じていたからだ。

 その力には覚えがあった。

 途中にいる兵達を倒しながらも、向かってくるスピードは全く衰えていない。

 イヴと名乗る少女は気付いているのか、いないのか……アリスティアと戦う事だけを考えているようにも見える。

 まぁ、私には関係のない事だ。

 あの日、あのままでは勝てない事を悟った私は、一旦退いた。

 そして、その理由を運命神ウルズとバルビエルに話を通し、龍脈を巡った。

 オーブの設置されし場所は、龍脈の場所でもある。

 その龍脈の流れを変え、私の本体へと少し流れるように操作した。

 一時的なもので、すぐに流れは元に戻るだろう。

 だが、それでもしばらくは、私の本体にマナが流れ続ける。

 これならば、本体を制御する事も可能なはずだ。

 私は、世界樹ができる前。

 血で血を洗う世界を生きてきた。

 多くの生物を喰らってきた。

 そんな私も、神により大地に封じられてしまった。

 そのすぐ後に、世界樹が誕生し、大地は実り豊かに変わった。

 私の肉体の更に上に出来上がった実りある大地。

 私の精神を肉体とし、その世界に存在させることに成功したが、以前と違い、戦いはあまり起こらなくなっていた。

 退屈だった。

 戦いの無い毎日は、己の中の牙が錆びていく。

 私はこの状況を作り出した根源である世界樹を憎んだ。

 以前の生を実感できたあの時を、再び取り戻したいと考えていた。

 そんな時だ。

 世界樹を消し、以前の姿に戻さないかという話を受けたのは。

 私は一も二もなく協力を申し出た。

 その者の名はバルビエル。

 天上界の大天使。

 俺が生きていた世界は地上と魔界のみ。

 天上界などどうでも良かった。

 封じられしこの身を解く方法を探した。

 そして長い時をかけたが、見つけた。

 ヴィクトリアス学園の地下。

 オーブの設置された場所とは違う龍脈。

 限られた者しか入れぬその場所に、私の封印の鍵が収められていた。

 もっと近づいた方が良いのか、それともこの場所でももう大丈夫なのか。

 私の精神は、肉体に呼応するかのように血が騒ぐのを感じる。

 目の前の塵芥を灰燼と化し、私の肉体へと戻ろう。

 その時、この地上と魔界を争いの日々へと変え、世界樹を焼き尽くしてやる。



-大蛇視点・了-



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ