161.結成!クルセイダーズ
明先輩と、数名の生徒達が行方不明という話をシオンさんより伝えられた。
まだ公にはしていないらしいが、時間の問題だろう。
学園内で起こった事件の為、対策チームを設立する事となった。
うん、なったのは良いんだけど……。
「おいアーネスト、なんで私がリーダーなんだ!?」
「え、誰も異論なんてねぇだろ?」
アーネストが周りの皆に声を掛けたら、全員が頷く。
なんでだよ!?普通、生徒会長のアーネストだろ!?
「蓮華、お前が何を考えてんのか手に取るように分かるけどさ、俺も生徒会として動く事があるのは分かるだろ?表の顔ってやつさ」
「そうだけど……兼任しても良いじゃないか」
「お前な……ま、俺はお前なら任せられると信じてんだよ。じゃなきゃ、そもそも任せねぇって!」
そう笑顔で言うアーネスト。
はぁ、こいつはそういう事を他意なく言うからなぁ……毒気を抜かれてしまう。
「補佐には私とタカヒロもつくから、安心なさい」
「私もねー!」
アリス姉さんにセルシウス、ノルンにタカヒロさんが頷いてくれる。
そうだね、私だけで気負う必要はないんだし、やれるだけやってみよう。
「で、この集まりの名前ってなんなの?」
「お前、そこを気にするのかよ」
「だって、なんか名称が無いと呼びにくいじゃないか」
「まぁそうだけどよ。っても、別になんも言われてねぇな。蓮華が適当につけたら良いんじゃないか?」
「丸投げとかやめろよ!?」
いつもの私達のやりとりに、周りでクスクスという笑い声が聞こえる。
しまった、つい。
「コホン。それじゃ……アリス姉さん、なんかない?」
「うぇっ!?え、えーと、えーと……アーくんパス!」
「なにぃ!?それじゃアリシアパス!」
「私ですか!?……タカヒロ、任せたわ」
「俺かよ、勘弁してくれ。ノルンパスだ」
「アンタらね……」
ノルンが呆れた顔で言う。
うん、始めた私が悪いんだけど、丸投げするアーネストも悪いと思うんだ。
「それじゃ、クルセイダーズとかどう?少し前に本で読んだ時に出てきた名称なんだけど」
「「ノルン……」」
私とアーネストが生暖かい目で見る。
「な、なによ?」
「「中二病?」」
「ぶふっ!」
タカヒロさんが吹き出した。
「言葉の意味は分からないけど、アンタ達が馬鹿にしてるのは分かったわ」
「いだだだだっ!ノルン、それは痛い!!」
服の上からアイアンクローされた、凄まじく痛い!
ちなみに、私とアーネストをダブルで。
凄まじい握力である。
アーネストもお腹を抱えてうずくまってる。
「私のを却下したんだから、アンタ達が考えなさいよ?」
「いや別に却下したわけじゃ……」
ギロッという音が聞こえそうな目で見られたので、言葉を続けられなかった。
「それじゃ、捜索とか救助するって意味の、救助機動部隊とか?」
「硬いぞ蓮華……」
「元の世界を拗らせてるな蓮華」
アーネストとタカヒロさんにダメ出しをくらってしまった。
私にネーミングセンスを求めないで欲しい。
「あの、蓮華お姉様、話が進みませんが……」
カレンにど正論を言われてしまった。
「ちなみに、二人ならどんな……」
聞こうとして嫌な予感がしたので、止めたんだけど……二人は間髪入れずに答えた。
「「蓮華お姉様特別チームです(わ)!!」」
……二人に聞いた私が馬鹿でした。
「それは素晴らしいですね!」
え?
「ええ、それはとても分かりやすいです!」
ちょっと?
「蓮華お姉様特別チームか、なんかその一員なの自慢できそうだよな」
「分かる」
こ、この流れは不味い!
このままでは!
「ぶはっ!ははは!よし、そんじゃ俺達のチーム名は、蓮華お姉様特別チームに決定だな!」
「「「「「異議なし!!」」」」
「嘘でしょぉぉぉぉっ!?」
ちょっと待ってぇ!?それで良いの本当に!!
「ぶふっ、れ、蓮華お姉様特別チーム、す、素敵ねレンゲ……」
セルシウスが珍しく笑いを我慢しきれていない。
「え、えっと、それは裏の名前で、表の名前はクルセイダーズという事にしない?」
「ちょっと蓮華!?」
ノルン、こうなったら一緒に沈んでもらうよ?
「蓮華様がそう仰るなら」
「だな」
「ちょっと!?」
ふふり、ただでは沈まんよ。
アーネストとタカヒロさん、それにアリシアさんまで滅茶苦茶笑ってるけど、気にしない。
ここには執行部の皆さんと生徒会の皆さんが集まっている。
後は各部会のリーダーに話を通しておいてもらう事になっている。
「決定だね。本題に入るよ?執行部の皆は、明先輩と昨日話してたんだよね?」
「はい。それから、最近はいつもどこかに行ってるみたいで、昨日もそこに行くと言って出て行かれました」
成程、つまり踊りの練習に来ようとしたんだね。
でも、昨日明先輩は私達の元に来ていない。
という事は、その間に何かあったっていう事か。
「生徒会でも、何名か行方不明になっています。同室の者が、帰ってきていないと」
「あの、蓮華様。学園内で普段見かけない者を見た気がするんです」
「気がする?」
「は、はい。その、最初はこんな人居たかな?って気がするんですけど、すぐに、思い違いだったと思うんです……でも時間が経ったら、あんな人この学園に居たかなって……その、顔も思い出せなくなってますし……」
「認識阻害の魔法かな?」
「多分その一種だね。一時的な記憶操作の方だと思うよ蓮華さん」
アリス姉さんがそう教えてくれる。
そんな魔法もあるのか、厄介だな……。
「抵抗はできないの?」
「術者による、かなぁ。蓮華さんクラスなら、多分効かないと思うけど」
「うーん、それをまず防がないとだね。何か手はある?」
「レンゲ、私が氷のオーブを創るから、クルセイダーズのメンバーに渡しなさい。その日しか持たないけれど、抵抗できるようになるわ」
「簡易アーティファクトって事だね、ありがとうセルシウス」
「ただ、何かあった時の連絡手段が欲しいわね」
連絡手段か。
母さんとリンスレットさんのように、すぐに連絡がとれたなら……。
あれ?こんな話、どこかでしたような……。
「「バニラおばぁちゃんだ!!」」
私とアーネストが揃って叫ぶ。
多くの人が、バニラ"おばぁちゃん"?と首を傾げてるけど、今は気にしていられない。
「皆!私とアーネストは少し席を外すから、話を進めておいて!」
「すぐに戻る!行くぞ蓮華!」
「ああ!アーネスト!」
そうして、私達はバニラおばぁちゃんの元へ急ぐ事にした。