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162.レンちゃん特別チーム

 アーネストと二人、保健室へ。

 バニラおばぁちゃんは講師として招かれているけれど、薬学、治癒魔法にも優れている為、保健師も担当している。

 だけど、保健室には誰も居なかった。

 保健室独特の、アルコールの匂いが懐かしく感じる。


「ここに居ねぇって事は、授業中か職員室だな。とりあえず、職員室に行ってみるか蓮華」


「うん、そうするか」


 そうして、再度走り出す私達。

 廊下は走っちゃいけません?大丈夫、ここただの学校じゃないから!

 冒険者とかも育成する学校だから!

 というわけで、職員室へ到着。

 そこには、ずず~とお茶を飲んでるバニラおばぁちゃんが居た。

 な、なんと絵になる……ただ椅子に座って(何故か椅子の上に正座してる)お茶を飲んでるだけなのに……!

 いやね、絵が本当のおばぁちゃんなら、ほっこりする所なんだけど……金髪美人の白衣姿で飲んでるものだから、違和感も凄い。

 他の講師の先生達も見惚れてるよ、仕事しろ。


「「バニラさん!」」


「あら~、レンちゃんにアーネスト君、どうしたのぉ~?」


 なんてのんびりした口調で聞いてくる。

 急いでる私達は、すかさず両手をホールドする。


「あ、あらあらぁ?」


「ここじゃなんですので、バニラさんの部屋へ行きますよ!」


「理由はすぐ説明するからさ!」


 私とアーネストで片腕づつ胸に巻き込み、連行する。


「あらぁ~!?」


 バニラおばぁちゃんが間の抜けた声をあげながら連れ去られていくのを、周りの先生は唖然と見ていた。

 連れ去るのが私達なので、誰も止めない。

 そして現在、バニラおばぁちゃんの部屋の中で、事情を説明し終えたところだ。


「了解よぉ。アタシで力になれるなら、協力するわねぇ」


「「やった!」」


「それじゃ、レンちゃんやアーネスト君達に渡すのとは別で、レンちゃん特別チームの皆で使う簡易版を創るわねぇ」


 また名称が追加されちゃったよ。


「ぶっ……!」


 アーネストがまた笑うので、鳩尾にエルボーしておいた。


「ぐふぅ!!」


 懲りない奴め。


「相変わらずねぇ、二人ともぉ」


 うずくまるアーネストを見て、クスクス笑ってるバニラおばぁちゃん。


「それにしても、この学園内で事件を起こすなんて……考えたものねぇ」


「「考えた?」」


「えぇ。この学園は、元の世界で言う治外法権に該当するの。この学園内で起きた事は、全ての国で裁く権利はないからぁ……」


 出身国がどうあれ、何をしてもこの学園が始末をつけなければならない、という事か。


「ま、不幸中の幸いだけれどぉ、私やカレンちゃんにアニスちゃんも居るからぁ、国に事態を事前に知らせておけるわぁ」


 確かに、それは凄い大きな利点だね。

 今回はあの時より、対応が取れるだろう。


「ただ、犯行の目的が見えないのが気掛かりねぇ。レンちゃん、戻っていない生徒達の名簿はあるかしらぁ?」


「どうなのアーネスト?」


 私は知らないので、聞く事にする。


「お前な……。一応あるけど、今は手元にねぇよ。バニラおばぁちゃん、一緒に来てもらっても良いか?」


「ええ、良いわよぉ。でも先に、連絡をすぐに取れるアーティファクトを創ろうかしらねぇ。携帯電話の簡易モバイルよぉ」


「確かにそっちが先に必要だな。バニラおばぁちゃん、頼むぜ」


 大体の必要数を伝えて、バニラおばぁちゃんは作業に取り掛かるとかで別の部屋へ。

 流石特別講師枠、部屋が複数あるとか優遇されてるね。

 邪魔しちゃ悪いので、私達は戻る事にする。


「なぁ蓮華、バニラおばぁちゃんが居てくれて助かったな」


「だね。私達は、色んな人に助けられてる」


「ああ。俺達もなんか返していけるように頑張らないとな」


「そうだな」


 なんて会話をしながら、皆の元へ戻る。

 そこでは、なんかアホな会話が繰り広げられていて、アーネストと同時に入口で固まる。


「いーや!ノルン様のツンデレこそ至高だろ!?」


「確かにノルン様のその姿も素晴らしいけれど、蓮華様のあの天然さ、人知れず人を助ける優しさ、何よりあの純真さが分からないの!?」


「分かってるに決まってるだろ!?でもノルン様の洗練された動作、何をするにしても美しい姿がお前には分からないのかよ!?」


「そんなの分かってるわよ!」


「お前ら!確かにそのお二人も美しいが、アリシアさんの萌えポイントを知らないとは言わせねぇぞ!普段キリっとしてるのに、時折みせるあの小悪魔的な微笑みを見た事ねぇのか!?」


「「「知ってるわ!!」」」


 これ、何の会議してるの。

 本人達はもはや違う所を向いてる。


「えっと、何してるの皆」


 その私の言葉に、全員言い争っていたのがピタリと止まる。


「「「お帰りなさいませ蓮華お姉様!会長!」」」


 なんだその軍隊みたいな礼儀は。

 そんな口上はいらん。


「ようやく帰って来たわね……こいつら、アンタ達が居ないとダメだわ……」


 なんかノルンが憔悴している。


「……最初は、ちゃんと会議していたんですけどね……何故か途中から、私達のFC(ファンクラブ)の話になってまして……」


 ファンクラブって……そういえば、そんな話を聞いたな。


「止めようとしたんだがな……カレンさんとアニスさんまで加わってな、収拾がつかなくなった」


 タカヒロさんの言葉を聞いて、じとーっとした目を二人に向ける。


「だって、蓮華お姉様のFCゴールド会員の私としましては、加わらないわけにも……」


「です……!」


 二人も入ってるんかーい!!

 しかも、ゴールドって、何が一番上とか知らないけど、高そうだよね!?

 全く反省の色がない二人に辟易しつつも、皆に言う。


「そういうの良いから。こういう時はちゃんとするように、良いね?」


「「「「はいっ!!」」」」


 なんだろう、返事は凄く良いのに、なんか聞いてる気がしない。

 隣を見たら、アーネストが小刻みに震えてるのが見えた。

 このやろう、笑いを我慢するのに必死だな。


「ね!?蓮華さん良いでしょう!?」


 おい、アリス姉さん。

 貴女まさか……。


「確かに、今の蓮華お姉様も良いです……!!」


「くっ!でも、ノルン様のあの表情も良いっ……!」


「アリシアさんの疲れたあの表情も堪らん……!」


 ……こいつら、学園のトップ達だよね?大丈夫なのこの学園。

 盛大に溜息をつく私達だった……。




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